スポンサーサイト

--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

壮絶! 闘牛としての雄牛

2009年05月09日 15:32

crimson of blood

【チャイルドハロルドの巡礼】第1編より、68連-79連
    バイロン作  Shallot B.訳

68
恵みの休息の日が、安息日がやってくる。
このキリスト教の岸辺には何を捧げるのだろうか?
見ろ! 荘厳な祝宴が捧げられる。
聞け! 森の王者のうなり声が聞こえなかったか?
槍をへし折り、その角の下に投げ出された
人間と馬の血の匂いをかぎまわる。
人だかりの闘技場は、更なる求めに叫び、沸き返る。
狂った群集があらたに引き裂かれたはらわたをめぐり叫ぶのだ、
女の目も怯むことなく、嘆くふりさえしない。

(69-70省略)

71
馬鹿騒ぎはだれもがするもの。しかし、おまえのようなものはない、
黝い海のうえに立ち昇る街、美しいカディスよ!
朝の祈りの鐘が9時を告げるやいなや、
おまえの聖なる崇拝者たちは十字架をつま繰り祈りを唱える。
祈る人と同じ数の罪を赦してほしいと
(僕がここで唯一の処女じゃないかと思っている)
聖母マリアはせがまれる。
それから連中は込み合った闘技場へと向かうのだ。
若者も、老人も、身分の貴賎を問わず、いっせいに同じ娯楽につきあうのだ。

72
闘技場は開かれ、広場は片付けられ、
何千人もの人々が周りを囲み席に着く。
最初の喇叭の音が聞かれるずっと前から
空席はなく、遅れてくれば席がない。
貴族、公爵、それからとくに貴婦人たちがつめかけ、
不埒な瞳で色目を使って、
かつての傷を癒したいとおもうのだ。
狂気の詩人たちの言うように、彼女たちの冷たい軽蔑で、
<愛>の悲しい矢によって、誰も死んだりはしない。

73
やかましい話し声が止む。豪奢な馬には、
乳白色の兜、黄金の拍車、そして軽く整えられた槍を身につけ、
4人の騎馬武者が大胆な行為の準備を整え、
深くお辞儀をして闘技場へと進むのだ。
肩掛けは豊かで、馬は巧みに跳ね上がる。
もしも今日の危険な試合に勝って輝ければ、
群衆の大きな歓声と、貴婦人たちの愛らしい一瞥と、
勇敢な行為に対する最上の賞賛をあたえられ、
さらに王や諸侯がこれまで獲得したすべてで、労苦に報いてくれるのだ。

74
高価で華麗な衣装と豪奢なマントに身をつつみ、
馬にも乗らない、足の速いの闘牛士が、
中央に立ち、牛の群の王への臨戦態勢をとる。
しかしそのまえに、慎重な足取りでそこらじゅうを歩いて確かめる。
彼の敏捷さを妨げるなにかが隠れているといけないから。
彼の武器は投槍で、離れて戦うけれど、
味方になる馬がなければ、人はなにもなしとげられない。
ああ! ひとのかわりにあまりに多くの痛みに耐え、血を流す宿命を負わせるとは。

75
3度、喇叭の音が響く。見ろ! 合図の旗が降り、
檻が開き、黙ったままの<期待>が
人垣のまわりで大口をあけているのだ。
力強い動物が突然飛び跳ね、
荒々しく睨みつけ、足を踏み鳴らし、
砂を蹴散らすのだが、まっしぐらに敵に突進しはしない。
そこ、ここに、最初の攻撃に対し、牛は威嚇する角を突き出し、
前後に怒れる尾を大きく振る。
赤く見開かれた眼がギラリと光る。

76
突如、牛が止まる。眼は動かない。去れ、
立ち去れ、無用心な小僧! 槍を構えろ。
さあ、おまえの滅びるときだ、
でなきゃ、俺の暴走を止める技術を見せるんだ。
タイミングよく尻を動かし、素早い軍馬が身をかわす。
雄牛は泡を吹くが、無傷のままではいられない。
脇腹からは、鮮やかな深紅の流れが溢れ出し、
七転八倒し、苦痛に狂い転げまわる。
矢が降り注ぎ、槍が降り、牛の雄叫びがその悲嘆を物語る。

77
ふたたび牛は突き進む、矢も槍も役立たず、
苦しむ馬が荒々しく飛び跳ねても無駄だ。
人間と、人間の報復の一撃が放たれても、
武器は甲斐なく、力も虚しい。
豪奢な馬も引き裂かれて八つ裂きの死体だ。
別の馬は、身も凍るような光景だ! 引き裂かれて現れている、
血まみれの胸から命の鼓動を打つ心臓が見えている。
死に打ちのめされても、その弱々しい体を持ち上げ、
もがきながら、すべてに抗い、無傷の主人を支えている。

78
裏をかかれ、血を流し、息を切らし、最期まで憤怒の状態で、
窮境で、満身創痍、雄牛は中央に立っている。
傷つき、矢が、折れた槍が突き刺さり、
残虐な闘いの、無力な敵の中で、立っている。
そして今、牛の周りで闘牛士はふざけ、
赤いマントを翻し、剣を構える。
いまふたたび渾身の轟く一撃に突進する。
虚しい憤激! マントは巧みな手を離れ、
その獰猛な眼を包む。終わった。牛は砂塵に帰するのだ。

79
その大きな首と脊柱が合わさる部分に、
致命傷を与える刀が突き刺さっている。
牛は止まり、少し歩み、崩れてはいけないと思う。
勝利の叫びのただなかで、ゆっくりと牛は崩れ落ちる。
うめきもなく、あがきもせずに死んでゆく。
飾り立てられた車が高く現れる。
死骸は積まれる。野卑な眼には心地よい。
手綱に逆らう4頭の馬が逆らう間もなくすぐに
黒い雄牛を引いていく、やがてすぐに見えなくなるのだ。


ちょっと長くなりましたが、『ハロルド』第1編の醍醐味である闘牛のシーンを訳し終わりました。
実況中継のような臨場感を出すために、演劇の手法である現在形を駆使しているのがわかります。
傷だらけの牛の描写のシーンでは、言葉と言葉のつながりが、まるで牛や馬の傷だらけの体と同じように、
文自体がかなりボロボロに切り刻まれていました。
ここでは、戦場のシーンのような擬人法が殆どつかわれず、つまり抽象概念が少ないのでしょう、
ひたすら闘牛士と牡牛、そして馬たちの動きが見て取れます。

第4編の、コロセウムの場面と比較されることが多いようですが、バイロンの筆致のすごさが体験できるワンシーンでした。
関連記事


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://sousleau.blog5.fc2.com/tb.php/565-e485daa4
    この記事へのトラックバック


    Articles


    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。