アルプス遠望

2011年02月26日 18:12

The Alpsなだれ

【チャイルドハロルドの巡礼】第3編より、62-64連
    バイロン作  Shallot B.訳

62
それでも、この景色は遠ざかる。
見上げると、アルプスの山々。<自然>の宮殿。
巨大な壁が雲のなかで雪の髪を頂いている。
冷厳な氷の邸で<永遠>を玉座に据えている。
そこでは雪の霹靂、<雪崩>が生まれ、崩れ落ちる!
どんなふうに<大地>が<天>を貫き、
無力な人間を下界にとり残しているのかを見せて、
<雪崩>があらゆる精魂を昇揚し、峰のあたりで引き寄せる。

63
けれど、こんな比類ない峰を見渡すまえに、
素通りできない場所がある。
モラーよ! 誇り高き愛国者の戦場よ!
そこでは殺戮の酷い記念碑が見られるかもしれない、
だがその土地を征服した者を恥ずべきことはない。
ここにバーガンディは記念碑としていつまでも残る骨塚を
自分たち墓なき主に残したのだ。あてどない亡霊たちは、
黄泉の河ステュクスの岸辺を葬られることなくさまよい、
金切り声で叫んでいた。

64
ワーテルローはカンネーの殺戮と張り合えるけれど、
モラーとマラトンの双名は拮抗する。
その双名は誠に穢れない<栄光>の勝利であり、
邪を嗣いだ<腐敗>には到底購えない勝利品を、
市民軍の、友愛に満ち、誇り高く、野心なき心意気と手で
勝ち得たものだった。
どちらの国家もドラコンのような条項によって、
神聖な王権を生み出す法律に対する冒涜を
嘆く運命にはなかった。
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『天保十二年のシェイクスピア』作業開始

2011年02月20日 16:39

天保十二年のシェイクスピア [DVD]天保十二年のシェイクスピア [DVD]
(2006/06/21)
唐沢寿明、藤原竜也 他

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ひょんなことから2011年は井上ひさしという新たな開拓地を開くことになりました…。
とはいっても、シェイクスピア絡みで、取り扱う食材は『天保十二年のシェイクスピア』という一点のみですが…。
日本文学と英文学の共同作業をするという目的で、お題が「ユーモア・笑い」。
偉い先生方にお誘いを受け(見捨てられてなかったことが嬉しい!)、
共同研究をさせていただくことになりました。
基本的にオフィーリアのいるところへはどこへでも行きたいし、
彼女のためならなんでもするので、
今回も「オフィーリア」狙いで二つ返事をしました…。

天保十二年のシェイクスピア (1973年) (書下ろし新潮劇場)天保十二年のシェイクスピア (1973年) (書下ろし新潮劇場)
(1973)
井上 ひさし

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で、(DVDはまだ見ていないのですが、)早速この書物を一冊読んでみました。…

――うわぁ、濃いぃ…(汗)

とりあえず、お冬ちゃん(作中でのオフィーリアちゃんもどき)と、
もひとつやるとしたら、お光ちゃんあたりを取り上げようかな…と。

で、私に割り当てられた下作業(GWまで)が、
「1972年までに出版されているシェイクスピアの作品の訳本リストを作成する」…。

…規模が大きすぎて、果たして自分の手に負えるか非常にに不安…。
てか、何見たら載っているのだろう…?
とりあえず(本当に)少しずつネット検索してはいるものの、
如何せん自分要領が悪いから、右往左往してる感…。

どげんしょ…。
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ライン河との別れ

2011年02月13日 20:42

ライン河の夕暮れ

【チャイルドハロルドの巡礼】第3編より、59-61連
    バイロン作  Shallot B.訳

59.
さよなら、さよなら、美しいライン河よ! ずいぶんと永いこと
旅人は道半ばにして楽しく道草していたんだろう!
旅の道連れのあるひとも、独り者の<瞑想>も、
きみのような景色には迷いこみたくなるものだ。
己を苛む者の胸をいつまでも餌食にし続ける禿鷹を
止めさせることができるのも、ここなのだろう。
ここには陰気すぎず陽気過ぎず、
野生的だが荒々しくはなく、畏敬すべきだが峻厳ではない、
そんな自然が一年の秋のような豊饒の<大地>と向かい合っている。

60.
さよなら、さよなら! さよなら!
きみのような光景に言える別れなんてない。
心はきみの持つあらゆる彩で染まっている。
麗しいライン河よ! もし愛おしくきみを見詰めるのを
仕方なくやめなきゃならなくっても、別れ際には
ありがとうの気持ちを込めて、賛美の言葉を紡ぐよ。
きみより壮大な場所も立ち現れて、もっとぎらぎら輝くかも。
でも、輝かしいもの、美しいもの、温和なもの、そういった昔日の栄光の数々を
ひとつながりの迷宮に纏めあげはしないだろう。

61.
忘れられた栄光を眠らせた雄大さ、
やがて来る豊熟を匂わせる満開の花々、白い街の輝き、
流れ落ちる河、断崖の暗がり、
森の茂み、そして合間に見えるゴシック風の城壁――
人の手で模造したみたいな動楼に見える形をした
野の岩山。このなかに、景色と同じように幸せな顔をした人々。
その豊かな自然の恵みは、ここではあらゆるものに拡がって、
きみの河岸に湧き出している。
近くでは、幾つもの帝国が崩落するけれどね。
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夏の雨、弾丸の雨

2011年02月12日 20:05

Coblentzの景色の絵

【チャイルドハロルドの巡礼】第3編より、56-58連
    バイロン作  Shallot B.訳

56.
コブレンツの傍、こんもりとした丘のうえ、
緑の塚に載っている
小さくて簡素な「ピラミッド」があって、
その下には英雄たちの遺灰が隠れている。
我々の敵の遺灰だが、マルソーへの栄誉を妨げてはならない。
フランスのために、その権利の回復のために戦い、斃れた
その運命を嘆き、羨み、
夭折した英雄の墓には
涙が、大粒の涙が猛々しい兵士たちの目蓋からあふれてくる。

57.
マルソーの若き生涯は、短く、勇敢で、それでいて誉あるものだった。
彼の死を悼む者は、敵味方双方の軍だった。
異邦人が運良くここを訪ない、
その勇気ある<心意気>の栄えある眠りに祈りを捧げることを許してほしい。
なぜなら、彼は<自由>の<闘士>であり、
<自由>がその武器を巧く使う者に与えた、
懲罰のための特権を濫用しなかった
数少ない人々のひとりだったからだ。
彼は清廉さを失わなかった。ゆえに男たちが彼に涙したのだ。

58.
ここエーレンブライトシュタインは、
高く聳えてはいるが、地雷の爆風で黒くひしがれた壁で、
炸裂弾や弾丸が甲斐なく強固なそれに跳ね返り火花を散らした
在りし日の面影を残している。
<勝利>の<塔>よ! おまえはそこから
平原へと潰走する敵の姿を見たのだね。
だが<平和>は<戦争>が挫くことのできなかったものを壊し、
<夏>の雨にあの誇らしい甍を曝した。――
そこにはかつて何年も鉄の雨が空しく降り注いでいたのだった。
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ハートの女王

2011年02月02日 15:44

The Queen of Hearts Tarts

【ハートの女王】 伝承童謡
      Shallot B.訳

ハートの女王
とある夏の日
タルトをいくらか作りました

ハートのジャック
きれいさっぱり
タルトを全部盗みました

ハートの王様
タルトのために
ジャックをひどく懲らしめた

ハートのジャック
タルトを返して
もうしませんって約束しました
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