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ヴェネチア大好きっ子のつぶやき

2013年03月02日 20:31

ヴェネチア001

【チャイルドハロルドの巡礼】第4編より、11-19連
    バイロン作  Shallot B.訳

11
アドリア海は亡くした夫を悼んでいる。
毎年恒例の結婚式はもはや行われない。
手入れもされない寡婦の衣装、ブチェンタウロの船は、
修理もされず、朽ちゆくだけ!
それでも、ヴェネチアの獅子が、かつて立っていた場所に今も立ち、
その衰えた力を嘲笑いながらも、
ヴェネチアが比類なき持参金を持った女王であるとき、
皇帝が訴え、君主たちが瞠り羨んだ誇り高き場所を見下ろしている様子が、
サン・マルコ寺院には見えているのだ。

12
スワビア[シュバーベン]皇帝は嘆願した、そして今はオーストラリア皇帝が支配している。
ひとりの皇帝がひざまづいたところを別の皇帝が堂々と歩く。
王国は地方へと収縮し、
王冠を頂いた街のうえに鎖が架けられる。
陽の光を感じるや、
国家は権力の高い尖塔から溶けて、
雪崩のように山の中腹から緩んでは崩落してしまう。
おお、ひと時でも、80歳の首長、ビザンチン帝国を征服した強敵、
盲いた老ダンドーロよ!

13
サン・マルコ寺院の前で、金鍍金した首当てを日の光に耀わせて、
今でも真鍮の馬が光っている。
だが、ドリアの威嚇があったのではないか?
馬勒をつけられてはいないのか? ヴェネチアよ、敗れては勝ちを得た者よ、
1300年の自由の歳月は終わり、
藻屑のように、立ち現れた海へと沈む!
たとえ<破滅>の底にあっても、波にのまれ、
その支配から不名誉な休息を得るよりも
外敵を避けるほうがましだ!

14
若かったころ、ヴェネチアはまったく栄華を誇り、新チュロスとも呼ばれ、
勝利から得たあだ名こそ「獅子の旗を打ち立てる者」、
炎と血をかいくぐり、
彼女に従う大地と海のうえへとかざしたのだ。
多くの奴隷を生み出したが、自分は自由だった、
そしてオスマントルコに対する欧州の壁となった。
古代トロイの好敵手、クレタ島の港町カンディアを見よ!
レパントの海戦を見た不滅の波よ、証言せよ!
というのも、カンディアもレパントも、時や暴君がくじくことのできない名なのだから。

15
硝子の彫像たちは、みなうち震え、
ヴェネチアの今は亡き大公たちの長い列は塵へと帰した。
しかし彼らの住まうところ、広大で贅を尽くした宮殿は
栄えある責務の華やかな物語を紡ぐ。
その笏は壊れ、刀は錆び、
異邦人に降伏した。がらんどうの広間、
寂れた通り、ヴェネチアを従えているものが誰で何なのかを
常に意識させる異邦人の様子、
それらがヴェネチアの美しい城壁に惨めな雲を投げかける。

16
アテネの軍隊がシラクーサに敗れたとき、
鎖に繋がれた捕虜たちは戦いの軛に耐え、
アッティカの詩神に救出の声を上げ、
詩の歌声だけが遠方からの身請金だった。
見よ! 彼らが悲劇的な歌を歌うとき、
勝ち誇る勝者の戦車は止まり、手綱はその手から落ちる。
無用の三日月刀は帯から外れ落ちる。
彼は捕虜の鎖を断ち切る、
そして銃への歌と旋律に感謝するように言うのだ。

17
それゆえ、ヴェネチアよ、たとえおまえに説得力のある主張がなくても、
ヴェネチアの誇り高い偉業の数々がすべて忘れられても、
神々しい詩人の歌の記憶は、ヴェネチアのタッソーへの愛は、
ヴェネチアを暴君たちへと結びつける結び目を断ち切らせたことだろう。
ヴェネチアの運命は他の国家にとって恥ずべきものだ、とりわけ、
アルビオン[英国]よ! おまえにとって。<海の女王>たるもの、
<海>の子どもたちを見捨てるべきじゃない。
水に隔てられていようとも、
ヴェネチアの陥落に、英国の陥落を思うがいい。

