萩原朔太郎と日本画と。―山種美術館『歌と日本画展』―

2005年07月31日 00:02

SpringSpirits

 東京都内、半蔵門から歩いてすぐのところにある山種美術館。現在開催中の展覧会は、このブログにぴったりの、『歌と日本画展』。日本画は、最近の最近まであまり見なかったのですが、古径さんの展覧会で、近代日本画の面白さに気づき、行ってみました。
 詩と絵画を同時に見るというのは、実に難しい。頭をフルに使っても、なかなかタイヘンでした。特に、詩から読み取るイメージと、実際その詩を引用して展示されている作品が一致していないものもあり。(山口華楊の『木精』と、その脇にかけられていた山村暮鳥の木の根を歌った詩は、正直、作風が合わないように思えて、苦しかったです…。万葉大好きっ子の私には超重要人物の中大兄皇子が歌った豊旗雲の歌と、夕日の絵も…。和歌のがすごすぎてて、絵が気の毒でした…。個人的に絵を見ないで詩をじっくり見てしまったのは、萩原朔太郎の『竹』。この詩のすごさに改めて感心してしまいまして。)
 純粋に絵画を楽しめたのは、川崎小虎の『春の訪れ』(上図)。ふんわりとした春の優しさと花の美しさが素晴らしいと思います。山口華楊の『木精』の木の柔らかさも、どっしりとした重みを含んでいて素適。また、金子みすずの『つもった雪』を引用しつつかけられていた、林功の『凍音』は、詩と絵画の見事な相乗効果で、味わい深かったと思います。(『つもった雪』は、金子みすずの作品のなかでも、一二を争うくらい、私の大好きな作品のひとつです。)『凍音』を見ながら、何故か思い出した歌が、昔小学校で歌った『たんぽぽ』っていう曲。「♪雪の下のふるさとの夜~♪」ではじまる、なんか好きな曲でした…(歌詞全部覚えていないのですが、メロディは全部覚えてるんですよね)。
 言葉にしても絵画にしても、季節と時の移ろいの中での瞬間を切り取った、そんな澄んだ世界観が、日本の文化に染み込んでいること、そしてそれが私の中にも染み付いて抜けないことを認識してしまうような、そんな展覧会でした…。
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マンフレッドの魂は…② (第三幕第四場)

2005年07月30日 00:35

[マンフレッド]
告げてくれ――おまえの使命は何だ?

[精霊]
行きましょう!

[僧院長]
おまえは何者だ、得体の知れぬ奴よ? 答えろ!――申せ!

[精霊]
この人間の守護霊です。
――行きましょう! もういい頃でしょう。

[マンフレッド]
何もかも覚悟の上だ、
だが俺を呼びつけるような力はゴメンだぜ。
誰がおまえをここに来させた?

[精霊]
すぐにわかりますよ。――さぁ、行きましょう!

[マンフレッド]
俺はおまえなんかよりも、遥かに強大な物の怪たちに
命令してきたし、おまえの主人たちとも戦ってきたんだぞ。
ここから立ち去るがいい!!

[精霊]
人間よ! 時は来たのです――さっさとしなさい!
そう言ってるでしょう。

[マンフレッド]
俺の命が終わりを告げるってことは知っていたし、解ってるさ、
けど、おまえみたいな奴に
俺の魂を渡すようなメにはあいたくない。
去るがいい! 俺は生き様に相応しい死に様を迎えるのさ――
独りでな。

[精霊]
それならば私も仲間たちを召喚しなくてはいけませんね。
――出でよ!

[僧院長]
立ち去れ! 邪まな物の怪どもめ!
――立ち去れと言っておるんだ、
――聖なる神の力が在るところには、おぬしの力も無力なものだ、
ゆえに私は御名によっておぬしに命ずる――

[精霊]
御老人よ! 我らは我ら自身のことも、我らの使命も、
あなたの職務も存じております。
つまらぬことにあなたの聖なる御言葉を無駄になさらぬように。
無駄なことでございます。この人はもはや失われたのです。
もう一度私は彼に勧告します――さぁ、急いで!

