ハロルド、地中海へ!

2009年08月29日 17:28

フリゲート艦の絵

【チャイルドハロルドの巡礼】第2編より、16連-20連
    バイロン作  Shallot B.訳

16
はて、ハロルドはどこだ? さて僕は、
翳のある流浪人を海へと駆り立てるのを忘れるのだろうか?
彼はほとんど、ひとが悔やむものには何も、気にかけることがなかった。
冷淡な異邦人が他の土地へと過ぎ去るまえに、
偽りの悲しみを叫べる愛人もなく、
別れの手を差し出してくれる友人もなかった。
色香も虜にできなかった彼の心は無情なのだ。
しかし、ハロルドは昔のように情を移すこともないので、
溜め息もなく、<戦争>と<犯罪>の地を去ったのだ。

17
僕は思う、暗い青藍の海を出帆した彼は、
幾度もとても麗しい光景を見た、と。
爽やかなそよ風がしかるべきように順風なので、
白帆は風を受けて、壮麗なフリゲート艦は堅固で美しく――
帆柱、尖塔、そして岸辺が右手へと退いて、
燦然とした大海原が舳先へと広がり、
飛び立つ瞬間の野の白鳥たちのように、護衛艦隊が展開する。
もっとものろい船も今は立派に見えるよ――
それぞれの船の船首には飛沫が飛び散り、波はとても楽しげに渦を巻く。

18
そして、おぉ、船内の小さな好戦的世界!
しっかり固定された大砲、網の張られた天蓋、
しゃがれた声の命令、ひっきりなしに鳴り続ける騒音。
一声で、船員は高く檣楼に位置につくとき、
聞け、掌帆長の呼び声を、喝采の叫びを!
水夫の手を用具がすり抜け、
訓練生は、傍に立って、
いいことや悪いことが起こったときに、甲高い号笛を吹き鳴らし、
器用な小僧が従順な水夫に巧く切り抜けさせてやる。

19
汚れのないのは鏡のような甲板で、染みひとつなく、
見張り番の、生真面目な大尉が歩いている。
孤独な指揮官のための、あの厳粛な場所を見ろ。
彼は黙ったまま、みんなに恐れられて、堂々と歩く。
――部下の者どもとは、滅多に口をきかない。
もしその厳正な緊張を維持するつもりなら。
そしてそれがいったん破られれば、征服と名誉を挫くことになる。
しかしどんなに厳しいものでも、彼らの強さを与える掟から、
イギリス人が滅多にそれることはない。

20
吹け! すみやかに吹け、船を押し進める強い風よ!
満ち満ちた太陽が、その細くなってゆく光の筋を引っ込めるまで。
それから、のろまな船がぐずぐずしているので、
三角旗を掲げた旗艦はその帆を緩めなきゃならない。
あぁ! 不満と苦痛の種だ、気の抜けたダルぃ遅れだ、
愚鈍な船のために絶好の風を逃すなんて!
夜明けまでに、どれくらい進めただろう、
こうしてヤル気な海のうえでもの悲しくとどまりながら、
こんなふうに駄船のためにとどまるために、はためく帆を降ろすなんて!


相変わらず、出帆のシーンは巧いっスね~…。(17連)見えたものを順番に並べることで、視点が拡大してますね~
18-19連は、船の上の男たちの世界。英文だと18連がなかなかスリリング。どんどん場面が緊張感に包まれていき、朗読だったらどんどんテンションがあがってきて、叫び声になりそうな感じがします。19連は難しい~…。
19連まではきちっとした口調で訳を進めたんですが…。
20連で、なんかバイロンがうちの夫みたいなことを…(笑)。何回も「のろまな」を表す言葉が出てくるし、遅い船のことをbarkとかhulkとか言って馬鹿にして…(・o・;)
よっぽどイライラしたんでしょーねー…(←ナゼか手に取るようにバイロンの様子がわかる/爆)



XVI.

But where is Harold? shall I then forget
To urge the gloomy Wanderer o’er the wave?
Little recked he of all that Men regret;
No loved-one now in feigned lament could rave;
No friend the parting hand extended gave,
Ere the cold Stranger passed to other climes:
Hard is his heart whom charms may not enslave;
But Harold felt not as in other times,
And left without a sigh the land of War and Crimes.

shall:((主に英))((一人称の疑問文))…するでしょうか
urge:〈人・動物などを〉せきたてる, かりたてる, …を急がせる, 早める((on, onward, forward))
reck:((文))((疑問文・否定文))(…を)気にする((of ...))
all that Men regret: 先行詞→all、関係代名詞→that、節内S=Men、V=regret。
feign:((形式))…を装う, (…の)ふりをする((to do, that節))
rave:うわごとを言う;(…のことで)取りとめのないことを言う((about, of, for ...));(人に)(狂ったように)どなり[わめき]散らす((at, against ...));〈風・海・あらしなどが〉荒れ狂う, 怒号する
lament:哀歌, 挽歌. (…に対する)悲しみ, 嘆き((for ...)).
charm:((~s))(特に女性の)容色, 色香;愛きょう
feel:同情する, 思いやる
the land of War and Crimes:スペインのこと。

XVII.

