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2008年01月26日 21:13
2008年01月15日 01:45

【オーガスタへ寄せる歌】 ロード・バイロン
1816年7月24日
1
運命の日は終わり
宿命の星は傾いたが
あなたの柔らな心は ひとの見つけた過ちを
決して認めはしなかった
あなたのみ魂は僕の嘆きを知らされて
ともに嘆くを 厭うこともしなかった
僕のこころが描いた愛は
あなたの中にしか見出せなかった
2
僕の微笑みに応えて
自然が微笑み返すとき
それが嘘とは思えない
あなたが脳裏をかすめるから
かつて信じた人たちと 僕が戦っているように
風が海と争って
波が気持ちをかき乱すのは
僕とあなたを引き裂くことだけ
3
希望の岩が砕けても
波間に破片が沈んでも
心を痛めつけられても
言いなりになどなるものか
多くの悔恨につきまとわれて
潰されるかもしれないが ナメんなよ
苛まれるかもしれないが 屈するものか
負けないのも あなたを思うゆえであって 奴等のためじゃない
4
人間でも あなたは僕を欺かなかった
女性でも あなたは僕を見捨てなかった
愛されても あなたは僕を苦しめなかった
傷ついても あなたは決して揺らがなかった――
信頼されても あなたは僕を裏切らなかった
別れても 逃げるのではなかった
用心しても 僕を貶めるのではなかった
黙っても この世を偽るのではなかった
5
この世を責ないし、蔑むこともない
よってたかる奴らとは争わない――
心根が世間を重んじるのに向いてないなら
もっと早く避けるべきだった
たとえ過ちが僕を襲い
思った以上に辛くても
失ったものが何であれ
僕からあなたは奪えなかったとわかるだけ
6
滅びた過去の残骸からは
これだけのことを思い出す
僕の大切にしたものは
いとおしむべきものだったこと
砂漠に湧き出す泉のこと
荒野に立ちつくす樹のこと
寂寞にあなたのことを語る
鳥が歌っていることを
2008年01月12日 17:30

【Recumbent, Palms Pressed Together】
―――――― Written by TOMINAGA Taro(1901-25)
――――――Trans. by Ry Beville
I'll rest this body, ravished by disease
Rest it in the damp, decaying leaves
All around me bamboo flourishes
With joints having grown far apart
At night the canes kick up a clatter
In the black and hurried wind of winter
Canes with joints having grown far apart
Provide a darkened canopy above my head
The woven mesh of leaves is whitened
By frost around the hour midnight
Their keenly sharpened edges reach out
Point as fingers to my weakened heart
(from HESO Magazine. Issue#9 Heroes Nov/Dec 2007. p14.)
ravish:~を奪う、力づくで持ち去る
damp:湿った
decay:腐食する
flourish:繁茂する
joint:節目、関節、付け根
cane:(竹などの)茎
clatter:がちゃがちゃいう音
canopy:天蓋(てんがい)、(熱帯雨林の)林冠
e.g: a canopy of branches 頭上をおおう木々の枝.
woven:weaveの過去分詞<weave: 編む、編みこむ
mesh:網、織物
2008年01月06日 20:44

[ドラッヘンフェルスの歌] バイロン作
1
ドラッヘンフェルスの 城立つ岩山
うねり拡がる ラインの河面を睥睨し、
水の流れの 胸もとが 葡萄実る岸辺の合間
拡く 大きく 膨れてる。
――花咲く樹々の 茂る丘
収穫近い 麦やらワインの畑々と
上の方には、遠く白い壁の輝く 散らばっている町々と――
鏤められたワンシーン。あなたが僕といてくれたなら、
ずっと嬉しく 眺めるのに!
2
青い瞳の 貧しい娘が
早咲きの花を 差し出して
微笑み歩くは この楽園。
高みには 散らばっている古い塔
青い葉群のむこうがわ 灰色の壁を聳えさせ
急勾配に 切り立つ岩は数多く
誇り高く 朽ち逝く門が
葡萄樹の陰なす谷を 見下ろしている
でも この河岸には ひとつ足りないものがある――
僕の握る、あなたの優しいその手が ない!
3
もらった百合を あなたに送るよ、
その手に触れる ずっとまえ
枯れてしまうと わかっているけど、
枯れてるからって 棄てないで。
僕の大事な ものだから。
なぜって あなたの瞳に触れ、
萎れかけてしまっているのも
百合が遙か遠くで摘まれ
あなたの心へ 僕が捧たものと知って
あなたの魂を 僕のところへ 導くかもしれないから。
4
魔法のかかった大地を魅せて
貴く 高く 泡立ち流れるその河の
いくつもの角を 曲がるたび
拡がる 拡がる 重なりあわさる美しさ。
最も高慢なひとでさえ ここに住まい満足すること
それを 望みとするだろう。
自然と僕には、これより愛しいところなんて
この世に 見出だせないだろう、
僕の眼のあと あなたの愛しい両の瞳が
このライン河岸を もっと甘美にするのなら!
(『チャイルド・ハロルドの巡礼』第3巻55連より抜粋)
2008年01月03日 23:10

……青年フォスフォルスは[彼を慕う百合に向かって]こう言った――
「ぼくもあなたのものでありたいと思うよ、美しい百合さん。でも、そうするときみは不孝な子となってお父さんとお母さんと別れることになるのだよ。遊び友だちもなくなってしまうよ。いまきみといっしょにあそびたのしんでいるおなじ年ごろの者たちよりずっと大きく、ずっとえらくなろうと欲を出すことになるよ。いまきみの心とからだをやさしく暖めているあこがれが、たくさんの光線に分かれて、こんどはきみを苦しめ、いじめることになるよ。一つの願望は次の願望を生むということになるからね。ぼくがきみのなかに火花を投げ入れてたきつけた最高の歓喜が、絶望的な苦しみとなり、それによってきみはほろび、そしてあらたに別人となって生まれ変わるのだ。――この火花が思想なのだよ!」
……[百合にとって]青年フォスフォルスへの愛は身を切りさいなむような悲嘆となった。
(ホフマン『黄金の壺』神品芳夫訳、岩波書店(岩波文庫)、1974、1986、35-36頁。)
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