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臨終

2007年11月28日 02:01

鎌倉晩秋2(1)

【臨終】 中原中也

秋空は鈍色にして
黒馬の瞳のひかり
  水涸れて落つる百合花
  あゝ こころうつろなるかな

神もなくしるべもなくて
窓近く婦の逝きぬ
  白き空盲ひてありて
  白き風冷たくありぬ

窓際に髪を洗へば
その腕の優しくありぬ
  朝の日は澪れてありぬ
  水の音したたりていぬ

町ゝはさやぎてありぬ
子等の声もつれてありぬ
  しかはあれ この魂はいかにとなるか?
  うすらぎて 空となるか?


鈍色(にびいろ)
瞳(ひとみ)
涸(か)れ
百合花(ゆりばな)
婦(をみな)
逝(ゆ)き
盲(めし)ひ
澪(こぼ)れ

中也を読み始めたのは本当に数年前のことなのですが、
そのとき、『山羊の歌』の「臨終」という詩は、
そんなに好きなほうではなく、むしろあんまりピンときませんでした。

しか~し!><!
最近発売された角川ソフィア文庫の『中原中也全詩集』をゲット。
先日鎌倉文学記念館へ行ったことをきっかけに、
中也マイブーム再来(爆)。
改めて、読み始めました☆

「臨終」についてですが、

 秋空は鈍色にして
 黒馬の瞳のひかり

冒頭の二行で、色彩感覚は既にモノトーンを打ち出してます。

 空盲ひてありて
 白き風冷たくありぬ

この二行はドキッとしました……
「太陽」のことを「天の眼」と表現したのは、確かシェリーでしたが、
「空盲ひてありて」では、その「眼」が見えなくなっている、つまり空が掻き曇っていると解釈できます。「白き風」…色がないのですね。
ここから、完了の「ぬ」が続くことで、すべてが終わっていくことが
明らかになるのです……

 その腕の優しくありぬ
  朝の日は澪れてありぬ
  水の音したたりていぬ

 町ゝはさやぎてありぬ
 子等の声もつれてありぬ

 そして、視覚に訴える色彩は朝の日を浴びてカラーになります。
やがて聴覚へと感覚が移っていく。「町々はさやぎて」「子等の声もつれて」と。
 でも、あらゆるものが完了の「ぬ」によって過去のものとなり、「神もなくしるべもなくて」逝った窓近く婦」の魂は、本当に臨終を迎えます。そして「この魂」はどうなるのか?その問いに答えはなく、並立の疑問文が続いて完結となります。

  うすらぎて 空となるか?

ひとつの「魂が薄らいで空となる」という発想から、視線は上の方へと向かうのですが、消えてゆくと同時に空全体が魂とイコールになるのですね…

語り手の持つ空のイメージが、ハンパない。
モノトーンから色彩へ、
現在形→過去形→現在形という時制の変化、
視覚から聴覚へ、そして再び視覚へ、
空間は周囲から上の方へと伸びる。

ひとりの神様を知らない「婦(おみな)」は、窓辺で亡くなるけれど、
そのたましいは空となる。

私もそんなおばあちゃんになりたいなぁ…

 なんて思いながら、帰りの通勤電車で溜息をついてしまった火曜日の夜でした☆
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コメント

  1. たか | URL | -

    先日、立川の中原中也特別展に行ってきました。
    彼の時代に多くの文学人が共立していたことに
    改めて驚き、日本語の美しさとそれを用いた
    短い言葉の使い方の綺麗な響きにまた感銘を
    受けました。
    中でも、臨終には心打たれました。
    段落を下げて
    音のない世界を 色のない未来を 表現できるのは
    中也だからなんだと感動しました。

    私自身も学生の時にブルーハーツの真島さんが着ていたTシャツで興味を覚えたくらいなもので
    威張って中也論をかたれないのですが…。

  2. Shallot Barbarina | URL | -

    Re: タイトルなし

    >たかさん
    返信遅くなりまして失礼いたしました!
    コメント有難う御座います。
    立川でそんな展覧会をしていたのですね!
    東京新聞の記事を見つけました☆↓
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20141030/CK2014103002000115.html
    中也は、私もただの愛好家なので、詳しくは語れませんが、(^^;)
    ことばの力強さと歌謡的なところがまた魅力なんだと思っています。

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