太宰治「春の枯葉」より

2009年04月30日 01:44

水仙09の2

(野中)(菊代のほうに背を向け、外の景色を眺めながら)もう、すっかり春だ。津軽の春は、ドカンと一時(いっとき)にやって来るね。
(菊代)(しんみり)ほんとうに。ホップ、ステップ、エンド、ジャンプなんて飛び方でなくて、ほんのワンステップで、からりと春になってしまうのねえ。あんなに深く積っていた雪も、あっと思うまもなく消えてしまって、ほんとうに不思議で、おそろしいくらいだったわ。あたしは、もう十年も津軽から離れていたので、津軽の春はワンステップでやって来るという事を、すっかり忘れていて、あんなに野山一めんに深く積っている雪がみんな消えてしまうのには、五月いっぱいかかるのじゃないかしらと思っていたの。それが、まあ、ねえ、消えはじめたと思ったら、十日と経たないうちに、綺麗(きれい)に消えてしまったじゃないの。四月のはじめに、こんな、春の青草を見る事が出来るなんて、思いも寄らなかったわ。
(野中)(相変らず外の景色を眺めながら)青草? しかし、雪の下から現われたのは青草だけじゃないんだ。ごらん、もう一面の落葉だ。去年の秋に散って落ちた枯葉が、そのまんま、また雪の下から現われて来た。意味ないね、この落葉は。(ひくく笑う)永い冬の間、昼も夜も、雪の下積になって我慢して、いったい何を待っていたのだろう。ぞっとするね。雪が消えて、こんなきたならしい姿を現わしたところで、生きかえるわけはないんだし、これはこのまま腐って行くだけなんだ。(菊代のほうに向き直り、ガラス戸に背をもたせかけ、笑いながら冗談みたいな口調で)めぐり来(きた)れる春も、このくたびれ切った枯葉たちには、無意味だ。なんのために雪の下で永い間、辛抱(しんぼう)していたのだろう。雪が消えたところで、この枯葉たちは、どうにもなりやしないんだ。ナンセンス、というものだ。

菊代、声立てて笑う。

(野中)(わざとまじめな顔になって)いや、笑いごとじゃありませんよ。僕たちだって、こんなナンセンスの春の枯葉かも知れないさ。十年間も、それ以上も、こらえて、辛抱して、どうやら虫のように、わずかに生きて来たような気がしているけれども、しかし、いつのまにやら、枯れて落ちて死んでしまっているのかも知れない。これからは、ただ腐って行くだけで、春が来ても夏が来ても、永遠によみがえる事がないのに、それに気がつかず、人並に春の来るのを待っていたりして、まるでもう意味の無い身の上になってしまっているんじゃないのかな。

太宰治「春の枯葉」青空文庫より抜粋)
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殺人を犯したグルナーレ

2009年04月29日 22:35

日本橋のチューリップ2

彼はひらけた回廊に出た。彼の眼には、
夜の、澄んだ空の最後の星が煌いた。
しかし、ほとんど気にとまらない。
ひっそりした部屋から漏れる別の灯りが彼の視界に飛び込んだのだ。
彼はその灯りに引き寄せられた。
ほとんど閉ざされた扉が、中の光をこぼしていた。しかし、それだけだった。
急ぎ足で、ある人影が外へと通り過ぎた。
やがて、止まった。そして振り返った。そして動かなかった。それはまさに、彼女だった! […]
二人は顔を見合わせた。
彼女の額には、気づかれず、忘れられた、彼女の焦った手が残した、点に過ぎないものがあった。
彼が眼にし、そしてほとんど我慢がならなかったものは、その色だけだった。
おお! 小さくても確かな罪の証だ。それは血なのだ!

