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Gulnareの片恋

2008年04月27日 19:09

弥生の空は6

バイロン作 『海賊』(1814)より

「どうしてこんなことをするのかって? なぜって――ああ! おまえは
奴隷の運命よりひどいものから、あたしの人生を救ってはくれなかったの?
どうしてこんなことをするのかって? 不幸は、女心の優しい働きに対して
おまえを盲にしてしまった![…]
なぜって、おまえの罪にもかかわらず、あたしの心は感動している。
おまえを恐れ――感謝して――可哀相に思って――狂い――愛したのよ。
返事はいいわ、今はおまえの話を繰り返さないでちょうだい。
おまえは別の女を愛してる――だからあたしは無駄に愛していることになる。
[…]
あの憎き暴君をね、コンラッドさん――奴の血を流さなくちゃいけない。
震えてるのね――でもあたしの心は変えられたのよ――
貶められ――踏みつけられ――罵られて――だから復讐しなくちゃいけないわ。
[…]
あたしは愛したことはないわ――奴はあたしを買ったのよ――ちょっと高くね。
それ以来、あたしには奴の買えなかった心がついてくる。
あたしは文句を言わない奴隷だった。奴は言ったわ、
奴の助けがなかったら、あたしがおまえと逃げたって。
それが間違いだって、おまえには解るわね。でも、そんなこと、悔やませてやろう。
そんな言葉は、「侮辱」から出るまことの卵だわ。[…]
あたしはおまえに出会い――愛した――すべての恩があるんだ――だから助けるよ、
たとえ奴隷がどれだけ忠実かってことを示したいだけだとしてもね。[…]
今、あたしはおまえのもの。何が起ころうと覚悟のうえよ。
おまえはあたしを愛していないし、あたしを知らない――最悪なところ以外は。
ああ! この愛と、あの憎しみが始まりなのね――

                        (第3編288-511行より抜粋)


バイロンの『海賊』は、1814年に出版されました。
登場人物は以下の4名+その他大勢
主人公:コンラッド(Conrad)。海賊の首領。バイロニックヒーローの典型例。
コンラッドの妻メドラ(Medora)。優しい、古き時代の貞淑で優美な女性。
コンラッドの敵セイド(Seyd)。イスラム教徒で、トルコのスルタン。時代がうかがえます(笑)
セイドの妾ガルネア(Gulnare)。別名、グルナーレとも。セイドの後宮にいる女奴隷=妾のひとり。

<ストーリー>
地中海に浮かぶ島のひとつに、コンラッドの拠点があります。
トルコのほうで、セイドに取られた陣地があって、それを奪回すべく、海へと漕ぎ出ます。
コンラッドは、仕方なくメドラを屋敷に置いていかなくてはならず、「すぐ帰ってくるよ」の
典型的なシーンを終えます。(爆)

戦闘の最初で、セイドは負け気味になり、宮殿を棄てて逃げます。
棄てられた宮殿には、奴隷の女性たちがたくさん残されています。
火事になりかけたとき、そして海賊たちに蹂躙されそうになったとき、
奴隷=妾だったガルネアを助けたのは、他ならぬコンラッドです。
コンラッドは、しかしながら、彼女を助けたばっかりに、つかまってしまいます。
そして、戦闘はセイドの勝ちとなります。

捕らえられたコンラッドは、鎖で柱に繋がれます。
ガルネアは、もとどおり、セイドの奴隷となります。

さてさて、しかしながら、ガルネアはコンラッドを助けようとするわけです。
そして、このシーン。


実は、以前訳したバイロンの「オーガスタに寄せる歌」で、論文を書いたのですが、
偉い先生から、「thouの訳語が『あなた』というのはおかしい。」と言われました。
その後、ちくま文庫から出ている松岡和子訳の『オセロー』を読んだとき、
注でthouとyouについての言及がされていまして、「なるほど」と納得したのですが、
今回、この『海賊』を訳していて、古い訳とはいえ、岩波文庫の訳は、
この部分のthouがすべて「あなたさま/あなた」になっていました。

納得いきません。結局ヤハリニュアンスの問題なのでは!?と言いたいんですが…
話者と相手(二人称)の上下関係/距離感の問題じゃないの?

で、一応、論文の反省を生かして、訳語をサロメのときとおなじ、
「あんた」にしてみたのですが、どうもしっくりいかず、
結局(小さい頃、母に「おまえ」なんて言葉を使うなと叱咤されたため)
日本語としてあんまり好きではない「おまえ」を使ってみました。
だって、話者が女性で「きみ」は違和感が否めない…

何か案があったら、次の論文の訳語の参考にしたいので、
どうか皆様、御意見頂けると有難いのですが…(切実)
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