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中原中也「青い瞳」の冬の朝へ

2005年12月17日 23:25

 時間の概念というのは、本当に頼りないものだ。「現在」と人は言うけれど、「現在」は存在しない。「過去」と「未来」に阻まれた瞬間を「現在」と呼んでいる。「現在」と思った瞬間、もう「過去」になっている。
 逆に、時間概念には「現在」しか存在していないのかもしれない。「過去」も「未来」も、実感がない。過ぎ去ってしまった時間は、本当に存在しているのか。未来などはもっと頼りない。
 こんな頼りない時間の概念の中で、長大な永遠の時の流れの中で、人間は、ほんの瞬間に生きて滅びてゆく。80年だろうが30年だろうが、永遠の時間の流れの中では、大きな差はない。
 「過去」はあまりにも遠い。「未来」もあまりにも遠い。瞬間の美しさに眼を向ける者は、殆どいない。みんな自分の生活に追われて一生懸命だ。――最近、作り笑いをするのは疲れる。
 寒い。もう冬。あと一週間で冬至だ。時は、待ってくれない……。


【青い瞳】 中原中也 作(詩集『在りし日の歌』から)

   1 夏の朝
かなしい心に夜が明けた、
  うれしい心に夜が明けた、
いいや、これはどうしたといふのだ?
  さてもかなしい夜の明けだ!

青い瞳は動かなかつた、
  世界はまだみな眠つてゐた、
さうして『その時』は過ぎつつあつた、
  あゝ、遐い遐いい話。

青い瞳は動かなかつた、
  ――いまは動いてゐるかもしれない……
青い瞳は動かなかつた、
  いたいたしくて美しかつた!

私はいまは此処にゐる、黄色い灯影に。
  あれからどうなつたのかしらない……
あゝ、『あの時』はあゝして過ぎつゝあつた!
  碧い、噴き出す蒸気のやうに。

   2 冬の朝
それからそれがどうなつたのか……
それは僕には分からなかつた
とにかく朝霧罩めた飛行場から
機影はもう永遠に去つてゐた。
あとには残酷な砂礫だの、雑草だの
頬を裂るような寒さが残つた。
――こんな残酷な空寞たる朝にも猶
人は人に笑顔を以て対さねばならないとは
なんとも情けないことに思はれるのだつたが
それなのに其処でもまた
笑ひを沢山湛えた者ほど
優越を感じてゐるのであつた。
陽は霧に光り、草葉の霜は解け、
遠くの民家に鶏は鳴いたが、
霧も光も霜も鶏も
みんな人々の心には沁まず、
人々は家に帰つて食卓についた。
      (飛行場に残ったのは僕、
      バットの空箱を蹴ってみる)
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