(バイロン『海賊』第3編398-517行より抜粋)
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バイロン『カイン』読了

2009年04月27日 01:24

クノップフ風の町の夕暮れ
カイン (岩波文庫)

岩波文庫が思いつきで復刊しているのではないかしらと思うときがしばしばありますが、
今回もそのご多分に漏れず復刊されたものを、夫がゲットしてきました。

バイロンの作品群の中では、後期作品に位置し、亡くなる3年前に書かれた劇詩です。
系列としては『マンフレッド』の系譜に属するものなので、個人的にはかなり気に入っている作品。
10年くらい前に那須書房から出ている『バイロン全集』の、古ぅ~い訳で読みましたが、
そのとき以来、私のルシファーの像は、めっさカッコイイ長髪の細身の銀髪の……(笑)
(だからダンテの『神曲』のルチフェルを、ドレの版画で見たときショックだったわけで…。)
ルシファーって、まるで下図のピンクの髪の毛のお兄さんの銀髪版ですよ。↓↓
トロイダルさんの図

話が反れました…(汗)
カインのメランコリックな雰囲気に、久しぶりにうるうるしました。
電車の中で読んでいて、もう夢中。
知識と引き換えに失った永遠の命。
人間の罪も、罪だと知ってしまったがゆえの罪。
そして、死に対峙する彼の姿は、現代には失われつつある、紛れもない「死」そのものを眼前にしたときの感覚なのだと思います。

でも、私は『マンフレッド』のほうが好きですけどね。
バイロンの後期作品は、どことなく喋りすぎのような気がします。

マンフレッド (岩波文庫)

第6文型出現!

2009年04月26日 23:45

日本橋のチューリップ
休日だというのに、話題がなくて、今週の更新を危うくあきらめるところでした(笑)。
無学をさらしものにする気満々で、この話題。

……フランス語って、文型が第6文型まであったんですね!!><;
第1文型は、英語と同じ。
第2文型も、英語と同じで、まあ納得。
第3文型と第4文型が、英語の第3文型に該当するんですね。さらにビックリしたのが、第4文型では、間接目的補語(間接補語)には、前置詞が伴われるという事実。。。なんだか、ちょっと不思議なのです。
第5文型が、英語の第4文型と同じ、第6文型が英語の第5文型と同じ。ただし、第6文型に用いられる動詞は、繫合他動詞構文という…、まず漢字が読めない(笑)。なんだかとても難しいです。


現代フランス広文典現代フランス広文典
(2000/10)
目黒 士門

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この参考書、いつかゆっくり最初からじっくり読みたいなぁと思いながら、重宝している一冊です。

アルトー「バリ島の演劇について」

2009年04月18日 21:20



アルトーの『演劇とその分身』を読む機会に遭遇。
一時期バリにハマってインドネシア語を触った私は、「バリ島の演劇について」という章でテンションあがるあがる(笑)。仕事帰りのしみったれた電車のなかで、もう夢中でした!☆

彼らの動作が木の太鼓のリズムにあまりにもぴたりと合って拍子をとり、リズムを非常に性格に中空で、おそらくその頂点で捕らえているので、その音楽の拍子はかれらの空洞の四肢から発しているかのように思われる。

幾重にもヴェールを被ったような、そして夢みるような女たちの目。
その夢の瞳は我々を吸い込み、その前では、我々自身が亡霊になったかのようだ。

舞踊の振りの数々、たとえばさまざまな魂の状態を混ぜ合わせる足の回転、宙を飛ぶような小さな両手、軽いがしかし確実な手拍子など、そのどれもが完全な満足を与えてくれる。

我々が立ち会うのは、一つの精神状態から一つの動作を作り出す精神的な錬金術であり、その乾いた簡素な線形の動作は、我々の行動が絶対的なものに向かうとき持つような動作ばかりなのである。


(アントナン・アルトー『演劇とその分身 アントナン・アルトー著作集Ⅰ』安堂信也訳、白水社、1996年、107ページより抜粋。)

バリには行ったことがないけれど、いつかこのダンスは見てみたい! ガムラン(鉄琴)の音がかなりお気に入り。あれは弾いてみたいです~!
そして、アルトー…。すごいです。筆力に脱帽。。。