[マンフレッド]
俺はおまえを拒むぜ、――とは言うものの、
魂が衰えていく気がするけどな。でも、俺は拒むんだ、おまえを。
俺は決して退かないぜ、おまえに侮蔑を囁くだけの
息の続くうちはね――たとえ精霊であっても
取っ組み合うだけのタフさのあるうちはね。
おまえの奪うつもりのものは、バラバラ死体になるぜ。
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嵐のあと

2005年07月28日 01:18

エアリエル

嵐は去った

透明な羽を ちらちら動かし
風は南 少し強め
青空の下で 陽光を浴びて
きらきらきらめく エアリエル

夕べの嵐は 沖へと飛んで
浪は高く 飛沫は白く
樹々のざわめく 夏の朝
白いカーテン はためいて

嵐は去った
泥にまみれた 肉体は沈む
疲労感とも おさらばさ
きらきら輝く 太陽の下で
僕はいよいよ 空へと昇る

風は南 少し強め
池のほとりの葦 笑う
じーっとしていた キャリバンも
今日は素適な 空 見上げ

高く 高く 舞い上がる
青空の下で 陽光を浴びて
きらきら揺らめく エアリエル
解き放たれた エアリエル

金魚たちの江戸散歩

2005年07月24日 23:42

kingyo

夏が来ると
金魚は泳ぐ
夢のように
ひらひらと

夏が来ると
陽炎が立つ
街角 路上
ゆらゆらと

夏が来ると
きみと泳ぐよ
御城の周りの
お堀沿い

噴水のあたり
藻の陰で
銀座の街を
臨んでさ

あーほんとうに
シアワセだ
きみがいること
それだけでいいさ

夏が来ると
金魚は泳ぐ
夢のように
ひらひらと

2005年07月24日 02:43

 右手では、夏の夜明けが葉群や靄や庭園の片隅の物音を目覚めさせる。そして左手の勾配は菫色の物陰に、湿った路面に無数の急速な轍を抱えている。夢幻劇の連続。確かに。金色に輝く木製の動物たちや、色とりどりの帆布の帆を積んだ花車、全速力の斑模様のサーカス馬20頭、最も驚くべき獣たちの上には子供たちと大人たち。――まるで古代の四輪馬車か、郊外の町での牧人劇のために奇妙な服を身に纏った子供たちでいっぱいの、20台の乗り物は、御伽噺さながらに、形を変えられて、旗を飾られて、花で埋め尽くされていて。――夜の天蓋の下で棺さえも漆黒の羽飾りを立てて、青と黒の大きな牝馬たちが大急ぎで駆け抜けていって。

マンフレッドの魂は…① (第三幕第四場)

2005年07月24日 00:34

いよいよ劇詩『Manfred』の訳も大詰め。最後の山場である精霊との対峙場面です。前回の瞑想の直後、彼の夢想をさえぎるように、僧院長が再登場し、マンフレッドを説得しようと試みますが、彼らの目前には既に最後の精霊が出現しようとしています…!今週と来週はこの最後の場面を訳します。
   ☆   ♪   ♪   ♪   ☆

[マンフレッド]
そこを見て下さい。何が見えますか?

[僧院長]
何も。

[マンフレッド]
そこを見て下さい、と申し上げているのです。
しっかりとね。――それで、何が見えたか教えて下さい。

[僧院長]
身の毛の弥立つようなものが、――しかし、私は恐れませんぞ。
浅黒く、恐ろしい姿が、まるで地獄の神のように
大地から這い上がってくるのが見えます、
ブルカに覆われた奴の顔、憤怒の煙を身に纏った姿。
奴は私とあなたの間に立っています。――
しかし、私はこやつを恐れはしない。

[マンフレッド]
あなたには理由がない――彼はあなたに危害を加えることはないでしょう。しかし、彼の姿はあなたの老いた四肢を痺れさせてしまうほどのショックを与えかねない。だから言っているんです。お下がりなさい。

[僧院長]
だから私はお答えしておるのです。
決して退かぬ――こやつと戦うまでは――
こやつ、ここで何をしておるのだ?

[マンフレッド]
何故――いや――彼がここで何をするのかだって?
俺は彼に来いだなんて頼んじゃいないぜ。
――奴は招かれざる客ってわけです。

[僧院長]
あぁ! 困った御方だ! こんな客人と、何をしなくてはならなかったのだ、あなたは! 私はあなたのなさろうとしていることが恐ろしい。何故にこやつはあなたを見詰め、あなたもこやつを見詰めておられるのか? あぁ! こやつめ、覆いを外した。奴の額には雷の焼け痕が刻まれている。その眼からは地獄の不滅が現れて、ギラギラと輝いている――
立ち去れ!

