スポンサーサイト

--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

断片(冬の夜)

2009年02月08日 22:06

砧公園の梅09の1
彼は寂れた駅のプラットフォームにいた。真っ暗な、むこうの街頭の明滅する光だけが頼りの町の、寂れた駅のプラットフォームに。
夜半はとっくに過ぎていた。
あのころ、自分の未来をはっきりと見ていたわけではない。けれど、いずれは連中との関係も薄れていき、ひとりぽっちで、この世に立っていかなくてはならないのだろうと思っていた。
今、彼はひとりで駅のプラットフォームに立っている。
年末の忙しなく冷たい空気が、指先を凍えさせる。どこからか、暖かな夕餉の匂いが漂ってくる。
帰省しそびれた中学生たちやら、家族連れやらが、彼の背後でどうでもいいことをぐちゃぐちゃと喋り続けている。
「俺は、」と思った。「あれから何をしてきたんだろう?」
少なくとも15年は経っているはずなのに、その間の記憶というものがもうまるでない。いくつもの恋、いくつもの少女たちの面影、そんなものがあったような気がするのに、もうまるで消滅してしまっていて、残っているものといえば、痺れ切って疲れた額に浮いている痛々しい皺ばっかりだ。ゴワゴワした面の皮が剥がれ落ちそうになるのを慌てて押さえつける。毎日毎日、接着剤でビッタリ貼り付けたような外面が、ひどくきしんでいる。この面の皮に、連中はどんな感情を抱くのだろうか? 苛立ちも怒りも、何もかも胸の奥に押し込めている。たまに、吐き出しそうになる。
「誰にも、」と彼は思った。「誰にも悟られてはいけない。」このゴワついた、乾涸びた蜜柑の皮のような面の下で、地獄の炎に焼き付けられて爛れてしまった頬を、誰にも悟られてはいけないのだ。


年末の、もうみんな仕事納めしてしまって、休暇中であろうころ、自分だけ仕事をしているような気分になって、駅のプラットフォームで書き付けたメモより。

いやぁ~、そんなことはないってば。
焼き鳥屋のおばちゃんは、あたしよりもツワモノだったもん。

ひとりよがりな気持ちだったとはいえ、ちょっとリルケの『マルテ』っぽいメモが書けたのでよしとしましょ☆
関連記事


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://sousleau.blog5.fc2.com/tb.php/527-2a592653
    この記事へのトラックバック


    Articles


    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。