バリ島 (講談社現代新書)バリ島 (講談社現代新書)
(1998/03)
永渕 康之

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↑↑この本、かなりオススメ。
バリの歴史と同時に、今私たちが抱いているバリのイメージの源流を探っている、良書です。
だいぶ前に図書館で借りて読みました。バリの部族の争いのところが、特にいいと思います。

対決! スペイン女VSムスリム女

2009年04月16日 14:51

カトレア(赤い唇という名の。)

【チャイルドハロルドの巡礼】第1編より、58連-60連
    バイロン作  Shallot B.訳

58
<愛>のえくぼをつける指が刻み込んだしるしは、
<愛>の触れた痕を残す頬が、どれだけ柔らかいかを示している。
巣を立つために翼を広げるキス、その唇は
キスされるまえに、相手の男に勇敢であれと命じている。
彼女の眼差し、なんと激しく美しいのだろう! どれほど
太陽の神は、その頬を焦がそうと、虚しく言い寄るのだろう!
頬は彼の愛が触れるので、むしろいっそう艶やかに輝いている!
誰も蒼白い奥方を求めて北国をうろつきはしない。
連中の姿はなんて貧相で、けだるく病的で、弱々しいんだろう!

59
見較べよ、詩人たちの褒め称える国々よ!
見較べよ、この土地のハレムよ!
まさに今、皮肉屋でさえ認めざるを得ない美しさを讃えるために
ずっと遠く、私はこの詩を綴っているのだ。
見較べよ、あのムスリムの天女たちとスペインの黒い瞳の娘たちを。
ムスリムの天女たちは、<愛>が風に乗って来るといけないから
風にも触れさせてもらえない。――知っていただきたいのだ、
そこに我らが賢き預言者の楽園を見つけていることを、
そこに、天使のように優しい黒い瞳の天女を見ていることを。

60
おお、パルナッソスの山よ! おまえを私は今見ている。
夢想家の熱狂した眼に映っているものではなく、
物語の伝説的な光景ではなく、
雪をまとって立ち昇り、その土地の空へと突き抜け、
自然な壮麗さにある山の威厳!
私がこのように歌おうとするも不思議なことではない。
通り過ぎるおまえの巡礼のもっとも卑しい者でさえ、
弦をかき鳴らしおまえの木霊を自ら求めることだろう。
おまえの高みからはもう、ひとりの詩神さえ翼を翻すことはないだろうけれど。
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戦うサラゴサの乙女

2009年04月15日 14:18

サラゴサの夕暮れの風景
【チャイルドハロルドの巡礼】第1編より、54連-57連
    バイロン作  Shallot B.訳

54
このために、スペインの乙女は、目覚め、
弦をはずしたギターを柳の木に立てかけ、
なにもかも女であることを失い、短剣を伴侶として、
大声で歌を歌い、戦闘行為に及んだのか?
かつて傷跡にさえ脅え、
梟の子が警戒して鳴く声にさえ怖がって蒼褪めた彼女が、
いまや縦隊を壊乱させる銃剣が軋りあうのを、
そして刀が閃くのを見て、まだ温かい死体の上を、
軍神マルスさえ慄きながら踏みしめるところを、ミネルヴァの足取りで歩むのだ。

55
彼女の物語を聞いて驚嘆するひとよ、
おお! もしもあなたが彼女の優しかったころを知っていたなら、
墨色をしたヴェールさえ嘲笑うかのような彼女の黒い瞳を注視したなら、
画家の力を挫くような、彼女の長い髪を見かけたなら、
女性の優美さ以上の美しい彼女の姿を見たなら、
サラゴサの塔が、<危険>なゴルゴンの面持ちで彼女が笑い、
近づく敵の兵力を弱め、<栄光>の恐ろしい追跡の先陣を
きっているのを見たなどとは、
とても思いもよらないだろう。