18
私は少年時代からヴェネチアが大好きだった。
私にとって、ヴェネチアは心の要請の都市として、
海から、喜びのいる場所から、富の市場から、
水の支柱のように上ってきた。
そしてオトウェイ、ラドクリフ、シラー、そしてシェイクスピアの技巧が
ヴェネチアのイメージを私に刻み込んだ。そして、
ヴェネチアの様子がこんなものだと分かったけれども、我らは別れなかった。
傲慢で、驚嘆に満ち、誇り高かったときよりも、
その嘆きの日にあって、たぶん、ヴェネチアはなおさらいとおしい。

19
私は[ヴェネチアのがらんどうの広間や寂れた通りを]過去でいっぱいにできる。
そして現在の目と思念と鎮められた瞑想にとって充分なものがある。
そしてそれは私が望んだり求めたりする以上のものかもしれない。
私の存在という織物を織ってきたもっとも幸せな瞬間のうち、
いくつかはおまえから採った色彩に彩られているのだ、
美しいヴェネチアよ!
<時>も無視できない、<拷問>も歪められない、
いくつかの感情がある。
そうでなければ、もう、私の感情は冷たく唖となるだろう。
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異邦人(イタリアのイギリス人)

2013年02月23日 18:20

【チャイルドハロルドの巡礼】第4編より、8-10連
    バイロン作  Shallot B.訳

8
私は異国のことばを学んだ、そして異邦人の目にも
異邦人と映らなくなった。自分では、
納得のいくことで、驚きはない。
人のいる、あ、いない国を
造るのは厭ではないし、見つけるのも難くない。
だが、理由は無きにしもあらずだが、ひとが誇るところに私は生まれた。
そして、たとえ私が賢く自由な人々の侵されない島を背に去り、
遙かな海辺にいるとしても、

9
私は故郷を愛するだろう。そうして、
もしも肉体から抜け出て納骨堂を選べるのなら、
ふるさとではない土に我が遺灰を埋めたとしても
我がこころは故郷へと戻るだろう。
私は自らの子孫に記憶されるという望みを
我が地の言葉で綴るのだ。
もしこの目的での熱望があまりに途方もなく気の遠いものなら、
もし我が運命が、我が幸運のように、
急成長を遂げては枯れるものであり、
鬱陶しい<忘却>が

10
死者たちが国家によって讃えられる寺院から
我が名を締め出そうというのなら、
そうするがいい、そして高貴な頭に月桂樹を輝かせるがいい!
私にはスパルタ人の墓碑を置けばいい。
「スパルタにはこの者より立派なひとがたくさんいた。」
それまでは憐れみを求めないし、必要もない。
刈った荊は自分で植えたもの、自業自得だ。
私は荊に引き裂かれては血を流す。
その種からどんな実が結ばれるのかを知っておくべきだった。
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不滅の魂

2013年02月23日 17:32

【チャイルドハロルドの巡礼】第4編より、5-7連
    バイロン作  Shallot B.訳

5
こころに由来するものは、土塊[肉体]に由来するものではない。
本質的には不滅なのだ。そして我々のなかで、
燦燦たる光の筋やより愛すべき存在を、そういったものが生み、増殖させる。
早咲きの花が枯れてしまった情に水を注ぎ、
鮮やかな成長で虚空を満たしつつ、
人間関係に縛られた現世の状態で、
<運命>が生を和ませぬよう命じている不滅の存在は、
これらの精霊たちによって与えられ、
我らの厭うものを追いやり、とってかわる。

6
そのような作品は若人と老人の拠りどころだ。
若人は「望み」から逃れ、老人は「虚しさ」から逃れてくるのだ。
この憔悴という心持が多くの書物を著した。
そうして、たぶん、私の眼前に広がる[この『ハロルドの巡礼』という]書物もまた[そうなのだ]。
だが我々の夢想の世界よりも
強い現実味のほうが強い閃光を放つものを持ち、
我々が夢に描く空(そら)よりも、
荒涼とした宇宙(そら)に詩神の巧みに散らす見慣れぬ星座よりも、
色合いや形は美しい。

