死者のための祈り

2007年06月02日 14:29

kiiroiohana

【Requiescat】 by Oscar Wilde

Tread lightly, she is near
Under the snow,
Speak gently, she can hear
The daisies grow.

All her bright golden hair
Tarnished with rust,
She that was young and fair
Fallen to dust.

Lily-like, white as snow,
She hardly knew
She was a woman, so
Sweetly she grew.

Coffin-board, heavy stone,
Lie on her breast,
I vex my heart alone,
She is at rest.

Peace, peace, she cannot hear
Lyre or sonnet,
All my life's buried here,
Heap earth upon it.

<語注>
* tread lightly: そっと歩く
* speak gently: 穏やかに言う
* daisies<daisy: 雛菊
* tarnish: 変色する
* rust: 錆び
* hardly: ほとんど~ない
* coffin: 棺
* vex: ~を苛立たせる、悩ませる、掻き乱す
* at rest: 眠って、静止して、永眠して
* peace peace: しっ、しずかに!
* lyre: 竪琴
* sonnet: 14行詩、ソネット
* bury: 埋める
* heap: 積み上げる
* earth: 土

【死者のための祈り】 オスカー・ワイルド作

足の裏 しずかに踏みしめ 行きなさい
 あのひとが そこ 雪のしたに いるのです
喉の奥 やさしい声で お話しなさい
 あのひとは きく ひなぎくの根の 張る音を

あのひとの 耀っていた 金の髪
 今はもう 錆びついて 変色し
精のよう あどけなかった 美しさ
 地へと堕ち 塵へと還った あのひと――

百合のよう 雪のよう あのひとは
 かつて女性であったこと
常ならぬ 甘美さを持ち 生い立っていた
 そのことなど ゆめゆめ わからず

棺の板 重たい石が のしかかる
 あのひとの 胸の その上に
ひとりぼっちの ぼくのこころは 掻き乱れるのに
 あのひとは 黙ったまま 眠り続ける

しっ しずかに あのひとはもう きこえない
 竪琴の 美しい音も 恋歌も
そしてここ うずめるために 積んでくれ
 高く ぼくのいのちのうえ 高く



 知り合いの青年Nくんから「英詩でオススメのがあったら教えてください☆」というリクエストを頂き、自分の書棚を見回しまして、松浦暢先生の『英詩の歓び』(平凡社)から、大好きなオスカー・ワイルドの詩を引っ張り出しました。ワーズワスのdaffodilsと一緒に渡しました。
 私も初めてバイロンの詩を読んだとき、頭が足りないせいもあるのですが、詩に使われている独特の言葉と言い回しに相当苦戦した覚えがあるので、一応オススメした責任もかねて、記事にしてみました。
 松浦先生のこの詩の訳は、正直あんまり好きではありません。とても原文に忠実なのはわかるのですが、詩の雰囲気が損なわれてしまっているようにも思います。
 詩は、どの言語でもそうですが、原文が一番素敵です。リズムやイメージがわきあがってきます。でも、Shallotとしては、日本語にできるかぎりそのイメージを訳してみようと思ってしまう心があるので、訳をしてみました。


<動詞の現在形と過去形>
 2連と3連に、過去形の動詞を用いていますが、ほかは現在形です。
 sheが美しかったことが過去形であり、現在形で表現されているのは彼女が地下に眠ってしまったこと、既に人間の形を止めていないこと、私(語り手)の取り残されてしまった感情(苛立ちと悲しみ)が、現在形で表現されています。

<死者の国の彼女>
 1連で彼女が聞こえる(she can hear)のは雛菊の成長する音、5連で彼女の聞こえないのは(she cannnot hear)のは竪琴や恋歌であることなどから、彼女は現世を去り、地下の国、死者の国へと落ちたこと(fallen to dust)を示唆しています。

<語り手と彼女の対比>
 4連で明らかになっているのが、二人のcoffin boardに隔てられた対立です。
 語り手は生身の人間であり、感情がある人間(vex)。それに対し、彼女は既に死者であり、なにものにも煩わされない感情のない土塊であること(at rest)が、二人の現時点での決定的な対立事項です。

<ギリシア神話?>
 ギリシア神話に、亡くなった妻を追いかけて冥界に下りていく英雄の話があったような記憶あるのですが、それと似ている気もします。最後の2行で、my life's buried hereと、自分の命、人生をここに埋めてしまうつもりであることが語られているので、この語り手は、彼女とともに地下にあることを望んでいます。


ここまで書いて、「こんな歌だったんだ~☆」と実感している自分(笑)他人に勧めるよーな歌ではなかったことに気付き、チョット申し訳なく…。Nくん、スイマセン(^-^;;)
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