56
恋人が倒れこむ――彼女は間の悪い涙を流さない。
隊長が殺される――彼女はその懸命の配置に就く。
仲間が逃げる――彼女は卑しい逃亡を妨げる。
敵が退く――彼女は反撃の先陣へ向かう。
誰も彼女のように恋人の霊を慰められない。
誰も彼女のように指導者の剥落に復讐できはしない。
男の輝く希望が失われるとき、いかなる乙女も彼女のようにそれを取り戻しはしない。
誰も、女の手で挫かれ、打ち砕かれた壁の前で、
飛ぶように逃げるゴール人を、彼女のように激しく追跡しはしない。

57
だが、スペインの乙女たちはアマゾンではなく、
あらゆる愛の蠱惑的な技に合うよう造られている。
このように武器を手にして息子たちに匹敵することはあっても、
そして恐ろしい密集軍へと立ち向かうことはあっても、
それは彼女の伴侶の上を舞い、その手をついばむ鳩の優しい強さにすぎない。
誠実さと同じように優しさにあっても、
病的なお喋りで有名な遠国の女性たちをはるかに凌ぐ。
彼女の心意気は確かに気高く、彼女の魅力はたぶん同じくらい素晴らしい。
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ナポレオン戦争とスペインの男たち

2009年04月14日 13:50

モレーナ山脈の写真
【チャイルドハロルドの巡礼】第1編より、51連-53連
    バイロン作  Shallot B.訳

51
角を曲がるたびに、モレーナ山脈の薄暗い高みが
重たい鉄の砲台を高く頂いている。
そして、見渡す限りに眼に映るのは、
山の榴弾砲、損壊した道路、
林立する柵、決壊した運河、
配置された部隊、常駐の見張り台、
岩穴に詰め込まれた弾薬、
茅葺屋根の小屋にいる装弾鞍をつけた馬、
山積みの砲弾、燃え続ける火縄。

52
そうしたものが、来たることの兆しとなる。しかし、
頷きによって、か弱い独裁者たちを権力の座からひきずり降ろした彼は、
一瞬その鞭を振り下ろすまえにためらうのだ。
ほんの一瞬、鞭を遅らせてくださるのだ。
まもなく、その軍隊が行く道を掃き清めることだろう。
西国は世界の惨禍をもたらす者を認めなければならないのだ。
ああ! スペインよ! おまえの審判の日が、なんと悲しいものとなるか、
それがゴールの鷹の、翼が広がり舞い上がる時とは。
そしておまえは息子たちがまとめて冥府へと突き落とされるのを見ることになるとは。

53
若き者、誇り高き者、勇ましき者どもは、ひとりの驕れる領主の、
災いに満ちた領土を広げるために、斃れなければならないのか?
道はないのか? 服従と墓の間には。
略奪の増加とスペインの没落の間には。
人の崇める<権力>は、その運命を決するのか、
あるいは懇願者の訴えを聞き入れないのか?
<勇敢>な決死の行動は、何もかも無駄だというのか?
賢明な助言、愛国的熱意、
熟練の技、若者の情熱、そして青年の鋼の心も?
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悪魔たちの饗宴――セヴィリヤ

2009年04月13日 12:00

シエラの風景
【チャイルドハロルドの巡礼】第1編より、42連、45連-47連
    バイロン作  Shallot B.訳

42
そこで奴らは朽ちてゆく――<野心>の馬鹿どもめ!
そうさ、<名誉>が奴らの死体をくるむ墓土を飾りたててくれる。
馬鹿げた詭弁さ! 道具に成り果てた奴らを見ろよ、
毀れた道具さ、独裁者たちが人間の心臓で奴らの道を敷き詰めるとき、
数限りなく投げ捨てた、毀れた道具さ。――どこへ行くのか?――ただ夢ばかりさ。
独裁者どもが権力をつなぎとめておくものを成し遂げることはないのかね?
あるいは、本当に僅かな土地を有し、
骨のひとつひとつがついには砕けるその場所を守ることができるのか?