7
私はそんなものを目にした、あるいは夢に見た、だがもうおしまいにする。
そういったものは真実のようにやってきて、夢のように霧散した。
何であれ、そんなようなものだ。
その気になれば、呼び戻せるさ。
探し求めては折に触れて見つけたものだと思えるような、
そんなもので私の心はいっぱいだ。
だがもうおしまいにする。というのも、目覚める<理性>は
行き過ぎた譫妄を病的だと見なし、[私は]
いくつもの声が聞こえ、いくつもの別の景色に取り囲まれる。
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ぬばたまの

2012年10月27日 19:26

ぬばたまの

   作 バイロン
   訳 Shallot B.

私は夢をみたが、それはまったくの夢というわけではなかった。
耀(かがよ)う日輪は消え失せ、
光もなく、軌道もなく、永遠の宇宙の暗がりを
星々はさまよっていた。そして凍てついた大地は、
月なき大気のうちに震撼し、盲(めし)い、黒ずんでいった。
朝は来て、去った。そしてまた朝が来たが、日の光はもたらさなかった。
この恐怖のなかで、悲惨のなかで、人々は情熱を忘れた。
あまねく心は凍てつき、明かりを求める横柄な願いへと変わった。
人々は焚き火の傍で生きていた、
そして王座も、冠を戴いた王たちの宮殿も、
荒ら家も、
あらゆるものの棲家も、
烽火にと焼かれた。いくつもの都市が破壊され、
人々は燃え上がる自宅を囲んで集まり、
今一度お互いの顔を見合わせたのだ。
幸せなのは目の届く距離に
山の松明である火山を持つ人々だった。
ひとつの恐ろしい期待がこの世をあまねく包み込んだ。
森には火がつけられた。
そして刻々と樹々は倒れ、萎えていった。
爆ぜる幹は粉々になって消えていった。そしてすべてが黒くなった。
時折、閃光が人間たちめがけて落ちると、
その表情は絶望の光によって
この世のものとは思われない顔つきを示した。
横たわり、自分の眼を隠して泣き濡れる者があった。
組んだ両手の上にあごをのせて、微笑む者もあった。
忙しげに行ったり来たりしては火葬用に薪をくべ、
ひどく動揺しつつ、昔日の世界の棺となった
黒雲立ち込める朦朧とした空を
見上げる者もあった。
そしてまた、呪いをかけて、それらの人々を灰燼へと帰せし、
歯を軋らせては呻く者もあった。
野の鳥たちは、かん高い声をあげて、慄きながら地面に羽を打ちつけては、
無暗に翼をばたつかせるのだった。
もっとも獰猛な野獣たちも、おとなしく、震えていた。
蝮は這い、群れをなし、シャーッと声を出すものの、
蜷局を巻くばかりだった。蝮たちは、食用に惨殺された。
ひとときはもはやありえなかった<戦争>は、
ふたたびその腹を満たしたのだった。食事のたびに、血が流れ、
人間たちはそれぞれむっつりと離れて座り、
暗がりで腹へと詰め込んだ。愛情は残っていなかった。
全土にはひとつの思考、
つまり目前に迫った、恥ずべき死しかなかったのだ。
飢餓に対する苦しみを癒せるのは腸を貪ることだった。
人間たちは死に、肉と同様骨にも墓などなかった。
空腹を抱えた者たちは、空腹を抱えた者たちによって貪られ、
犬でさえ飼い主を襲った。
ただ一匹だけは違った。その犬は屍骸にも忠実で、
鳥や獣や、飢えた人間を空腹が縮めさせ、
死んだ者が奴らの痩せ細ったあごをとらえるまで、
追い払い続けた。犬は自分で食べ物を探し出せず、
永遠に響く哀れなうめき声をあげ、
望みを失くした短い遠吠えを最後に、
もう撫で返してはくれない飼い主の手を舐めながら、――犬は死んだ。
次第に群衆は餓死していった。
それでも、巨大な都市の人間がふたり生き残った。
ふたりは仇同士だった。
聖瀆的な使い道のために聖物の数々が積み上げられた祭壇が
燃えかすになっているところで
ふたりは出会った。
慄きながら、冷たく骨ばかりになった手で
火の弱まった灰をかき集め、こすり合わせ、
ほんの僅かな火を求めて、己の弱々しい吐息を吹きかけ、
徒労に終わる炎を生んだ。
やがて炎が明るくなるにつれ、ふたりは眼をあげた、
そしてお互いの顔を見つめた、見合わせ、そして悲鳴をあげて死んだ。
<飢餓>が<悪魔>を書いた表情には
いた相手の正体を知りもせずに、
お互いがあんまりに恐ろしかったからだ。
世界は空っぽになった、群衆も勢力も、一塊となった、
四季も、草も、樹も、人間も、生命もなく、
死の一塊、固い土の混沌となった。
川も、湖も、海も、すべてが凪いでいた、
それらの音のない水底で身動きするものはなかった。
船乗りのないいくつもの船が海の上で朽ちていき、
帆はばらばらに崩れ落ちた。沈んでしまうと、
それらの船は大きな波を立てることなく、深い海で静まり返った。
波は死んだ。潮はその墓にあった。
潮波の愛人たる月はとうに息をひきとってしまった。
淀んだ大気のうちに、風はみな萎れ、
雲はみな消え去った。闇には雲の助けなど要らなかった。
闇こそが宇宙だった。
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チャーチルの墓

