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マンフレッド、狩人に語る。(Act2.Sc1.ll.44-58)

2005年01月29日 00:17

[マンフレッド]
教えてやるぜ、聞きな!俺ァ何年も生きてきた。
何年も何年も、永い年月だった、だが今じゃ俺が
生きなきゃならない年月なんて何の意味もないんだ。
何年も――何年も――空間と永遠を――そして意識的に、
死への激しい渇望を伴って――そして癒されることもないままに!

[狩人]
どうして、おまえさんの表情にゃ、中年の刻印など
殆ど刻まれちゃあいないのに。わしゃおまえさんよりずっと年上じゃて。

[マンフレッド]
おまえは、存在が時かさによって決まるとでも思うのか?
そうだな。だが、行動こそが俺たちの瞬間なんだ。
俺の行動は自分の昼夜を変えてしまったんだ、消えないものに、
終わりのない、すべてが似たようなものに。ちょうど岸辺の砂のような、
数え切れない粒子や、寂寞として不毛な冷たいもののようで、
そこには荒波が打ち寄せるものの、
屍骸や残骸、岩や塩っぽい波にもまれた
苦々しい海松布の他には、何一つ残すこともない。

[狩人]あぁ!狂ってる――だが放って置くこともできまいて。

[マンフレッド]
狂っていたらなぁ――それなら俺の見ているものは
掻き乱された夢にすぎないだろうに。
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マンフレッドの独り言②(Act1.Sc.2.ll.30-56)

2005年01月23日 00:16

翼を持った天の使いよ、おまえは雲を貫いて、
幸せに天へと高く飛んでゆくね、
だけど俺にそんなにまで近づいて降りてくるのも解るよ――
俺はおまえの餌食になって、鷲の子たちが喰い尽くしてくれるだろう。
おまえは俺の眼が届かないところへ行ってしまった。
だけど、おまえの眼は下の方へ、前のほうへ、上のほうへと
パノラマビジョンで見抜くんだね。――美しいなぁ!
この目に見える世界はみんな、なんて素敵なんだろう!
自然のはたらきそれ自体も、なんて眩いんだ!
なのに俺たち、自らこの世の支配者を語っている俺たち、
塵と神のアイノコの、沈むにも舞い上がるにも
適さない俺たちは、その混じりあった特質で
対立するものとの争いを引き起こし、
堕落とウヌボレの息をするんだ、
死という運命が優勢になるまで、
低俗な野望と崇高な意志を求めて戦いながら、
人間は――自身についてものを言うことがないし、
お互いに信じあうなんてこともないんだ。あぁ!音が、
山の牧歌の自然な旋律――   [遠くに羊飼いの笛の音]
だってここでは族長制の時代が
羊飼いの神話になっていないんだから――自由な空気の中では、
のんびりぶらついている群れの鈴の音と、笛が混じりあった。
俺の心があの木魂を飲み干せたらいいのに。
――あぁ、俺が、美しい音の姿のない精霊だったなら、
自然のままの声、生きている旋律、
肉体のない喜びだったなら――生まれるのも死ぬのも、
自ら生み出す楽しい音色と共に在れるのに!

マンフレッドの独り言①(Act1.Sc.2.ll.1-29)

2005年01月15日 00:15

俺が呼び覚ました精霊たちは俺を見捨てる――
俺が学んだ呪文は俺を挫いてしまう――
期待した療法は俺を酷く苦しめた。
俺はもう、人間を超えた力には頼らない、
過去には無力だし、未来なんて、
過去が闇に飲まれてしまうまでは
俺の望むところではない。――母なる大地!
爽やかに明け始めた日よ、そして山々!
アンタらはどうして美しいんだい? 俺はアンタらを愛せない。
それからアンタ、宇宙(そら)の輝ける瞳、
すべての上に見開かれて、輝く喜びの瞳――
アンタは俺のこころには輝かなかった。
それからアンタだ、聳え立つ岩山よ、その末端に俺は立っている。
ここから激流の極みから下を見下ろせば、
高い松の木が、あまりの遠さに眩暈がするんで、
潅木みたいに小さくなって見える。ひとっとびで、
身動きひとつで、仕草ひとつで、ひと思いで、
岩のゴツゴツした懐の底へ、俺の胸には永遠の休息が
もたらされるんだ――どうして戸惑う?
俺は胸が衝かれるのを感じてる――なのに飛び込まない。
危険は解っている――しかも足はしっかりしてる。
生きることを俺の宿命には許していないのに、
生きさせようとする力が俺の上にのしかかっている。
もし、この精神の不毛さが俺に内在してるなら、
そして自分の心の棺が生きることならば、
というのは、俺はもう己の行動を正当化するのを止めたから――
取り返しのつかない邪な無邪気さだったから。