45
誇り高いセヴィリヤが屈服せずに勝利するところ、
ハロルドはひとり寂しい道をどんどん進んでゆく。
セヴィリヤはまだ自由なのか?―― 略奪者たちは獲物を求めてきたのだが!
すぐに、まもなく<征服>の烈火のような足が踏み込み、
その美しい寺院を粗暴な足跡で汚すのだ。
避けられぬ時よ! 運命に抗ってあがくことは無駄なこと。
そこでは<荒廃>がお腹をすかせた稚魚たちの卵を産みつける。
そうでなければトロイもフェニキアもまだ滅びてはいないだろうし、
<美徳>はすべてを打ち負かし、<殺人>が蔓延ることもない。

46
近づく運命には誰も気づかずに、
宴が、歌が、お祭り騒ぎがここには満ち満ちているのだ。
歓楽の奇妙な流儀が時間を費やし、
祖国の傷ではこれらの愛国者たちが血を流すこともありはしない。
ここでは<戦争>の喇叭の音ではなく、<愛>の音楽が鳴り響く。
ここでは<愚>が彼の信者をとりこにする。
そして若い眼をした<淫猥>が夜更けに辺りを歩きまわる。
<悪徳>は、都会の音なき犯罪でその身を固め、
崩れる城壁に最後までしがみつく。

47
農夫はそうではない。震える伴侶とともに、
その重たい眼を遠くへ見遣ることもなく、潜んでいる。
葡萄畑が枯れ果てるのをみるといけないから、
<戦争>の幾度もの熱い吐息の下で荒れ果てるのを見るといけないから。
もはや、優しい宵の明星の下、彼の陽気なカスタネットを
アンダルシアの陽気な踊りが打ち鳴らすこともありはしない。
あぁ、君主どもよ! おまえたちが台無しにした歓喜の味を思い知れたら、
<栄光>の罠にひっかかって苦悩することもないだろう。
皺枯れたけだるい太鼓も黙り、人はずっと幸せだろうに。
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大鐘敦子『サロメのダンスの起源』読了

2009年04月11日 18:17

サロメのダンスの起源―フローベール・モロー・マラルメ・ワイルドサロメのダンスの起源―フローベール・モロー・マラルメ・ワイルド
(2008/09)
大鐘 敦子

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図書館で借りてきたら、もう夢中になってしまいました……。買うかどうか検討中。でも高い…><;

この書物では、中心にフローベールの『エロディアード』を据え、その起源からフローベールの後の作品にまで徹底してサロメと母ヘロディアスについて調べ抜いています。(こんな本が書けるようになりたいなぁ…/呟。)

フローベールでは、ヘロディアス・サロメ・ヨカナーンが太陽の系譜、ワイルドではサロメ・ヨカナーンが月の系譜であり、その間にマラルメが挟まれているような格好になっているらしい。確かに、ワイルドの『サロメ』では、月がキーワードになっていることはもう間違いないことで、私も読みながら月は重要なモチーフになっているなぁと感じていましたが、そういう裏事情があったんですね。
これを機にマラルメをちょっと読みたくなりました。フローベールも岩波の『ボヴァリー夫人』挫折したままなので…(汗)。

カラー版 エロスの美術と物語―魔性の女と宿命の女カラー版 エロスの美術と物語―魔性の女と宿命の女
(2001/02)
利倉 隆

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モローの絵画の読み解きも、『エロスの美術の物語』と併せて読んでいたので、面白くなってきました。西洋画の読み解きって、最近本当に面白くってしょうがないです。『サロメのダンスの起源』のほうが、『エロスの美術と物語』よりも、徹底してサロメについて書かれているので、モローのサロメモチーフ絵画について知れるのは、『サロメのダンス~』かもしれません。

図書館の本でしたが、持ち歩いてじっくり読んでいたのでボロボロになっちゃった。。。(汗)
司書さん、ごめんなさい><;; でも、夢中になれるくらい、オススメです!!

