除夜の鐘

2008年12月31日 17:02

シクラメンの花2008

【除夜の鐘】 中原中也

除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。
千万年も、古びた夜(よる)の空気を顫(ふる)はし、
除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。

それは寺院の森の霧(きら)つた空……
そのあたりで鳴つて、そしてそこから響いて来る。
それは寺院の森の霧つた空……

その時子供は父母の膝下(ひざもと)で蕎麦を食うべ、
その時銀座はいつぱいの人出、浅草もいつぱいの人出、
その時子供は父母の膝下で蕎麦を食うべ。

その時銀座はいつぱいの人出、浅草もいつぱいの人出。
その時囚人は、どんな心持だらう、どんな心持だらう、
その時銀座はいつぱいの人出、浅草もいつぱいの人出。

除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。
千万年も、古びた夜の空気を顫はし、
除夜の鐘は暗い遠いい空で鳴る。



【詩神を呼ぶ展覧会2008】

1 「モーリス・ド・ヴラマンク展」 @損保ジャパン東郷青児美術館
2 「田村正樹展」 @アートスペース羅針盤
3 「コロー 光と追憶の変奏曲」 @国立西洋美術館
4 「ライオネル・ファイニンガー展 - 光の結晶 - 」 @横須賀美術館
5 「パリ・ドアノー~ロベール・ドアノー写真展」 @日本橋三越ギャラリー
6 「ジョン・エヴァレット・ミレイ」 @Bunkamuraザ・ミュージアム
7 「マティスとボナール - 地中海の光の中へ - 」 @川村記念美術館
8 「エミリー・ウングワレー展」 @国立新美術館 
9 「線の巨匠たち」 @東京藝術大学大学美術館
10 「速水御舟 - 新たなる魅力 - 」 @平塚市美術館
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肝焼き夫

2008年12月30日 01:11

純白の贈り物2

年末の 誰もいない歩道
見上げれば 澄んだ夜空にお星さま
家々には 暖かいあかりが灯り
溜め息ついて 待っている

タクシーが止まる
酔っぱらって立てなくなった夫が降りる
送ってくれた上司に挨拶して

ぐたぐたの夫を
背中にしょって歩く
家に着いたら
そのまま布団に倒れこんで

お帰り
無事に帰ってきてくれて
ほっ と溜め息
一応約束の門限 守ってくれたしね
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「時」の力を感じて。

2008年12月22日 02:45

純白の贈り物1
【チャイルドハロルドの巡礼】第1編より、22連-23連
    バイロン作  Shallot B.訳

22
勾配になってる丘のうえ、または谷間の下のほう、
かつて王たちが住んでた館がある。
しかし今じゃ野の花だけが、ひっそりそこに息づいている。
そして朽ちた「壮麗」が、まだそこをうろついている。
むこうにゃ王の麗しい宮殿が聳え立っているよ。
金持ちのぼんぼんヴァセックさんよ! あんたは英国一の裕福な坊ちゃんだった。
かつてあんたは専用の「楽園」を築いたんだ。
驕慢な「富」のばーさんがド偉い業を成し遂げたとき、誘惑相手の
温厚な「平穏」くんがいつもみだらな魅惑を避けてきたんだと、ばーさん気づかなかったのさ。

23
むこうの山の永遠に美しい崖の下で、
そこにあんたは棲んでいて、快楽の悪巧みを練っていたんだな。
しかし今じゃあだれにも見向きもされないもののように、
あんたの夢御殿は、あんたみたいに寂しいかぎりだ!
ここには伸び放題の雑草が、うらさびれたホールへの道をふさぎ、
大きく放たれたままの入り口へさえ行けない。
なんて虚しく地上の快楽は降り注ぐんだろうなぁ、なーんて、
新たな思いが胸に湧き立つ。
この世の喜びはやがて「時間」の激しい渦のなかで木っ端微塵に消えちまうのさ。
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『「トゥーレの王」とローレライ』読了

2008年12月20日 21:32

「トゥーレの王」とローレライ「トゥーレの王」とローレライ
(2008/10)
エルンスト ボイトラー

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【オススメ度:☆☆☆】
ラルクのアルバム『Truth』に入っている「ローレライ」以来、ちょっぴり興味をもって早10年。
どうしてラルクの「ローレライ」が生まれたのか。そのイメージのルーツにはいつも惹かれています。
ドイツ文学にはあまり興味が湧かないほうなのですが、ロマン派つながりで、
図書館の新着コーナーからせしめてきました。

とりあえず、ボイトラーの本文は難しくって流し読みしてしまったのですが、
訳者の山下剛氏の解説は面白かったです。
ブレンターノ(1778-1842)のローレライの引用&訳がpp.129-136.に掲載されています。
ここからわかることは、ローレライの乙女が悲劇の片思い娘だったってことです。
恋人に捨てられたがたゆえに魔性の力を帯びてしまった彼女。

やがて[詩のなかの]ローレライの台詞が全体との均衡を破って六詩節にわたって膨張していき、その中で彼女自身の恐るべき生い立ちが明かされる。ローレライ自身が不実な恋人への報われない憧れに胸を焦がす愛の犠牲者であり、そしておそらくはその癒しがたい憧れから、かくも破壊的な魔力を持つようになったことが述べられるのである。
(p.137.)