[マンフレッド]
告げてくれ――おまえの使命は何だ?

Toughness  ―『レオノール・フィニ展』―

2005年07月22日 01:31

UneOmbreRespirante


 この前の三連休、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催中の、『レオノール・フィニ展』に行ってきました。以前からかなり期待していたので、楽しみウキウキでした♪
 いくつかのセクションに分かれていましたが、私が最も気に入ったのは、「鉱物の時代」の絵画です。フィニさん自身、この抽象度の高い作品を描く手法のことを、「Art Brut」と呼んでいたと、カタログには描いてあったのですが、実際これで出来上がった作品は、「存在の痕跡」ともいえるような、そんな作品群でした。『Sommeil dans un jardin(庭での眠り)』は、心地よさそうな表情を見せているものの、皆生きているのかいないのかが、判然とせず、むしろ生きながらにして屍と化してしまっているような雰囲気でした。また、『Une Ombre respirante(息づく影)』(上図)は、まさに手法通りの「痕跡」とも呼べるような画質で、夢の中にいながら、そのまま存在が消えてしまったような、そんな意識の中を体験しているようでした。
 シュルレアリスムのころの作品にも関わらず、最後のセクションに置かれていた、『Les Sorcieres(魔法使いの女たち)』(下図)は、ランボオの『地獄の季節』の冒頭や、『イリュミナシオン』の「Apres le Deluge(大洪水のあと)」など、魔女の描かれていた場面を思い起こさずにはいられませんでした…。フィニさんも魔女たちを自分の味方として描いていたのかなぁ…って。
SorcieresDeLeonor

 フィニさんの作品は、どれも彼女の自我というか、彼女自身の「強さ」を感じずにはいられないものばかりでした。どの作品の中にも、彼女が存在している。強靭さと脆弱さの表裏一体となった内面の奥に、見出されたのは「道化のこころ」なのか。最後に置かれていた『Gorgone(ゴルゴン)』の微笑みは、どことなく何もかもを見透かしてしまっているような声が聞こえてくるようでした…。
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リア王シリーズ④ ☆追われる身のエドガー☆

2005年07月17日 22:25

EdgarInLear

 『King Lear』(邦題:リア王)第二幕第二場で、異母弟のエドマンドの計略によって、まんまと騙されてしまった兄エドガー。エドマンドは私生児ゆえに相続できない父の財産を、嫡男であるエドガーを陥れることで、父から譲り受けようとしていた。エドマンドの計略は功を奏し、人のよいエドガーは濡れ衣の罪業によって、指名手配犯となってしまう。追っ手を辛うじて逃れたエドガーは、とある森の中で、ひとり、生き延びるために、乞食に身をやつすことを決意する――。
    *   *   *
<第二幕第三場>
<とある森。エドガー登場。>

[エドガー]
僕が有罪だと宣告されたらしい。
幸い、木の窪みのお陰で、追手をまくことができた。
開かれている港はなし、異常なほどの警備と監視で
どこもかしこも厳戒態勢だ。
逃げ回っていても、うろたえてはいけない。
そうだ。
ありえないくらいの貧窮さで、最悪に卑しく貧しい身なりをしよう。
人の侮蔑の視線を受けて、畜生同然のありさまに。
顔を汚れまみれにしよう。腰にボロ布を巻きつけて。
髪の毛はもつれてぐしゃぐしゃにして。
ものともせずに、裸をさらしものにして、
天空の風と責苦に立ち向かおう。
この国は僕に「キチガイ乞食」っていう先例を示してくれたが、
そいつらはひどいわめき声で、自分たちの硬くなった
壊死した剥き出しの腕に、針だの串だの釘だのって、
挙句の果てには茨のとげとげした枝だの、
こんなヤバめのブツを使って、
最下層の小作人やら寒村やら、羊飼いの小屋から水車小屋まで、
狂ったような罵声を飛ばし、哀れっぽい猫なで声で、
人の施し物を強要する。
哀れなターリゴッドだ!惨めなトムだ!
何とかなるかもしれない。だけど、
エドガーはもう、僕じゃないんだ。

