詩神の棲む山に捧ぐ賛歌

2009年05月07日 12:07

パルナッソス山(Wikiより)

【チャイルドハロルドの巡礼】第1編より、61連-64連
    バイロン作  Shallot B.訳
61
ときおり僕はおまえを夢に見てきたのだ! おまえの誉高い名を
知らない者は、人間のもっとも聖なる教えを知らないのだ。
そして、僕はおまえを目にする。ああ、はずかしくおもうのだ、
僕がか細い声で讃えなければならないことを。
僕がおまえの崇拝者たちについて物語るとき、
僕はうち震え、ただ膝を折ることしかできない。
声を上げることも、虚しく挑戦的に飛び上がることもせず、
やっとおまえを見ているのだという思うと、静かな喜びを感じ、
ただおまえの曇った天蓋の下で、見つめているばかりなのだ。

62
運命により遠い故郷に閉ざされた偉大なる詩人たちよりも
ここにいることが出来て幸せな僕が、
ほかのひとたちが知らずに夢中になっている
この神聖視される光景を、動じることなく見つめることができようか?
ここにはもはやアポロが洞窟には訪れず、
そして詩神の御座であるおまえは、いまやその陵墓となっているとしても、
まだこの場を漂う優しい精霊たちもあり、
風に溜め息を混じらせ、洞穴では沈黙を守り、
おまえの調べのような波のうえをそっときらめき流れゆく。

63
おまえについてはまたこんど。――歌の途中でさえ
ここに敬意を払い、脇へ逸れてしまい、
この土地のことや、息子たちのことや、スペインの乙女たち、
スペインの運命や、たいせつな自由に生まれついた心をなおざりにしてしまった。
たぶん涙ながらに、おまえを讃えてしまったのだ。
さて主題に戻ろう。――しかし、おまえの聖なる場所から、
切れ端を、記念の品を持って行かせてほしいのだ。
ダフネーの不滅の樹の葉を一枚、譲ってくれ。
そして、おまえの信者の望みを口先だけのものだと思わせないでくれ。

64
美しい山よ、ギリシアが若かったころ、
おまえの広大な麓のまわりには、愛欲の熱く火照る膝の上で育まれた
アンダルシアの乙女たちがもっとも輝いていた歌い手があった。
デルポイの巫女たちが、人間の熱情以上に激しくお告げの賛歌を歌ったとき、
デルポイの神殿でさえ、アンダルシアの乙女たちより
愛の歌を鼓舞するのにふさわしい人々を
見つめてはいなかった。
ああ! その原野を<栄光>が逃げ去っても、
ギリシアが授けたような平和な木陰を、彼女たちにも授けてくれたなら。


62連の5-9行は、原文の擬人法の技巧がすごすぎて、日本語が全然追いつかない…><;
下の原文を是非是非ご覧頂きたいです。



LXI.

Oft have I dreamed of thee! whose glorious name
Who knows not, knows not man’s divinest lore:
And now I view thee, ’tis, alas, with shame
That I in feeblest accents must adore.
When I recount thy worshippers of yore
I tremble, and can only bend the knee;
Nor raise my voice, nor vainly dare to soar,
But gaze beneath thy cloudy canopy
In silent joy to think at last I look on thee!

divine:神にささげた;宗教的な;神聖な/天の, 天上の
lore:(伝承的)知識, 言い伝え;(一般的に)学問, 知識, 博学、((古))教育;教え, 教訓.
feeble:〈音・光などが〉弱い, かすかな
accent:音調, 調子(tone)
adore:(自)礼拝する
recount:…を詳しく話す, 詳述する, 物語る.
soar:〈鳥・飛行機などが〉空高く舞い上がる, 昇る((up)).、〈希望・意気などが〉高まる, 〈声・音が〉響き渡る.
canopy:((文))空

LXII.