井村君江『アーサー王ロマンス』読了

2009年04月11日 17:56

アーサー王ロマンス
アーサー王ロマンス (ちくま文庫)

英文科のくせに、実はアーサー王ってあんまり今まで興味なくて、映画や何やらで若い子たちがいろいろ話しているのを「ふーん」って聞いているだけだったんですが、テニスンの「The Lady of Shalott」の絵画やら文学作品やらを読むようになって、どうやら避けられなくなってきた模様。今更ながら入門書を手に取りました。

井村君江さんの本は、実はワイルドの童話集で既にお名前を知っていて、友人の中には直接井村さんとかかわりのある人もありましたので、本屋さんで名前をみつけてどことなく親近感が(笑)。

すごくわかりやすくて、読みやすい、いい入門書です。しかもアーサー王関連のことが一目瞭然。伝説を比較したり、学説を併置させて紹介してあるので、こちらも理解が深まりやすかったです。

アストラットの美しき乙女エレインについての記事は、143-148ページにありました。寝る前に細々と読んでいたので、ここに到達したときは夜中にひとりでテンションあがりました☆*^-^*どことなく盲目的で、『源氏物語』の柏木とキャラかぶりますね(笑)。

トリスタン・イズー物語 (岩波文庫)トリスタン・イズー物語 (岩波文庫)
(1985/04)
不明

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ラーンスロットとグウィネヴィアとアーサー王には彼らの内奥を想像するだけで心が痛みました。
10年前に、『トリスタンとイズー』の物語を読んで、こちらもまた心が切なくなりましたが、どちらにせよ、19世紀の芸術家たちが惹かれるのもよくわかります。描きたくなる大河物語です。

蛇足。昔ジャンプの漫画で『ライジングインパクト』というのがありましたが、キャラクターの名前のいくつかがアーサー王伝説によるものでした… 今回、この本を読んでいて、どうしてもラーンスロットのイメージが…↓↓↓(汗)。
ライジングインパクト (2) (ジャンプ・コミックス)ライジングインパクト (2) (ジャンプ・コミックス)
(1999/06)
鈴木 央

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ハイ、スイマセン(汗)。。。

『ぬらりひょんの孫』第4巻読了

2009年04月08日 01:42

ぬらりひょんの孫 4 (4) (ジャンプコミックス)ぬらりひょんの孫 4 (4) (ジャンプコミックス)
(2009/04/03)
椎橋 寛

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きっと、牛鬼に出会う前だったら、黒田坊がいちばんだったと思います(笑)。
『ぬらりひょんの孫』4巻、読了しました。

長い長い四国襲来編エピソードのなかの、千羽様と苔姫様の挿話(総じて鳥居さんと袖モギ様エピソード)は、黒田坊のカッコよさが全開でした☆ いや~…強い!!(そこが残念なところ…?/笑) 袖の中に一体どうしたらあんなに武器を隠し持っていられるのでしょうか、などとリアリズム的なことを考えたらいけないんでしょうね(笑)。基本的にかなりクールだと思うのです。鳥居さんを助けるのに一生懸命だったのも、リクオくんのクラスメートだからっていうのもあったでしょうが、回想を見る限りそれだけではないような。恩返しだったのかな?