2012年10月26日 19:12

チャーチルの墓
   文字通りに捧げられた事実

     作 バイロン
     訳 Shallot B.


一季節の彗星を燃え立たせた男の
墓の傍に私は立った。
私には、あらゆる墓所でもっともつつましいものが見えた。
そして、少なからずの悲哀と畏れをもって、
野ざらしになっている芝草と、
周囲には読まれないままになっている人知れぬ名よりも
判然としない名の刻まれた、黙したままの石とに目を遣った。
そして私はその墓地の庭師に訊いた。
半世紀のうちに厚くなった数々の死を通して、
異邦人たちはこの植物に彼の記憶を負わしめることがあるのかね、と。
やがて彼はこう答えた。「そうですねぇ、どうしてたびたびやって来る旅人たちが
このように巡礼者たちになってしまうのかは、わしにはわかりません、
このひとはわしが寺男になるまえに死んじまったんで、
わしがこの墓を掘ったんじゃないんですよ。」
そして、これが全部なのか? 私は思った、
それでは我々が不死の被き物を剥ぎとるか? そして、未来永劫、
名誉や光輝の何がこの枯渇を忍ばねばならないのかを
私が知らずにいることを切望するのか?
それほどはやく、それほどうまくいかずに?
我々が踏みつけているすべてのものの設計者は、
というのも<大地>は墓石に過ぎませんからね、
粘土から記憶を救い出そうとしたんですよ。
我々が夢想家にすぎないというすべての人生が
ひとつのものとなって終わりを迎えなければならないということがなければ、
さだめし[死体の]粘土の混合物はニュートンの思想を混乱させるでしょうね、と私が言うと、
彼は、所謂昔日の<太陽>の黄昏時をとらえて、こう話した。
あなたのご存知の、この選ばれた墓にいる男は、
そのご時世じゃ、もっとも有名な物書きのひとりで、
それで、旅人たちは彼に敬意を払い、少し離れて
立ちわびるんだと、わしゃあ思うんですよ。
わしはといえば、あなたさまのお気に召すことは何であれ
敬意を払いますがね。
そこで、とてもいい気になって、
不自由ながらも、たくさんとっておいたのだが、
私はポケットの隅から何枚かの銀貨を取り出した。
つまり必然その男に銀貨をくれてやったのだ。
笑ったね、私にはおまえさんがわかったよ、賤しいやつらだ!
その間中、私の親しみをこめたことばが真実を物語るのだろうからね。
私ではなく、おまえさんたちが愚か者なのだよ、というのも、
深いもの思いを抱えて、優しい眼差しをして、
その老いた寺男の根っからのお説教を、
<薄暗さ>と<名誉>と、
<栄光>と<世評>の<虚無さ>のあるお説教のうえに、
私は[住んで]いたのだからね。
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