夜半

2011年04月27日 18:52

春の川べり11の1

 道の両側にそびえる街灯に照らし出された商店街。
 そのまっすぐに伸びた道路の向こうがわに、赤い信号が燈っている。あの信号はいつも赤だ。いや、時折青く、ほんの一瞬だけ黄色いこともあるが、たいていは赤い。
 商店街のここそこには細い路地が張り巡らされていて、時たま路地から路地へ、左から右へと、ひとが横切ってゆくのが見える。――ああ、あの娘(こ)も左から右へと横切った。
 私はあの赤い信号の手前を、左側へと折れる。赤い信号の手前を、細い路地へと入って行く。
 その先には、人家の生垣に、沈丁花の小さな花が、白く群れをなして咲き誇っている。凍りついたように息を潜めている邸宅の外灯に、山羊の繊毛のような銀色にぼうっと照らし出されている。だが、辺りを覆う闇に漂っているのは、おぼろげな色彩などではなく、春の冷気に混じり合う、咽ぶような匂いなのだ。

ダ・ポンテとキーツ

2011年04月24日 15:16



夫が借りてきたDVDを週末に(たぶん)二人で見ることがなんとなく日常になっているのですが、
今回はこれ。『ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツァルトの出会い』。
今まで夫が借りてきたなかで、俳優さんがもっとも私の好みの顔だった(笑)。
そして、ヒロインのお姉ちゃんとのツーショット画面が美しい!
&モーツァルトもなんか健気でいい感じ(笑)

ダ・ポンテ氏については、あまりよく知らなくて、モーツァルトのみっつのオペラの台本を書いたひと
くらいの認識だったんですが、こんなだったらまぢ素敵だし!

ひとつひとつの画面が本当に美しくって、ストーリーもすっかり夢中になってしまう展開でした☆
(思わず身を乗り出してみてしまった箇所がいくつかありました!)

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ロレンツォ・バルドゥッチ、リノ・グワンチャーレ 他

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誰がこまどり殺めたの

2011年04月23日 19:35

Who Killed Cock Robin

【誰がこまどり殺めたの】
伝承童謡
Shallot B.訳

「誰がこまどり殺めたの」
「僕さ」とすずめが言いました
「僕の弓矢で 僕が殺した」

「誰が彼の死見取ったの」
「私」と蝿が言いました
「小さなこの目で見取ったの」

「誰が彼の血を受けた」
「私」と魚が言いました
「小さなこの皿で血を受けたのだ」

「どなたが彼の死衣を縫うの」
「わしじゃ」とかぶと虫が言いました
「わしの針と糸でもって縫うんじゃ」

「どなたが彼のお墓を掘るの」
「あっし」と梟が言いました
「あっしの鋤と鍬で堀りやす」

「どなたが司祭をなさいます」
「わしじゃ」と鴉が言いました
「わしの小さな聖書で務めよう」

「どなたが牧師をなさいます」
「私」と雲雀が言いました
「闇でなければ私がします」

「誰が松明運ぶのですか」
「俺が」と鶸が言いました
「すぐにとって来て俺が運ぶよ」

「どなたが喪主になられます」
「妾(あたし)よ」と鳩が言いました
「愛するひとのために妾が喪主になりましょう」

「どなたが棺を運びます」
「俺だ」と鳶が言いました
「夜でなければ俺が運ぼう」

「誰が付添人となるのです」
「我々が」と鷦鷯が言いました
「夫婦そろって我らが付き添う」

「誰が賛美歌歌うのかな」
「私」と鶫が言いました
枝にとまって「私が歌うわ」

「誰が弔鐘を打ちますか」
「拙者」と雄牛が言いました
「拙者引けるゆえ打たせていただく」

空の鳥たちはみな
かわいそうなこまどりのため
弔いの鐘が聞こえてくると
溜め息咽いで泣きました
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チェコフの発音が素敵☆

2011年04月16日 16:42



「スタートレック(Star Trek)」ネタです。

彼は、スタートレックの中で、私が一番好きなキャラクターです。
チェコフのかわゆさ&なんとも言えない米語(?)の発音(!)が最高!!
Shallotの好きな男性のオーラを発しまくっている彼です。

名前は、チェコフ・パヴェル。
50年くらいまえにこのかわゆさなので、現在の新作映画では
天才ロシア青年に変身しちゃってますが、
もともと『宇宙大作戦』ではダメキャラです(汗)
そして、そこが素敵なのです!!

