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エルギン卿への痛罵

2009年08月15日 02:39

Elgin Marbles 見上げて


【チャイルドハロルドの巡礼】第2編より、11連-15連
    バイロン作  Shallot B.訳

11
しかし、高みに、女神アテナがいつまでもとどまり、
その古(いにしえ)の支配の最後の遺跡を棄てたがらなかった場所、
その神殿を略奪したすべての者のうち、
最近の、最悪の、愚鈍な強奪者といえば、誰だったっけ?
恥を知れ、スコットランドよ! そいつがおまえの息子だなんて!
イングランドよ! 俺は奴がおまえの子でなくって嬉しいぜ。
おまえの自由民は、かつて自由だったものに思いやりを示すべきだのに、
奴らは悲しみに暮れる社(やしろ)を次々に冒涜し、
いつまでもためらっている海を越えて、これらの祭壇を運んでゆく。

12
けれどやっぱりいちばんは、現代のスコットランド人のあさましいご自慢さ。
ゴート族、トルコ人、そして<時>が見のがしたものを毟(むし)り取るとはね。
女神アテナの哀れな遺跡を移動させる策を練って、
頭で考え、手筈を整えるような奴は、
そいつの故郷の岸辺の岩と、同じくらいに冷たくて、
知性は荒み、心は頑なだ。
アテナの息子たちは弱すぎて聖なる神殿を護れない。
母様の痛みをほんの少し感じたけれど、
それまでは圧制者の軛の重圧感を感じたこともなかったのさ。

13
何と! 女神アテナの涙にイギリスが喜んだなどと、
イギリス人の口から言っていいのか?
おまえの名で、奴隷たちはアテネの胸を痛めつけたが、
恥を感じているヨーロッパの耳にその略奪行為を告げてはいけない。
<海の女王>、自由の国イギリスは、血を流している土地から略奪した
最後の哀れな略奪品を運んでゆく。
そうさ、<女王>はその寛大な援助の手でその名を誉れ高きものとしたのに、
嫉み深い<歳月>が差し控え、暴君たちがそのままにしたあれらの遺物を、
彼女は鳥女怪物の爪で引き裂いたのだ。

14
女神アテナよ! 行く先々で厳ついゴートの王アラリックと
<大破壊>を脅かした、おまえの盾「イージス」は何処へいった?
あの怖ろしい日に、酷い姿で光の下へと冥界から突如として出現した
その亡霊を地獄はとどめておけなかった
英雄ペレウスの息子・アキレウスは何処へいったのだ!
何と! 今一度、冥界の王プルートは、将軍アキレウスに命を与え、
その餌食から第2の強盗を脅すことはできないものか?
いたずらにアキレウスは冥界の憎しみの川ステュクスの岸辺をほっつき歩き、
前は心から護りたかった城壁を、今や護ることもなかったのだ。

15
麗しのギリシアよ! おまえを見詰め、
愛した者の亡骸の傍にいる<恋人>のように感じない心は冷酷だ。
決して元に戻らない遺跡を護ることこそ、最善の義務であったのに、
イギリス人の手で、おまえの城壁が壊され、おまえの崩れさる社(やしろ)が
撤去されるのを見て、泣き濡れない眼は愚鈍だ。
奴らの島から奴らが乗り出し、
今再びおまえの不幸な胸が突き刺し、
忌わしい北国へとおまえの嫌がる神々を誘拐したその時間よ、
呪われろ!


かの有名なエルギン卿への憤懣が痛烈な罵倒となって表現されている5連です。

11-12連→スコットランド人はすべてエルギン卿を指します。このひとは、かの有名な「エルギン・マーブルズ」をギリシアからイギリスに持ち込んだ人です。バイロンは、このひとの行為に酷く憤慨し、痛烈に罵倒しているのがこの5連になります。

13連→イギリスが<海の女王>と<ハルピュイアイ(=女面鳥怪物)>の二者に喩えられています。もともとギリシアに寛大な(?)援助をしていたものが、エルギン卿のことではハルピュイアイとなってその遺跡を冒涜している様子が、如実に描かれています。ハルピュイアイの絵は、有名なダンテ『神曲』に付したドレの版画があり(下図)、その姿は醜怪なものですが、画像を検索していたらこんなのもあり、こりゃークノップフとかにも通じるカゲキな感じだわぁ~と思いつつ、…。豊満な肉体が悪魔を呼びそうですね(爆)。いいと思います(笑)。あると思います!

14連→田吹先生の本(田吹長彦注解『チャイルド・ハロルドの巡礼 第二編注解』九州大学出版会、1998)によると、ゴートの王アラリックが395年にアテネを攻撃したとき、盾「イージス」を携えた女神アテナと完全武装したアキレウスが霊となって冥界より蘇り、城壁の上に現れたため、アラリックはパルテノン神殿に手をつけなかったらしいです(78頁参照)。アキレウスも、アテナも、エルギン卿には手も足も出なかったのでしょうか…。残念です。

15連→2行目o'erの使い方が巧みですね。亡骸が横たわり、その死体を上から眺めている恋人の姿が眼に浮かびます。覆いかぶさるように、顔を見詰めている、そんな姿が描けます。



XI.

But who, of all the plunderers of yon Fane
On high― where Pallas linger’d, loth to flee
The latest relic of her ancient reign –
The last, the worst, dull spoiler, who was he?
Blush, Caledonia! such thy son could be!
England! I joy no child he was of thine:
Thy free-born men should spare what once was free;
Yet they could violate each saddening shrine,
And bear these altars o’er the long-reluctant brine.