マンフレッド、第七の精霊を召喚(Act1.sc1.ll110-131)

2005年01月08日 00:14

(マンフレッドは万物の源とも言える精霊を召喚し、彼の前に7体の精霊が現れる。以下は七番目(最後)の精霊の応答。Shallotは、この精霊が、マンフレッド自身の運命の星の精霊だと解釈する。)
           *
アンタの運命を支配している星は、
地球が生まれる以前は、俺が支配していたんだ。
それは天のうち、太陽の周りを廻るものの中では
どれより鮮やかで美しい星だった。
その軌道は自由でありながら規則正しくて、
宇宙はこれより奇麗な星をその胸に秘めたことはなかった。
やがて時が来て――それは形のない炎の、
彷徨い続ける塊となり、
道のない彗星となり、呪いであり、
宇宙の脅威となってしまった。
生まれつきの強さで転がり続けているものの、
形もなく、軌道もなく、
高みの輝かしい欠陥であり、
今では天上の怪物だ!
それからアンタ! その影響の下に生まれた――
ウジ虫だ! そのアンタに俺は従うが、蔑ませてもらうぜ――
(アンタのものなんかじゃない、アンタが借りただけで、
アンタを俺のものにするってだけだ、)力によって従わされた、
か弱いこいつら精霊たちが、アンタみたいなヤツに
耳を傾け話し合ってるようなトコロに、
降り立たなくちゃならねぇほんの束の間だけだがな――
アンタは俺と何をしたかったんだ、土塊の青二才!
          *
(この直後、マンフレッドは精霊たちに「忘却」を求める。)

マンフレッドの独白① (Act1.Sc1.ll.1-27)

2005年01月03日 00:13

ランプに油を注がなくちゃいけない。けれどそれでも
俺が目覚めている間には消えてしまうだろう。
俺の睡みは――たとえ睡んだとしても――深い眠りじゃない。
朽ち果てることのない思索の連続なんだ、
そしてそれに対して俺は抗えない。
俺のこころは眠れない。その眼が閉ざされることはない。
秘めているものを見出すために。しかも俺はまだ生きている。
息衝く人間の顔と形骸を持っている。
悲痛は賢者のお導きのはず。
悲しみは真の知識。ものごとをよく知っている人は、
破滅的な真実に、いちばん嘆くに違いない。
知識の樹は生命の樹ではない。
哲学、科学、そして物見高い精神の泉、
それから世界の叡智。俺はこんなことはみんな試してきた。
俺の精神にはこんなことの実体をそのものとして認める力があった。
――だけど何にもならなかった。俺は人に幸せを施してきた、
俺は人々の間で幸せを噛み締めた。
けれど何にもならなかった。俺には敵があったけれど、
どいつも俺を困らせるほどじゃなかった。みんな俺の前に倒れた。
けれど何にもならなかった。――善、あるいは悪、生命、
権力、情熱、俺が実体の奥に見透かせるものは全て、
俺にとっては砂の上に落ちる雨みたいなものだった。
あの得も言えないとき以来。俺は何も怖くない。
大自然の恐れもない。希望とか願いとか、
地上のものに向けた秘めた愛情とか、そういうものへの
トキメキだの胸の高鳴りだの、それもない。まったく、呪われてる。
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