しらとりは… 小林古径展

2005年07月16日 01:42

しらとりは 悲しからずや
空の青 海のあをにも 染まずただよう



 突然、若山牧水のめっちゃ有名な句を持ってきたと思ったら、なんのことはない、先日、東京国立近代美術館で開催されている『小林古径展』で見た作品、『住吉詣図』のことを書こうと思ったのです。
 この縦に長い作品の、上の方には住吉の神社の鳥居があって、下はそれと対照的な海の青。…『源氏物語』の中で、源氏くんと明石の君の出会ったところ。どこまでも青い海なんですね、瀬戸内海。私は見たことが一度しかないのだけれど、あの海も青かったなぁ…。
 そして、下のほうの、しかもすみっこには、真っ白な鳥が飛んでいる。それで思わず想起してしまったんです、この牧水の歌を。
 古径さんの作品って、どれも柔らかで温かみがあって、でもどこか鮮明で鮮やか。凛とした表情も見て取れます。あやめの花の絵も、たくさんあったけれど、本当に艶やかです。
 日本画って、あんまり興味なかったのだけれど、これで少し興味がわいてきました。機会があったら、また見たいと思います。

マンフレッドのコロセウム瞑想(第三幕第四場)

2005年07月16日 00:34

[マンフレッド]
星々は現れて、月は耀う山々の頂へと昇っている。
――美しいなぁ!
俺はまだ自然と見詰め合っているんだ、
だって夜は俺にとって
人間の顔よりも馴染み深い姿だったんだからね。
それからおぼろげで寂しげな美しさの星明りの影に、
俺はもうひとつの世界の言葉を学んだものさ。
俺はよく覚えているよ、若かったころに、
俺が彷徨っていたときに、――こんな夜には、
コロセウムの内側に立っていたよ、
壮麗なローマの主だった廃墟の真ん中に。
崩れた門に沿うように育った樹々は
紺碧の夜に暗く揺すれて、そうして星たちは
廃墟の裂け目の向こう側、きらきら瞬いていたもんだ。
遠くの方からタイバー河の水面を越えて、犬の叫び吠える声。
それから皇帝の宮殿の程近くに、聞こえてくるのは
梟の長い鳴き声さ。そしてそれを遮るように、
離れたところで哨兵が、気まぐれに歌う鼻歌が
優しい仄かな風に乗り、とぎれとぎれに聞こえてきたよ。
「時」が磨り減らしてできた裂け目の向こうに、
何本かの糸杉が地平線を示しているように見えたんだ、
だけど皇帝たちの住処に、音もない夜鳥たちの住処に、
ほんの眼と鼻の先に立ち並んでいたんだ。
壊れた胸壁を貫いて聳え立ち、
堂々たる炉床にその根を絡ませる樹々の真ん中で、
ツタは月桂樹が伸びようとしたその場所を
奪い去ってしまっているの――
そして剣闘士の血塗られた円形闘技場は建っている、
荒れ果てた完全さとなった崇高な残骸よ!
皇帝の私室やアウグストゥス帝時代のホールが
蒙昧とした砂塵となり大地へひれ伏しているのに。――
それからあなた、廻る廻る月よ、すべての上に輝いていたね、
武骨な廃墟の古びた厳粛さを穏やかにして、
それから元のとおりに、もう一度、
世紀の隔ての亀裂を埋めた、
そんなふうに拡がってゆく柔らな光を撒いていたよ。
まだ美しいものは美しいままにしておいて、
美しくないものは美しくさせながら、
その場所が信仰になってしまうまで、
そうして昔の偉人たちの静かな祈りで
こころが溢れてしまうまで!――
死んでも尚杓を持っている皇帝たち、
彼らはまだ墓から俺たちの魂を支配しているんだ。――
そんな夜だった! それにしても、
こんな時にこの記憶を呼び覚ましてしまうなんて妙だな。
だがまァ、思想自体、哀愁を帯びた軍装で、正装すべき時にこそ、
思想は突飛な逃避行をするなんてことはわかってたけどね。