Happier in this than mightiest bards have been,
Whose fate to distant homes confined their lot,
Shall I unmoved behold the hallowed scene,
Which others rave of, though they know it not?
Though here no more Apollo haunts his grot,
And thou, the Muses’ seat, art now their grave,
Some gentle spirit still pervades the spot,
Sighs in the gale, keeps silence in the cave,
And glides with glassy foot o’er yon melodious wave.

bard:詩人
confine:((時に~ -self))〈人・発言・努力などを〉(…の範囲内に)限る, 制限する((to ...))
lot:(定められた)運, 運命, 宿命
unmoved:心を動かされない, 平静な, 冷静な.
hallow:…を神聖にする, 清める;…を神聖な目的にささげる;…を神[大義]にささげる. …を神聖なものとしてあがめる;…を聖なるものとみなす;…を崇敬する.
rave:(…について)熱弁をふるう, (…を)激賞する, べたほめする, (…に)夢中になる((about, of, over ...))
grot:ほら穴, 洞窟(どうくつ).
pervade:(他)〈思想・宣伝などが〉…全体に普及する, 広がる;〈におい・感情・特性などが〉〈場所に〉しみわたる, 充満する
gale:強い風;《気象》強風
glassy:(透明さ・なめらかさなどが)ガラス[鏡]のような;〈水面が〉鏡のように穏やかな.
glide:すべる, すべるように動く;〈川・水が〉音もなく流れる;〈船が〉滑走する;〈航空機・鳥などが〉滑空する.《楽》音を切らずに続けて奏する[歌う]. 時・季節などが〉しだいに移り変わる;いつの間にか過ぎていく((along, away, by));〈人などが〉音もなく[そっと]通る((along, by));(…に;…から)音もなく[ひそかに]はいる[出る]((into ...;out of, from ...))

LXIII.

Of thee hereafter. - Even amidst my strain
I turned aside to pay my homage here;
Forgot the land, the sons, the maids of Spain;
Her fate, to every free-born bosom dear;
And hailed thee, not perchance without a tear.
Now to my theme - but from thy holy haunt
Let me some remnant, some memorial bear;
Yield me one leaf of Daphne’s deathless plant,
Nor let thy votary’s hope be deemed an idle vaunt.

bosom:(思考・心情・情緒の中枢としての)胸(の内), 胸中;情, 心, 思い, 愛情;欲望
haunt:(特定の人が)よく行く所, 行きつけの場所, たまり場。(動物の)生息地, 繁殖地;(植物の生育に)好適な環境.
remnant:断片, 残りくず, はぎれ
bear:[名]([副])] ((文))〈人・乗り物などが〉…を運ぶ, 持って行く(▼carryが一般的);〈風・海が〉…を運ぶ;〈人を〉連れて行く, 案内する(▼take, guideが一般的)
Daphne:ギリシア神話の登場する河の神の娘である。ギリシア語で月桂樹の意味を持つ。ある日アポローンは弓矢で遊んでいたエロースを揶揄する。そのことで激怒したエロースは相手に恋する金の矢をアポローンに、逆に相手を疎む鉛の矢を近くで川遊びをしていたダプネーにそれぞれ放った。金の矢で射られたアポローンはダプネーを求愛し続ける一方、鉛の矢を射られたダプネーはアポローンを頑なに拒絶した。追うアポローンと逃げるダプ ネー、ついにアポローンはペーネイオス河畔までダプネーを追いつめたが、ダプネーはアポローンの求愛から逃れるために、父である河の神に自らの身を変える 事を強く望んだ。その望みを聞き届けた父は、ダプネーの体を月桂樹に変えた。あと一歩で手が届くところで月桂樹に変えられてしまったダプネーの姿を見てアポローンはひどく悲しんだ。そしてアポローンは、その愛の永遠の証として月桂樹の枝から月桂冠を作り、永遠に身に着けている。
deathless:死ぬことのない, 不死の, 不滅の;やむことのない, 永久の.
votary:(特定宗教・神などの)信仰者, 信奉者.
vaunt:((文))自慢, 大言壮語.

LXIV.

But ne’er didst thou, fair mount, when Greece was young,
See round thy giant base a brighter choir;
Nor e’er did Delphi, when her priestess sung
The Pythian hymn with more than mortal fire,
Behold a train more fitting to inspire
The song of love than Andalusia’s maids,
Nurst in the glowing lap of soft desire:
Ah! that to these were given such peaceful shades
As Greece can still bestow, though Glory fly her glades.

Nurst:<nurse。〈赤ん坊に〉乳をやる;…をだいじに育てる, つちかう, はぐくむ, 育成する;〈感情を〉はぐくむ
lap:腰からひざがしらまでの部分. (山あいの)くぼち, 山ふところ
Pythian:(古代ギリシャの)Delphiの. (Delphiでの)Apolloの神託の.
train:人・車・動物の)列, 行列
glade:((文))林間の空地.
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