楽園の完成しない理由

2010年10月31日 22:51

1840年代のライン河

【チャイルドハロルドの巡礼】第3編より、55連挿入歌
    バイロン作  Shallot B.訳

1
ドラッヘンフェルスの城立つ岩山
広くうねる河ラインを威圧する。
その水の胸元は大きく膨れ、
景色に散りばめられるのは、
葡萄を実らせる川岸、花咲く樹々の豊かな丘、
麦や酒の兆しを見せる平原、
そしてちょこんと点在する町の数々、
遙か彼方に輝く白壁。
もしきみがいてくれたなら、
喜び二倍で見られたのになぁ!

2
百姓娘の眼は深い青色
早咲きの花を両手に微笑んで
この楽園を歩いてる。
見上げれば、中世の塔がたくさんあって
青葉のむこうに灰色の壁が聳えている。
急峻な坂道をつくるたくさんの岩と
誇り高く朽ちてゆく堂々とした門が
葡萄樹の繁る谷を見下ろす。
でもライン河の岸辺にはひとつ足りないものがある――
僕の握るきみのしなやかな手!

3
僕の貰った百合を送るよ――
きみの手に触れるずっとまえに
枯れちゃうことも分かっているよ。
でも「こんなもの」って棄てないで。
ほとんど萎れた百合を瞳に映し、
遠くライン河で摘まれたものだときみが知ると、
その心をここ僕のもとへ届け、
僕のこころをきみのもとへ届けるかもしれない……
と、僕が愛でたものだから!

4
河は魅力的な大地の魔法となって
気高く泡立ち流れてく――
幾千の角を曲がるたび
彩り豊かな景色が開けてく。
もっとも傲慢なひとでさえ、ここに留まり、
生涯楽しく住むことを願うだろう。
<自然>も僕も、地上では
こんなにも愛しい場所を見つけられない――
きみの愛しい瞳が僕の視線を追いかけて
ラインの岸辺をもっと馨しいものにしてくれたらなぁ!
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忘れられない「あのひと」

2010年10月31日 22:34

なつのおもいで2010

【チャイルドハロルドの巡礼】第3編より、50連-55連
    バイロン作  Shallot B.訳

50
ああ 喜び湧きあがる河よ!
人間が、その耀う創造物をそのままに残し、
戦争という鋭利な大鎌で、その地表から美しい実りの約束を刈り取ることがなければ、
その美は永遠に続く美しい岸辺を流れ流れてゆくように、
その波を神の賜物とせよ。――それから、
その馨しい水の流れる谷間を見れば、
「天」のように彩られた「大地」を知ることになるだろう。
僕がそんなふうに見るためには、流れに足りないものは何?
――きみが忘却の河だったらなぁ……。

51
幾千の戦闘がきみの岸辺を傷めつけた。
けれど、そんな戦闘も彼らの名誉もなかば消え去って、
<殺戮>が血まみれの兵士たちを死屍累々と積み上げた。
墓ですらどっか行っちまった。何だったんだろうね?
河の流れは昨日の血を洗い流し、
滲みはひとつも残らなかった。きみの綺麗な流れには
陽の光が耀う光を跳ねかえしている。
だが、黒ずんだ<記憶>の蝕むような夢のうえを、
きみの波が虚しく転げる、すべてを洗い流すように見せかけながら。

52
そう、ハロルドは心のなかで呟いた。で、川沿いを進んだ。
流浪の身を愛しいものにしてしまいかねない谷に朝早く響く
愉しげな鳥のさえずりが目を覚まさせるすべてのものに
まったく無感動なわけではなかった。
穏やかな燃え立つ感情と引き換えになった
落ち着いた険しい表情を持ち、眉間には厳しい皺が刻まれていたが――
<喜び>がその顔からいつも失われていたわけではなかった。だが、
そんな景色にあっても、<喜び>も束の間の痕を残して、すっと消えていったのだ。

53
彼の情熱の日々が燃え尽きて灰になったとしても、
すべての<愛>が彼に扉を閉ざしてはいなかった。
微笑みかけるひとに冷たい視線を返すのは無意味だ。
<嫌悪>があらゆる俗物から優しさを遠ざけても、
こころは喜んで優しさへと跳ね返るにちがいない。
このように彼は感じたのだ。というのも、ある愛情深い胸の内には
柔らかな<追憶>と美しい<信頼>があったからだ。
その胸の内へ、彼の内奥がいる優しい時間へ、
彼の心は融け合った。

54
彼のような人間には雰囲気的に奇妙に思えるので、
なぜだか分からないのだけど、生まれたての頃にこそ見られる、
蕾の開くような幼子の自分ではどうしようもない様子を
彼は愛することを知った。
あんなに他人に対する侮蔑を滲みこませていた心を
こんなふうに変えるなんて、何がそうさせたのかを知るのは無駄なことだ。
けれど、変わったんだ。そばにあったものが何もかも輝きを失くしたとき、
孤独のなかで摘み取られた愛情を育てなくてはならない小さな力は、
彼のなかで、こんなふうに輝いていた。