『夏の夜は…』 百人一首から 

2005年07月13日 01:24

夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを
  雲のいづこに 月やどるらむ



 どちらかというと、天使の顔をした悪魔である幼子たちに、漢字を習得してもらう時間。その最後の数分が中途半端だったので、何気なく引き寄せた本に載っていたのが、この和歌だった。
 普段は会話で使わないような言葉遣いに、ちび悪魔くんたちは、初めはゆっくり口ずさんでいたのだが、何故か興味を惹かれたらしく、一生懸命覚えようとしている。(笑)テキトーに「夏」と書いてある一首を読ませたが、私も自分で読んでいるうちに、その味わい深さに感動。
 ランボオではないけれど、夏の朝にはどことなく風情がある。先月、明け方まで起きていたときに、朝の訪れは空気を変えるのだなぁと、しみじみと実感した。急に空気が爽やかになり、鳥たちが囀り始める。雲の多いときは、その向こう側に白くなり始めた月が在るのだろう。雲の内側に包み込まれるようにして存在している月。昇り始める太陽、白み始める空。…樹々のざわめき。
 いよいよ梅雨が明ければ夏…。今年は幾度、夏の夜明けを体験できるだろう? 
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フォークナーの『嫉妬』を読んで。

2005年07月10日 22:05

 新潮文庫の、『フォークナー短編集』、全部は立ち読みできないので、最初の『嫉妬』だけざーっと立ち読みしてみました。物凄いストーリー展開の速いこと…。
 紋切り型で言うのを恐れなければ、いかにも古き時代の、新教臭いアメリカを感じてしまいました…。でも、そこから生じる「タブー」とそれに対する接触(誤解から想像された年上の男の頭の中での接触)から、人間の理性の枠組みを逸脱し、ついに自分を破綻に追い込んでしまう「黒い感情」の恐ろしさ…恐ろしさと同時に、人間臭さも感じました。
 私の知っている、極めて偏狭なフランスの小説や物語では、「タブー」への接触から逸脱していく人間像も、少し違ったもののように感じます。お国柄なのかもしれませんが、男女間関係の破綻って、自分たちの個人的で自己本位な感情のズレから、破綻していくような作品が、多い・・・ような。もう少し宗教(特にキリスト教の在り方)から個人の内面へと迫る過程がどんなふうに違うのかを考えてみたくなりました。
 最後に、この『嫉妬』という作品を紹介して下さった、イーゲルさんに心からお礼を申し上げます☆

愛する街への祈り

2005年07月08日 01:34

サイレンが鳴って
悲鳴が聞こえて
遠くに昇る
smoke

夕べまで一緒に話してた彼女
何処へ行ってしまったのか
都会の街角
blood

テレビの向こうがわに
叫び 衝突
そして
fake

あの絶対神話が崩れて以来
繰り返された復讐
ネメシスの悪夢
flood

「知識の樹は生命の樹ではない」

2005年07月05日 12:55

 バイロンの『マンフレッド』の冒頭に、「知識の樹は生命の樹ではないのだ」という台詞がある。知ってしまうってことは悲しいことなんだ、だからいちばんよくものを知っている人は本当を知ってしまっているから、いちばん悲しいはずだ、って言うんです。
 自分の「どす黒い感情」に苦しむ姿は、『源氏物語』の六条御息所にもよく現れているけれど、夏目漱石の作品群にも、この「どす黒い感情」が分析されていると思います。羨望・嫉妬・・・。自分が何者かわからなくなる攻め際まで、「私」という自我意識に苛まれなくてはならない主人公たち。そして、その先の姿は、どうやらバイロンの『マンフレッド』冒頭の、冷めた眼へと変わってしまうように思われます。
 一度冷めてしまえば、もう何が起こっても動じない。人は人、どころか人間全体を冷めた眼で見つめざるを得なくなってしまう。そうなったとき、本当に大切な人とのつながりだけが意味を持ってくる…。マンフレッドの場合、アスタルテとのつながりの中だけに自分を見出すことができたけれど、アスタルテがいなくなってしまったから、自分を厭う気持ちが促進されたように思われます。
 漱石に見られる「どす黒い感情」は、「知識の樹は生命の樹ではない」という、冷めた眼=永遠の眼をもてるまでの、生成過程ではないかと思います。
 個人的に言うと、「どす黒い感情」を知ると、「自分の正体」がわからなくなる。そして、それを脱却すると何か違ったものが見えて来たように思います…。今は、マンフレッドの心が痛いほどよく理解できたりして…☆

月が波間に輝き…(Manfred第1幕第1場)