なお、イケてる新型チェコフくんはこちら(↓)。


インタヴューバージョンです☆

自然と溶け合ってみても

2011年04月09日 19:28

【チャイルドハロルドの巡礼】第3編より、72-75連
    バイロン作  Shallot B.訳

72
僕はもう自分自身の〔肉体の〕中に生きているのではなく、
周りを取り囲んでいるもの〔自然〕の一部になる。
そして僕にとって高い山々はひとつの感情で、
人間の〔棲む〕都市の喧騒は苦しみなのだ。
ただ、その魂が飛んで行き、
空と、頂と、しける海の大波と、そして星々と
灼(あらた)かにもまじわりあうとき、
生き物たちに分類されて、否が応にもつないでいる肉体という鎖以外、
<自然>のなかで嫌気の差すものなんて、僕には何も見えない。

73
こうして僕は〔自然へと〕溶け込んでゆく。これが生だ。
苦悶と諍いの場を眺めるように、過ぎし日の雑踏の砂漠を僕は見ている。
そこでは、とある罪が理由で、行動しては苦しむために、
僕は<悲しみ>を演じていた。
でもついに新しい羽で飛び立つんだ。
未熟だけれど迎えうつ突風と同じように溌剌としてゆく
羽の生え変わるのを僕は感じる。
僕たちの存在にまとわりつく冷たい土塊の枷鎖(かさ)を跳ね除けて、
その喜びに満ちた翼に乗って行くんだ。

74
蝿や蛆虫のなかでもっと幸せな肉片となるものを別にすれば、
ついに肉体における生から引き離され、
精神が貶められた形骸から完全に解き放たれるとき、
そして自然の元素がもとの元素と元通りに結びつき、
塵がもとの塵に戻るとき、目に見える万物が、
霊的な思想が、それぞれの<地霊>が、
光を失い、温かくなるのを感じないなんてことあるはずない。
今だって、ときおり、不滅の大地の運命を
僕はともにしてるんだもの。

75
山々も、波も、空も、僕がその一部であるのと同じように、
それは僕の一部だよね。
それに対する愛は、純粋な情熱を持って僕の心の奥深くにあるよね。
それと較べたら、この世のものをことごとく蔑んではいけないよね。
俯きかげんなひとたちの、
キツくて俗っぽい無関心を求めて、
あえて冷淡を装って、視線を地べたに落としては、
こんな気持ちを経験するよりも、
苦難の潮流に逆らって突き進むべきだね。
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ひとりぼっちのススメ

2011年04月04日 19:41

レマン湖の湖面

【チャイルドハロルドの巡礼】第3編より、68-71連
    バイロン作  Shallot B.訳

68
レマン湖は澄んだ面差しで僕を口説く。
その面差しはまさに鏡――そこへ、星々と山々が、
自分の輪郭に見える静けさに
空遠くから映し出される青藍の、澄みきったものを眺めている。
ここには人が多すぎて、確かな心持ちで
僕の見ている力を見抜くなんてできないんだね。
でもすぐに、僕の心のほうでは、
衆愚と交わって自分を連中の群れに閉ざす前の、
あのころの昔と相も変わらず大切にしている、秘めた<思い>を孤独が甦らせてくれるだろう。

69
人を避けることが人嫌いってことじゃない。
みんながみんな、あくせくするのに向いてるわけじゃなし、
熱い人波にもまれて噴きこぼれるのがこわくて、
心を泉の奥深く、しまっとくのが厭とは思わない。
熱い人波のなかじゃ、ひとは悪の餌食となり、
手遅れになるまで、諍いだらけのこの世の真ん中で、
弱い者だらけの場所であがきながら、
惨めに不正行為には不正行為をもって
その骨折りを嘆きつつ奮闘するんだ。

70
人波のなかじゃ、あっという間に、
人生が取り戻せない後悔へと突き進み、
己の<魂>を枯らしながら心血は涙に、そして
彩りのあざやかさは暗い<闇>の色へと変わってしまうこともある。
闇夜を進む者にとって、
人生の行路は望みのない逃走になる。
海では、勇敢なひとは招いてくれる港だけを目指して舵を取る。
けれど、小舟を波間に進め、決して碇を降ろさない、
<永遠>をさまよう流浪人もいるのだ。

71
それなら、矢のようなローヌ河の青い奔流のそばで、あるいは
綺麗だけどへそまがりの赤ん坊の泣き声がすると
キスして「泣き声とんでけ」ってあやしてくれる母親のように
ローヌ河を養っては世話をしているレマン湖の澄み渡った懐深くで、
ひとりでいて、地上での楽しみのために
<大地>を愛するほうがいいんじゃないの?
おしあいへしあいする人波にのまれて、
傷つけあって耐えあうよりも、
こんなふうに、人生過ごすほうがいいんじゃないの?
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