ブレンターノ以外にも、アイヒェンドルフ(1788-1857)の「ローレライ」についてはa/ei/iの暗い母音とr音についての音声面からのアプローチなどを細かく述べています。また、ハイネの「ローレライ」についても、どこか醒めた眼でみている詩人の思いを巧みに解説してあるんですね。

私が特に興味を惹かれたのは、その次の項目、「ローレライ」の絵画作品についての解説です。
文学的モチーフにはよくあることだが、やはり絵画とのイメージの関連は面白い。
音楽の解説もついているので、これからの仕事に利用できたらなー、なんて思いました。

ラルクのCDも併せてオススメです~

HEART

シントラの丘と森

2008年12月14日 20:39

冬のシクラメン08の1
【チャイルドハロルドの巡礼】第1編より、19連-21連
    バイロン作  Shallot B.訳

19
崩れそうな修道院を冠しているのは、畏ろしい岩山。
草木の繁った斜面を包むのは、真っ白なコルク樫。
焼けつく御空に焦がされた山苔。
窪んだ峡谷、そこでは陽のあたらない潅木が涙してるにちがいない。
凪いだ海の優しい青藍。
燃え立つ緑の大枝を飾るオレンジ色。
崖から谷へと飛びこむ奔流。
高みに葡萄樹、低きに柳枝。
ひとつの拡がる景色に混じり、すべてが色とりどりの美に輝いている。

20
それからゆっくり曲がりに曲がった道を登り、
道すがら、ときおりためらいがちに振り返っては、
さらに高い巌から、新たな美を眺めるがいい。
やがて「聖母の悲しみの家」で一息つきなよ。
そこでは質素な修道士たちが旅人たちに小さな聖遺骨を見せ、
様々な伝説を語ってくれる。
ここで冒涜者は罰せられてきたんだ。見て!
あそこの穴窪の深く、隠者が長きに渡って住んでいたんだ。
地上を地獄に変えてまで、天に値したいと願っていたんだ。

21
そしてきみが岩へと飛び渡るとき、ここそこに、おびただしい数の
荒削りの十字架が、小径の脇に突き刺さっているのを見て。
しかしこれは「献身」の供物だとは思わないで。
これらは殺人の怒りに手向けた儚い記念碑なんだ。
叫び声をあげた犠牲者が、暗殺者の刃に血を流したとこにはどこでも
誰かが朽ちゆく木片で、十字架を立ててやるのさ。
そして森や谷は、この血塗られた大地には、こんな幾千の十字架で満ちている。
ここでは法も命を護りはしないのだ。

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シントラの町、リスボンの波。

2008年12月14日 04:30

シントラの景色

【チャイルドハロルドの巡礼】第1編より、15連-18連
    バイロン作  Shallot B.訳

15
あぁ神様! 天がこの豊饒たる大地に為したことを
目にできるなんて、美しい光景にもほどがあるぜ!
樹々にはなんと甘い香りの赤い実のかずかず!
丘の向こうになんて美事な景色が広がっているんだろう!
しかし人は不敬な手でこの景色を傷つけるんだ。
御命に最も背いた者どもに対し鞭を振り上げ
厳罰に処したそのときに、
三倍にもなる復讐の力で、その熱い御矢は放たれ、ガリアの害虫どもに押し寄せて、
もっとも残忍な敵の群れを地上から一掃するだろう。


16
視界に飛び込む最初の瞬間の、リスボンの美しさといったら!
高貴な水面に映るその姿に
詩人たちは得意満面、金の砂を撒いている。
しかし今、その水面に、強大な力を持つ千の船が押し寄せる。
ポルトガルの人々にイギリス軍が与して
援軍を送ったのだから。
無知と高慢で膨れ上がったひとつの国民がいる。
フランス人の容赦なき皇帝の憤怒から己を護るために
刀を振りまわす手をぶん殴りながらも酷く憎んでいるんだ。

17
けれど、遠く光り輝いて、天界のようなこの町へ
入ってくるひとは誰でも、
異邦人の眼にはかずかずのものが薄汚れて見えるから、
惨めな気持ちで彷徨うだろう。
だって掘っ立て小屋も宮殿も、おんなじくらい小汚い。
身分の貴賤に関係なく、誰もがコートやシャツの清潔さなんて
気にも留めてないんだから。
昔エジプトを滅ぼしたっていう疫病にやっつけられたとしても、
みんな髪も梳かさないし、洗濯もしないし、へっちゃらなのさ。

18
もっとも高貴な佳景に生まれた惨めでちっぽけな奴婢どもよ!
自然よ、どうしておまえの驚嘆をこんな連中に浪費するんだ?
見ろ! 輝ける楽園のようなシントラの町は、
山と谷の綾なす迷宮にそそり立っているのだ。
あぁ! 畏れの世界に向かって極楽の門を開放した
詩人が語るものよりも
人間の眼を眩ませるほどの眺めを通して、
瞳が映すこの景色の半分を伝えるために
絵筆やペンで描けるだろう手なんてないだろう。
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Greensleeves

2008年12月06日 20:02

ロセッティのグリーンスリーヴス

グリーンスリーヴス
歌:ロリーナ・マッケニット (訳:Shallot B.)

ああ、あなた、ひどいひとだ
つれなく僕を捨てるなど
一緒にいられて嬉しくて
ずっとあなたを愛してきたのに

グリーンスリーヴスこそぼくの喜び
こころのときめきはそこにあった
僕の心の喜びなんて
それが僕のあのひと以外に誰がいようか

僕はあなたの望むものを
なんでも差し出すつもりだった
命も屋敷もあなたの愛と
その気持ちを授かるために賭けてきたのに

グリーンスリーヴスこそぼくの喜び
こころのときめきはそこにあった
僕の心の喜びなんて
それが僕のあのひと以外に誰がいようか

煌びやかに金色で
刺繍された白い衣装
白い絹のあなたの衣装
僕は喜んで買ったのに

僕の心を奪ったグリーンスリーヴス
僕の喜びもしあわせも
すべてグリーンスリーヴスにあった
それが僕のあのひと以外に誰がいようか



The VisitThe Visit
(2006/11/14)
Loreena McKennitt

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