Fane:=temple.
loth:((叙述))((形式))嫌いで;(…するのが)気が進まない
Pallas:パラス:女神Athena
relic:(歴史的な)遺物, 遺構, 遺跡、遺風, なごり
latest:最後の
spoiler:強奪[略奪]者.
spare:〈人などを〉容赦する, の命を助ける, に危害を加えないでおく, 思いやりを示す
saddening:悲しくなる;憂うつになる
bear:((文))〈人・乗り物などが〉…を運ぶ, 持って行く
altars:祭壇, 供物台
brine:海, 大洋;海水


XII.

But most the modern Pict’s ignoble boast,
To rive what Goth, and Turk, and Time hath spared:
Cold as the crags upon his native coast,
His mind as barren and his heart as hard,
Is he whose head conceived, whose hand prepared,
Aught to displace Athena’s poor remains:
Her Sons too weak the sacred shrine to guard,
Yet felt some portion of their Mother’s pains,
And never knew, till then, the weight of Despot’s chains.

ignoble:〈意図・性格・行為などが〉卑劣な, あさましい
boast:自慢(の種), 誇り(とする物);ほら
rive:…をもぎ[むしり, ちぎり]取る;…を割る, 引き裂く
Despot:専制[独裁]君主;暴君, 圧制者

XIII.

What! shall it e’er be said by British tongue
Albion was happy in Athena’s tears?
Though in thy name the slaves her bosom wrung,
Tell not the deed to blushing Europe’s ears;
The Ocean Queen, the free Britannia, bears
The last poor plunder from a bleeding land:
Yes, she, whose generous aid her name endears,
Tore down those remnants with a harpy’s hand,
Which envious Eld forbore, and tyrants left to stand.

wrung:((文))…に苦痛を与える, …を苦しめる
blushing:…を)恥ずかしく思う((at, for ...)
endear:〈親切・微笑・ユーモアなどが〉〈A(人)をB(人)に〉いとしいと思わせる, 慕わせる, 愛されるようにする
remnant:残部, 残物;残存者((of ...))、遺物
Eld:往時, いにしえ、老年
forbore:…を慎む, 差し控える, 思いとどまる, (じっと)こらえる((to do, doing))
harpy:↓
ハルピュイアイの、自殺者の森

XIV.

Where was thine AEgis, Pallas, that appalled
Stern Alaric and Havoc on their way?
Where Peleus’ son whom Hell in vain enthralled,
His shade from Hades upon that dread day
Bursting to light in terrible array!
What! could not Pluto spare the Chief once more,
To scare a second robber from his prey?
Idly he wandered on the Stygian shore,
Nor now preserved the walls he loved to shield before.

AEgis:アイギス:中央にGorgonの頭が模様としてついている盾
appall:〈人に〉ひどくショックを与える, ぞっとさせる
Alaric:西ゴート族の王アラリック(370?-410)。
Havoc:(天災・暴動などによる)大破壊, 荒廃, 大混乱, 大騒ぎ
Peleus:ギリシア神話の英雄。海の女神テティスの夫で、アキレウスの父である。アイギーナ島の王アイアコスの子で、大アイアースの父テラモーンの兄弟に当たる。アルゴナウタイの一人でもある。
Peleus’ son:アキレウスのこと。アキレウスとは、ギリシア神話に登場する英雄プティーア王ペーレウス(ペレウス)と海の女神テティスとの間に生まれた。スキューロス島の王リュコメーデースの娘デーイダメイアとの間にネオプトレモスをもうけた。トロイア(イリオス)戦争にはミュルミドーン人を率いて50隻の船と共に参加した。足が速く、『イーリアス』では「駿足のアキレウス」と形容される。
enthrall:〈人を〉(…で)魅了する, 夢中にさせる, 大いに楽しませる((by, with ...));〈人の〉心を奪う. ((通例比喩))…をとりこにする, 奴隷にする, 束縛する.
array:(戦闘態勢への軍隊の)配置, 配列, 隊形、((文))衣装, 美装
preserve:〈遺跡などを〉保存する

XV.

Cold is the heart, fair Greece! that looks on Thee,
Nor feels as Lovers o’er the dust they loved;
Dull is the eye that will not weep to see
Thy walls defaced, thy mouldering shrines removed
By British hands, which it had best behoved
To guard those relics ne’er to be restored:-
Curst be the hour when from their isle they roved,
And once again thy hapless bosom gored,
And snatched thy shrinking Gods to Northern climes abhorred!

behove:[it behooves A to do]((形式)〈A(人)は…する〉義務[必要]がある;〈…するのがAに〉ふさわしい
moulder:朽ちる, くずれる, 崩壊する
relic:(歴史的な)遺物, 遺構, 遺跡
restore:〈美術品・建物などを〉修復[復元]する
rove:うろつく, さまよう, 流浪[放浪]する
hapless:((限定))不幸な, 不運な
gore:…を(とがった道具で)突く, 突き通す.
snatch:〈物を〉(人・場所から)ひったくる, さっと取る
abhor:(道義的理由で)…をひどくきらう, 忌みきらう, 毛嫌いする;…を憎悪する
shrink:〈人が〉(…を)避ける, (…に)ひるむ, (…から)あとずさりする, しりごみする
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