スポンサーサイト

--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

大洪水のあと

2004年07月22日 01:28

 大洪水の観念が据えなおされるとすぐに、
 揺れる岩黄耆と釣鐘草の中で、一匹の野うさぎが立ち止まり、蜘蛛の巣の向こう側の虹に祈りを捧げた。
 あぁ 潜んでいた宝石たち、――夙に見抜いていた花々。
 汚れた大通りには屋台が建ち並び、版画面のように海は高く高く重ねられて、小舟は数隻引かれて行った。
 血が流れたんだ、青髭の家で、――屠殺場で、――円形闘技場で。そこでは神の印が窓を蒼褪めさせた。血とミルクが流れた。
 ビーバーが家を築いた。小さいカフェで『マザグラン』が湯気を立てていた。
 まだびっしょり濡れているガラス造りの屋敷では、喪服の子供たちが目を見張るようなイコンを見詰めていた。
 一つの扉がパタンと閉じて、小さな村の広場で、一人の子供が両腕を振り回すと、輝きに満ちた嵐の中で、それはあちらこちらで鐘楼の風見鶏たちに理解された。
 ***夫人がアルプス山脈の中に、一台のピアノを据えつけた。ミサと聖体拝領の儀式が、大聖堂の幾百万の祭壇で執り行われた。
 商隊が出発した。そして『スプレンディッド=ホテル』が氷塊と混沌と極地の夜のうちに建設された。
 それ以来、月はジャッカルが麝香草の砂漠で鳴いているのを、――そして果樹園で蹄をつけた牧歌が唸っているのを聞いた。それから菫色の樹海で 樹々が芽吹き始め、やがてユーかリスが僕に春だと告げた。
 湧き上がれ、水よ、――うたかたよ、橋の上を、そして樹々の上を転がっていけ。――黒幕とオルガン、――閃光と雷鳴、――湧き上がって転がるんだ。――水と哀しみよ、『大洪水』を湧き立たせて満たすがいい。
 それというのも、大洪水が晴れ上がってしまってから、――あぁ 埋れた宝石たち、そして開き切ってしまった花々よ! ――物憂いことだ! つまり女王、大地の壷の燠に火を灯す魔女は、決して僕らに彼女の識っていること、僕らの識らないことを話したがらないだろう。
<Apres le delugeについて>
 詩編Illuminationsに含まれている作品。しかも、この詩が冒頭である。
 冒頭を飾っている作品だけに、Illumination全体の作品を総括しているような趣がある。全作品を読み終わってみると、「あぁ、『Apres le deluge』で書かれていたことって、こういうことだったのかも~」なんて妙に納得してしまったところも多々あった。
 『マザグラン』というのは、原文をそのままカタカナで訳してしまったけれど、これは『耐熱グラスで飲むコーヒー』という説明が辞書クラウンには載っていた。フランス北部でよく見かける飲み物らしい。Rimbaudの故郷はそちらなので、きっとその辺りでは多く見られるのだろう。
 『スプレンディッド=ホテル』も、ホテルの名称としてかかれていたから、そのままカタカナにしてしまったけれど、『Splendide』は「光り輝く・壮麗な」という意味。『旅館光輝』でも良いのだけど、極地に建設されるにしては、なんか温泉宿みたいでどうかと思いまして、そのままカタカナにしてしまいました…。ちなみに、私が、素晴らしい日本語に感服しまくっている、小林秀雄氏の訳では『壮麗旅館』になってます。
関連記事


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://sousleau.blog5.fc2.com/tb.php/56-02321841
    この記事へのトラックバック


    Articles


    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。