55
というわけで、ひとつの柔らかな心があった。
それは、教会で結ばれる絆よりも強い絆で
彼の心と結ばれていた。結婚したわけじゃなかったけれど、
その愛こそが純粋で、嘘偽りとは程遠く、
人間の憎悪という試練の真っ只中でも断たれることなく、
女性の目にはもっとも恐ろしい危難によって
さらに強く結ばれた。
これは強靭なものだった。そして彼がそこにいなくても、
異国の岸辺からは彼の言葉が、あの心へと流れ込むだろう。
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廃墟の城が見てきたもの

2010年10月31日 22:19

ライン河のお城のひとつ

【チャイルドハロルドの巡礼】第3編より、46連-49連
    バイロン作  Shallot B.訳

46
もう考えるのはよそう。本当の<叡智>の世界は
創造の過程にあるのだ、でなきゃおまえの中にあるのだね、
母なる<自然>よ! その壮麗な河ラインの岸辺に、
さて、おまえのように豊かなものはほかにあるのか?
そこでハロルドは、聖なる作品を見詰めている、
あらゆる美の調和を。渓流、谷津、
果実、葉群、巌、樹、麦畑、山、葡萄畑、
そして<荒廃>が緑の衣裳をまとって棲む、葉で覆われた灰色の壁から
厳めしい表情で別れを告げる、主のいない城の数々。

47
そしてそこに、気高い心が聳えるように、城々は建っている。
疲れ果て、だが賤しい群衆に頭を垂れることもなく、住む人もない。
ただ隙間から分け入る<風>に従い、
<雲>と影を交わし合うだけ。
彼らにも若く誇り高い日があった。
旗が高く翻り、戦いが下方を過ぎていった。
しかし、戦った者どもは血まみれの白布に包まれ、
風に翻っていたものも今では切れ端残らず灰燼に帰す。
吹きさらしの胸壁はもう未来の一撃には耐えられないだろう。

48
あの胸壁の下(もと)、あの壁の中、
<豪腕>は<熱情>に囲まれて棲んでいた。
盗賊の首領どもが、そのよこしまな命令を下し、
後の世の偉大な英雄たちに劣らず誇らしげに、
それぞれ武装した城を守っていた。
「偉大」と呼ばせるために購われた<歴史>の1ページ以外、
征服者が持っていて、この無法者どもがもっていないものは何だ?
広大無辺の領土か――それとも装飾のついた墓か?
奴らの望みは熱く、奴らの心意気は勇敢だった。

49
その諸侯の争いで、そして一騎打ちの戦いで、
どんな大胆な行為が記録もされずにかき消えてったか!
しかし<愛>は、浮気な誇りでうまく図案化された紋様で、
その紋章を盾に掲げさせて、
あらゆる鋼鉄(はがね)の心臓をすり抜けていったものだ。
やがて、なおも奴らの炎は燃え盛り、そして激しい抗争が繰り広げられ、
破壊がもたらされた。美しい災禍(わざわい)の女を手に入れたものの、
ほんとうに多くの塔がその目に映したのは、
変色した河ラインが廃墟の下をながれてゆく姿だった。
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「上から目線」のナポレオン

2010年10月24日 16:27

Napoleonさん

【チャイルドハロルドの巡礼】第3編より、36連-45連
    バイロン作  Shallot B.訳

36
そこで斃れたのはもっとも偉大な者であって、最悪な者じゃない。
そいつの心意気は対照的なものが混じり合っていた。
あるときはもっとも気高いものに、
そして別のときには取るに足らないものに、執着心を持っていた。
極端過ぎるのだよ! きみが中庸なひとだったら、
きみの王座はまだその手にあったかもしれない、あるいは初めからなかったか。
豪胆さがきみの栄達と凋落をもたらした。
きみは今でさえ皇帝然とした物腰を取り戻し、
世の中を揺るがそうとしている、この世の<雷神>よ!

37
きみは<世界>の<征服者>であり、<虜>でもある!
<世界>はまだきみに慄くけれど、きみの放埓な名は
<名誉>の笑いものになっているほかは、もはや只の人だということ以外に、
人々の脳裏には浮かばないだろう。
<名誉>はかつて隷属者としてきみに言い寄り、
きみの獰猛さに諂うようになった。やがてきみは自分を[全能の]神だと思った。
驚愕した国々も逆らえずに同じように思い、
ひとときの間、きみの主張にはなんでも従っていた。

38
おお ひとの上下を行き、貴賎のいずれにあっても
国々と戦い、戦場から逃れ、
諸侯の首を足蹴にしたと思えば、
屈従するように指示された足軽以下となった。
ひとつの<帝国>をきみは毀し、支配し、再建した。
しかし自分のちっぽけな情熱を支配することも出来なかったし、
どんなに人間の天性を深く見抜けても、自分のことを見抜けなかったし、
戦いに対する欲望を抑えられずに
魅惑的な<運命>が気高い星を立ち去ることも見抜けなかった。