2005年07月03日 00:32

月が波の間に輝き、
蛍が草陰で光り、
古墳の上には堕ちる石がひとつ、
沼には灯る火ひとつ。
流れ星は降り注ぎ、
梟たちは応え合い、
黙ったままの葉群は
丘の影で動かない、
私の魂をあなたの御魂に
強さと奇跡を伴って、近づかせましょう。

あなたのまどろみは深くても
あなたの霊は眠らない、
かき消えることのない影が在り、
うち遣れない想いが在る。
あなたに知れない力によって
あなたは決して独りになれない。
死装束に包まれたあなた、
暗い雲を身にまとう。
永遠に、あなたをこの呪いの
精気の中に生かしましょう。

あなたは 私が通り過ぎるのが見えないけれど
あなたの瞳は 私のことを見ないけれど
これまでも 今も あなたの傍に
在るものとして感じさせましょ。
そうして あの秘められた不安のなかで
あなたが振り向いたなら、
私はあなたの影なので そこに
私がいないことに愕かせましょう、
そしてあなたの感じるものは
隠さなければならないものにならしめましょう。

魔術の声とその詩が 呪いの言葉で
あなたに洗礼を施しました。
大気の精はもはや
あなたを罠で取り囲んだのです。
風の中には声が在って、
あなたに喜びを禁じさせましょう。
そうして夜はあなたに
夜空の静寂全てを拒ませましょう。
そうして昼は あなたが消えて欲しいと
願ってしまう 太陽を抱き続けさせましょう。

あなたの偽りの涙から、
私は命を奪うエキスを採った。
あなたの心臓から、いちばんどす黒い動脈から、
私はどす黒い血液を絞った。
あなたの笑顔から、私は蛇を掠め取った、
似つかわしくも藪にいるよう、とぐろを巻いていましたわ。
あなたの唇から、最も惨めな害をもたらす呪いを、
私は取り出したのです。
この世に知れた毒はみんな試したけれど、
私はいちばん効果覿面なのが
あなた自身だって解ったのです。

冷酷な胸と蛇の微笑み、
計り知れない狡猾さの深淵、
うわべだけは最も誠実な眼、
あなたの閉ざされた心の偽善。
人間らしいあなたのこころとして受け止められる
あなたの術策の完璧さ。
他人の痛みに見出されるあなたの喜び、
カインに対する同胞愛。
これらによって 私はあなたに命じます!
あなた自身が 己に相応しい地獄となるように!

そして あなたの頭に、私は薬を注ぎこむ、
この苦しみに あなたを捧げてしまうため。
睡むことも、死ぬことも、
あなたの運命に存在させないわ。
死はあなたのお望みどおり、いつも
近くにあるように見えるけれど、それは恐れゆえなのよ。
見て! 魔力があなたを変え始めてる、
音もない鎖が あなたを縛り上げたわよ。
あなたのこころと脳髄へ
言葉は伝えられてしまったわ――枯れちゃいなさい!

Musical Baton

2005年07月03日 00:02

 Reading Batonを『はろるど・わーど』のはろるどさんから貰ってきました。というわけで、書いてみます。

1.コンピュータに入ってる音楽ファイルの容量
判らないですねぇ…どのくらいでしょうか?
i-pod shuffle一回分ですね。

2.今聞いている曲
夏は主にBon JoviとD.A.D.のものを交互に聴きます。立秋を過ぎると、Lana Laneが出てきます…。一年中北欧メロディアス・メタル時々New Ageのサイケデリック系らしいです。(殆どDeleriumです。)

3.最後に買ったCD
先週千葉の中古CD屋さんで買った『Pete Sandberg's Jade』と、The Reign of Terrorの『Sacred Ground』と、Reingoldの『Universe』です。三枚まとめて買いました。

4.よく聞く、または特別な思い入れのある5曲

・鈴木結女のアルバム『Now Is The Time』。中でも、三曲めの『Home Place』は、夕暮れの町並みを思い出させてくれます。

・Bon Joviのアルバム『Crush』。中でも、『One Wild Night』はカッコよくって、あんなふうな夜を生きられるようになりたいと、思うばかりです…(憧)

・映画『Cool Runnings』のサウンドトラック。映画も最高に面白かったけど、帰りに親父の買ってくれたこのサントラは未だに我ら三姉弟のお気に入りでござい。

・映画『Interview with the Vampire』のサウンドトラック。Guns and Rosesのエンディングもカッコイイけど、映画で、レスタトの弾いていたピアノの曲もめっちゃ素敵。こっちが欲しくて、おこずかいをはたいた覚えがあります。