スーツもよくお似合いになるようで、UOMOかどっかのイタリアスーツをビシッと着こなせるような気にさえなります(ホホホ)。

個人的には、黒田坊の過去を物語る挿話がいつか欲しいです。

蛇足ですが、本誌のほうで奴良組のおそろいのはっぴを着るのがありましたけども、牛鬼の反応がめっさツボでした。やっぱり彼は、『ぬら孫』における私のいちばんだけあります(笑)。どこまで私好みなんでしょう!*>▽<*

<関連記事>
『ぬらりひょんの孫』第1巻読了
『ぬらりひょんの孫』第2巻読了
『ぬらりひょんの孫』第3巻読了

「田村正樹展」@K's Gallery(東京)

2009年04月07日 16:05

K's G 2009 DM

待望の田村さんの個展へ行ってきました!(3月29日日曜日に!)
更新遅くてゴメンナサイ…。(3月26日(木)-3月31日(火)銀座K's Gallery、会期終了です~)

今回は大型の作品と小型の作品の両方の展示が見られました。
そのなかでもいくつか印象的だったものを…。

mebuki K's 2009
①mebuki
真っ白な、まるで雲の中の世界に、黒い影が浮かび上がる…
「Genesis」と同じテーマでありながら、「Genesis」よりも審美的な世界観が垣間見られる作品でした。実はこの展覧会のなかで、いちばん気に入ったのはこの作品です。

凍解 K's 2009
②凍解(上の写真では左側のもの)
葉書ほどのサイズの作品。本当に小さな画面には、晩冬の暗闇の中、音もなく解けてゆく雪の切なさに胸が痛くなりました。優しい春の到来によって、消えてゆく雪の精霊たち。それは無音の、静寂のなかで繰り広げられる、小さくて悲しいドラマのワンシーンのようです。雪女の悲しみ、なーんて言ったら大げさかしら。

K's 2009 春 田村さん
③たゆたい(上の写真ではいちばん右の作品)
「苦しんで生まれてくる作品が多いんですが、この作品は、ぽっ、と出来上がった作品で。」という田村さんの言葉通り、「mebuki」や「Genesis」のような切り刻まれるような深淵から浮かび上がる辛さはまったく見られず、むしろ(前回のアートスペース羅針盤で見た)「気韻」と同じ、上品で煌く空気が満ち溢れていました。
(余談ですが、里中満知子の『女帝の手記』では、聖武天皇の章の見出しが「たゆたひ聖武天皇」だったので、題名を見たときに、やっぱり里中の聖武天皇を思い出してしまったのは内緒です。)

田村さんの展覧会って、いつも季節感をすごく意識されているので、今回は春の季語や季節の言葉が多かったです。個人的には清明節がとっても好きなので、春の光の美しさが眩しい個展だったと思います。

09 田村さん 神戸 春
次は神戸での展覧会が予定されています。お近くの方は是非御覧ください!!
そして私は次の東京での個展を楽しみにしています!!!!

2008年夏「田村正樹展」@アートスペース羅針盤
2008年夏「田村正樹展」@アートスペース羅針盤
2007年秋「田村正樹展」@K's Gallery
2007年春「田村正樹展」@アートスペース羅針盤
2006年秋田村さんとの出会い

女帝の手記―孝謙・称徳天皇物語 (2) (中公文庫―コミック版)

ジェノベーゼの真夜中

2009年04月01日 02:15

水仙09の1
【谷間に眠る男】 ランボー作 宇佐美斉訳

ここはみどりの穴ぼこ 川の流れが歌をうたい
銀のぼろを狂おしく岸辺の草にからませる
傲然と立つ山の峰からは太陽が輝き
光によって泡立っている小さな谷間だ

若い兵士がひとり 口をあけて 帽子も被らず
青くみずみずしいクレソンにうなじを浸して
眠っている 草むらに横たわり 雲のした
光の注ぐみどりのベッドに 色あおざめて

グラジオラスに足を突っ込んで ひと眠りしている
病んだ子供のようにほほ笑みながら
自然よ あたたかく揺すってやれ 寒いのだから

かぐわしいにおいに鼻をふるわせることもなく
かれは眠る 光をあび 静かな胸に手をのせて
右の脇腹に赤い穴がふたつのぞいている

   1870年10月

(ちくま文庫『ランボー全詩集』宇佐美斉訳 88-89頁より抜粋)
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