He that has sailed upon the dark blue sea,
Has viewed at times, I ween, a full fair sight;
When the fresh breeze is fair as breeze may be,
The white sails set, the gallant Frigate tight―
Masts, spires, and strand retiring to the right,
The glorious Main expanding o’er the bow,
The convoy spread like wild swans in their flight,
The dullest sailer wearing bravely now―
So gaily curl the waves before each dashing prow.

ween:(…と)思う, 考える(think, suppose)((that節)) ▼ふつうI weenとして挿入句的に用いる
fair as breeze may be:fair=〈風・潮流などが〉航行に好都合の。may=can。
set:〈風・流れなどが〉(一定の方向コースを)とる, (…に)向く, (…へ)流れる((to ...))
gallant:〈物・事が〉堂々とした, 壮麗な;華美な, 飾り立てた;豪奢(ごうしゃ)な
tight:((複合語))…を通さない, 防[耐]…の、〈結び目・包帯などが〉堅く結んだ, しっかりした, 〈栓・ねじなどが〉しっかり固定した, 堅い、〈人が〉有能な;じょうずな;〈人・物が〉さっぱりした, こぎれいな;格好[姿]のよい.
spire:尖塔(せんとう);塔の尖頂
strand:((詩))岸, 浜, 潟(かた)
Main:((文))大海, わだつみ
bow:((しばしば~s))船首, へさき;(飛行船の)機首
convoy:護衛[護送]隊;護衛艦
sailer:((速力などを表す修飾語を伴って))(…の)船
bravely:勇敢に, 勇ましく. りっぱに, 華美に, はなやかに
wear:〈表情・様子・態度などを〉示している, 浮かべる, 帯びる
dash:〈液体などを〉(…に)はね散らす
prow:船首

XVIII.

And oh, the little warlike world within!
The well-reeved guns, the netted canopy,
The hoarse command, the busy humming din,
When, at a word, the tops are manned on high:
Hark to the Boatswain’s call, the cheering cry!
While through the seaman’s hand the tackle glides;
Or schoolboy Midshipman that, standing by,
Strains his shrill pipe as good or ill betides,
And well the docile crew that skilful Urchin guides.

reeve:〈ロープなどを〉(滑車などに)通す((through ...));〈ロープなどを〉(…に)(穴を通したり, 巻きつけたりして)取りつける, 固定する((to, on, round ...));〈輪・滑車などに〉ロープを通す.
canopy:天蓋(てんがい)
hoarse:〈声が〉しわがれた, かすれた, ハスキーな
humming:ブンブンいう[うなる];鼻歌を歌う
din:((時にa ~))(ひっきりなしの)大きなやかましい音, (ガンガンと響く)騒音
the tops:戦闘檣楼。(田吹)
man:…に要員を配置する
boatswain:(軍艦の)掌帆[兵曹]長;(商船の)甲板長
seaman:船舶の操縦者;(高級船員以外の)船員, 水夫;船乗り.
tackle:《海》テークル;ロープと滑車、器具, 用具, 道具
glide:すべる, すべるように動く
Midshipman:《英海軍》海軍少尉候補生
Strain:〈ロープなどを〉引っ張る;〈関係などを〉緊張させる, こじらせる
pipe:《海》(甲板長の)号笛, 呼び子(の音)
betides:(自)起こる
docile:すなおな, 従順な, 仕込み[教え]やすい
Urchin:((古風))いたずらっ子, わんぱく小僧, (一般に)男の子, 少年.

XIX.

White is the glassy deck, without a stain,
Where on the watch the staid Lieutenant walks:
Look on that part which sacred doth remain
For the lone Chieftain, who majestic stalks,
Silent and feared by all― not oft he talks
With aught beneath him, if he would preserve
That strict restraint, which broken, ever balks
Conquest and Fame: but Britons rarely swerve
From law, however stern, which tends their strength to nerve.

White:〈水・ガラスなどが〉無色の, 透明な;((比喩))汚れのない, 潔白な
staid:生真面目な, 旧弊な, 退屈な
Lieutenant:《海軍》大尉.
majestic:威厳のある, 堂々とした, 荘重な
preserve:〈容姿・落ち着き・威厳などを〉保つ, 持ち続ける, 失わないでいる
balk:〈人の〉(期待・希望などを)挫折(ざせつ)させる, くじく((of, in ...))
swerve:(…から)急にそれる, はずれる, 急に向きを変える

XX.

Blow! swiftly blow, thou keel-compelling gale!
Till the broad Sun withdraws his lessening ray;
Then must the Pennant-bearer slacken sail,
That lagging barks may make their lazy way.
Ah! grievance sore, and listless dull delay,
To waste on sluggish hulks the sweetest breeze!
What leagues are lost, before the dawn of day,
Thus loitering pensive on the willing seas,
The flapping sails hauled down to halt for logs like these!

keel-compelling:船を押し進める
gale:強い風;《気象》強風
broad:さえぎるもののない;いっぱいにあふれた, 満ち満ちた
Pennant:長めの三角旗, 吹きながし
bearer:運搬人
lag:(…より)進み方がおそい((behind/behind ...))
grievance:不平[不満, 苦情]の種
sore:苦痛の種
listless:気乗りしない, 気の抜けた, 無関心な;ものうげな, 大儀そうな.
sluggish:〈動きが〉のろい
leagues:距離の単位:英米で約3マイル(約4.8km).
pensive:〈言動・表情などが〉哀愁を漂わせる, 物悲しい
flap:〈旗・カーテンなどが〉ぱたぱた動く, はためく, ひるがえる
haul:(網などを)引く, たぐる((away/at, on, upon ...))
halt:(行動・活動が)止まる, 停止[休止]する, 終わる, 中止になる
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