・Deleriumの『Poem』。幻想的なサウンドが素敵。特に気に入ったのは、5曲めの『Under Water』。実はこのブログのタイトルはここから貰ったというオチでした(汗)。

 邦楽は、たまにしつこいくらいに「ラルク週間」と「T.M.R週間」があり、そのときに集中して聞きます。が、ラルクは持っているアルバムは『Tierra』『Heavenly』『True』『Heart』の四枚オンリー。あとは弟に焼いてもらったCD-Rの中に、かなりお気に入りの『花葬』が。時代についていけてないShallotの趣味がよく出ています…(焦)。そして何故か、T.M.Rは全部持ってます(爆)。
 高校生のころは、五輪真弓の『うたかた』と西脇唯の『あいしていると言えない』と、相川七瀬が大好きでした。七瀬は織田さんがプロデュースしたアルバムは全部持ってます。(かなり好きでした。七瀬にあこがれつつ、ああなれない自分がいました…/笑)SMAPも、『$10』から『いいこと』まではちゃんとついていってましたね…。当時は木村拓也が好きだったけど、その後すぐに稲垣のほうがよくなってしまいました(笑)。

 クラシックは、小学生のころは、メンデルスゾーンの『無言歌集』が好きでした。今はモオツアルトの『フィガロの結婚』のケルビーノちゃんがロジーナ様に歌う歌が好きです。「恋とはどんなものかしら」だったっけ?? ドビッシーのピアノ組曲『版画』『ピアノのために』も好き。『ピアノのために』の2曲目『サラバンド』が特に…。ベートーヴェンの協奏曲『皇帝』も。
 オペラは、いろいろ見たけど、『フィガロの結婚』が面白かったなぁ…。あと、ヴェルディの『ファルスタッフ』。かなり笑った…。――でも、いっちばん好きなのは、ワグナー!! (見たのはリングだけなんだけど、)作品はどれも好きです。ローエングリンが見てみたいよぉ…。

 最後に…。Bon Joviのキーボード、David Bryanのソロ・アルバム『On A Full Moon』は、ほぼ純粋にピアノ曲集です。夏の夜には、さりげなくいい感じを演出できます。ひとりぼっちのお部屋に、眠れない夜に、夜食のBGMにどうぞ(笑)。

『マンフレッド』からPretty Maidsへ?

2005年07月02日 22:58

  「偽悪について、あなたはどう考えますか?」と言われて、すぐに答えられなかった……。まー、他にもたくさんためになる質問をされたのだけど、ヤハリ即答できなかった……。自分の機転の利かなさが恨めしい。
  ちょっとした『マンフレッド』をテーマにした集まりがあって、それに参加したのだけど、そのときにされた質問。「偽悪」なんて考えもしなかった。マンフレッドの中にも、精霊の歌のところで、「偽善」が言及されているんだけど、その反対に、バイロンは「偽悪」だって言われた。
  (賢くない)私は、すぐに言葉を「悪ぶっている」と変換し、その場をしのいだのだけど、全然答えになってなかった。――と思う。「偽悪」ってのは、自分を悪いとは思っていないってことらしい。そりゃそうだよね、悪を偽っているんだから。悪いフリをしてるってことだもんね。
  「偽悪」の系譜。バイロン以前には、誰がいたかな? シェイクスピアのHamletは、「悪ぶって」いるよね。これは果たして偽悪なのか?? レニエの『生きている過去』にも、「悪ぶっている」青年は出てきたなぁ…。んで、バイロンでしょ? 『マルドロールの歌』のデュカス。『地獄の季節』のランボオさん。太宰。セリーヌ(はまだ読んでないけど、ここに入るのかな?)? でもこれをたどっていくと、プレスリーが出てきて、デヴィッド・ボウイが出てきて、クィーンが出てきて、Bon Joviが出てきて…Pretty Maidsが出てきて…メタルにつながってしまいそう。メロ・メタルとバイロンが同じ線の上にあるってことを嗅ぎ取っていたけれど、この感覚は間違いなのかな?? うーむ。いつか新書にできるくらい、ちゃんと検証できるといいなぁ~…。ってか、こんなのを出版してくれる本屋が果たしてあるのか???


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