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幻滅

2007年10月06日 01:45

傾く樹々

青臭い草原、そして色鮮やかな果樹園。クローバーの黄色い花からは鈴の音が、撓わに実るオレンジからは太陽の風琴が聞こえ、蠅がルリジシャの傍で酔っている。
 ふと、辺りいちめんを煙が覆い――彼女は信じたかった、きっと傍では燃えあがる炎が揺らめいているのだと。

 夕顔の花に身を飾った愛くるしい童が現れ、差し出したのは蒼天に見紛う光を放つ、黄金の手纏。彼女は信じたかった、きっとそれは、遠い煉獄、灼熱の炎で鋳られたものだと。

 黄金の手纏は、彼女の脳裡に火傷を負わせた。

 やがて冷気に曝され、手纏の鍍金が剥がれ落ち、――彼女は知らされたのだった、それが護る価値すら持たない鉛の塊だと。それは鉛の弾丸となって彼女の咽頭にこびりついた。
 ニガヨモギの、錆びついた血の味がした。

 顳顬に激痛が走り、額には脂汗が滲んだ。指先からは徐々に壊疽が進行し、心臓へと達した。
 肺は焼け爛れた。
 途切れた神経が網膜に映し出したのは、――焦げ臭い草原、灰色の果樹園。辺りを取りまく煙の下、溶け出しているのはドライアイスだった。

 熱中症には充分な休息が必要だ。
*手纏:たまき。腕飾り。装身具の腕輪。
*鍍金:めっき。
*顳顬:こめかみ。蟀谷。
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