39
しかし教わったこともない生来の天性で
よくもきみの魂は渦巻く潮を耐え忍んできたものだ。
そいつは、<叡智>であれ<冷酷>であれ、根深い<傲慢>であれ、
敵にとっては胆汁や苦蓬なのさ。
きみが怯むのを見て嘲ろうと、
憎悪に満ちた敵の軍隊が差し迫ったとき、
きみは冷静になにもかもを耐え忍ぶ眼で微笑んだ。――
<運命>が甘やかしたお気に入りの子を棄てるときにも、
彼は降り積もる災禍に屈することなく立っていた。

40
いいときより悪いときのほうが賢明だったね。というのも、
[いいときには]野心がきみを早急に支配して、
民衆とその思想を常習的な嘲りや非難を顕在化させてしまったからだ。
嘲りの気持ちを抱くのはいいとしても、
唇や眉にそれを見せたり、
きみの立場をひっくり返されるところまで、
使うつもりだった道具を嘲っては駄目だ。
勝っても負けても、この世は虚しい。
それがきみに示されたってわけさ。で、そんな貧乏籤を引いてしまったひとにもね。

41
もし、断崖の岩に立つ塔のように、
きみが立つも崩れるも独りぼっちであるように作られていたならば、
民衆に対するそんな嘲りは、激震に勇敢に立ち向かうのに一役買ったことだろう。
だが、民衆の思想はきみの王座への道を舗装する踏み石だったのだ。
彼らの賞賛はきみの輝く最大の武器だった。
(きみの王権を示す「紫衣」を投げ捨てたのでなければ、)
きみはフィリップ王の息子アレクサンダー大王の役を演じるべきで、
民衆を嘲笑うような頑固者の哲学者ディオゲネスを演じるべきじゃなかった。
王笏を手にした皮肉屋どもには、この世はあまりに広すぎる塒だからだ。

42
血気逸る胸にはじっとしていることが地獄なのだ。
そしてそこにきみの破滅の種があった。
情熱と魂の運動がある。
それは自分のちっぽけな存在には留まっておれず、
野望のちょうどいい中庸を越えてゆくことを求める。
そして、一度火がついてしまえば、永遠に鎮火できず、
高邁な冒険を餌食とし、休息よりほかには飽きることがない。
心に情熱を抱く者、かつて抱いていた者すべてに、それは致命的なのだ。

43
情熱は影響力でひとを狂わせる狂人を生み出す。
<征服者>に<国王>、宗派や組織の<創設者>、
それに加えて<哲学者>、<詩人>、<政治家>、みんな
精神の秘泉をあまりに激しくかき乱し、愚弄する連中に
己が愚者とみなされる、黙っちゃいない輩どもだ。
羨まれるが、あまりにも望ましくない奴らだ!
その痛みはどれほどのものか!
ひとつの胸が開かれたなら、そこにはひとつの教えがある。
それは、輝きたいとか支配したいとかいう欲望を捨てるようにと告げるものだ。

44
彼らの吐息が人の心をかき乱す。
そしてその人生は嵐、その嵐に乗り、ついには沈むのだ。
けれどもそのように育てられ、戦うことに頑なで、
その日々が過去の苦難を生き延び、
平穏な暮れがたに溶けゆくものならば、
彼らは悲しみ、もはやどうでもいいという思いに囚われて死んでゆく。
燃料の注がれない炎がちらちら揺れて消えてゆくように、あるいは
うち捨てられた刀が、自らを腐食し、
人目に触れぬまま錆びついてゆくように。

45
山をのぼり詰めた者は、
とても高い頂が雲と雪に覆われているのがわかるだろう。
人々を凌ぎ、支配する者は、
下々の者どもの憎悪を見下げなくてはならない。
遙か高く、<栄光>の<陽>は輝いている。
そして遙か下には<大地>と<海>が拡がっている。
彼の周りには凍てついた岩があり、
彼の無防備な頭には轟音を立てて嵐が吹き付ける。
頂にのぼり詰めた労苦に報いてくれるものは、こんなものなのだ。
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David Bowie 「Labyrinth」

2010年10月09日 16:48

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10年ぶりくらいに見ました!
まぢ魔王カッコイイ!
そして音楽も素敵☆☆
映像もとっても奇麗です☆
撮影がどんなふうなのか、かなり気になるところです~

「不思議の国のアリス」や、ブリューゲル&ボスの絵画の悪魔がいっぱい、
イギリスの妖精やら小鬼の要素も入り混じり、
なんとも素敵な地下世界。
「Magic Dance」や「As the world falls down」など、心に残る曲がたくさん収録されています!



デイヴィッドの踊りが…(笑)
もちろんサラちゃんも美しくて☆

お気に入りの一枚です~!


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