2009年11月22日 22:46

【チャイルドハロルドの巡礼】第2編より、39連-41連
バイロン作 Shallot B.訳
39
貴公子ハロルドは航海した。そして悲しみのペネロペが
波間を見下ろした、不毛の場所を通り過ぎた。
そしてその先に見えた、あの丘は、今も忘れられていない
恋する者の隠れ家であり、あのレスボス人の墓。
謎めいたサッポーよ! 不滅の詩行は、
不滅の炎を吹き込まれたその胸を救えなかったのか?
たとえ永遠の命が、大地の子が熱望する唯一の天国である
竪琴(つまり詩)を待ち望んでいるのだとしても、
永遠の命を与えた彼女は生きられなかったのか?
40
貴公子ハロルドが遠くにレウカディアの岬に望んだのは、
ギリシアの秋の優しい夕暮れのことだった。
そこは彼がずっと見たいと望み、離れたくなかった場所だった。
ときおり彼はかき消えた戦争の光景を目にした、
アクティウムの海戦、レパントの海戦、致命的なトラファルガーの海戦。
しかし、彼はちっとも心を動かされなかった。
なぜなら、(彼は幾分縁遠い不名誉な星に生まれついたから)
血みどろの争いや、雄々しい戦いに喜びを見出さなかった、
むしろ殺害者の生業を厭い、軍隊の人間を笑い飛ばした。
41
しかし、レウカディアの遙かに突き出た嘆きの岩の上高く、
宵の明星を目にしたとき、そして
実らぬ恋の最後の場所に望んだとき、
彼はただならぬ熱情を感じた、あるいは感じたと思ったのだ。
そして古代のあの山の影のもとを
壮麗な船舶がゆっくりと進んで行くとき、
ハロルドは大海の陰鬱な流れを見つめていた、
そしていつものようにもの思いに沈んではいたが、
彼の瞳はより穏やかにみえたし、蒼褪めた額には幾分皺が寄っていないようだった。
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