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<月>の明かりに照らされて

2009年09月12日 20:00

カルペの海峡

【チャイルドハロルドの巡礼】第2編より、21連-24連
    バイロン作  Shallot B.訳

21
<月>が出ている。あぁ、なんて綺麗な夕暮れだろう!
長い光りの流れは揺れ踊る波のうえに広がってゆく。
いま、岸辺で若い男が溜め息つけば、処女(おとめ)たちは信じるだろうね。
俺らが陸へと戻ったなら、俺らの運命もそうあってほしいなぁ!
その間に、なかなかたくましい詩人・アリオンの手は激しく動き、
船乗りたちの愛する溌剌とした旋律を呼び覚ます。
陽気な聴き手たちが彼を囲み、
あるいは有名な旋律に合わせて巧く手足を動かすのだ、
気楽に、まるでまだ浜辺にうろついているみたいだ。

22
カルペの海峡を通して、切り立った岸壁を見て。
ヨーロッパとアフリカが互いに見詰め合っている!
黒い瞳の処女(おとめ)の土地と浅黒いムーア人の土地が、
そっくりに見える、女神ヘカテの蒼褪めた月明りに照らされて。
ヘカテはなんて優雅だろう! スペインの岸辺にも戯れて。
欠け始めた月は満月よりも暗いけれど、はっきりと、
岩も、斜面も、暗い森も顕にするんだ。
けれど、モロッコの巨大な影は、
絶壁から岸へと暗く落ち込み、威圧する。

23
こんな夜には、たとえ<愛>が終わりを迎えているとしても、
一度は愛したこともあるのだと感じなさい、なんて<瞑想>が命じるのさ。
<心>は、挫かれた熱意をひとり嘆き、
いまは友達もいないけれど、かつては友達がいた夢を見るだろう。
<青春>自身が、初心(うぶ)な<愛>と<歓び>を生きのび、
歳月の重みで腰が曲がることなど、一体誰が望むというのか?
あぁ! 交わりあうべき人の心が解けあうことを忘れると、
<死>が壊すべきものは、雀の涙も残されていない!
ああ! 幸せなころよ! いま一度少年に戻りたいと願わぬひとがあるだろうか?

24
こうして、波あらう船縁に身をかがめ、
波間に映る女神ディアナの星を見つめていると、
心は<希望>や<誇り>の策略を忘れ、
いつの間にやら、一年一年遡ってゆく。
なにか大切なもの、自分よりも大事なもの、
ある想いを、今も昔も持ってはいないひとなど、
そして涙の誓いを求めぬひとなど、そんな惨めなひとはいない。
激痛が走る! 疲弊した胸は、
無駄であっても、その重たい心から、まだ痛みを取り除こうとするものだ。


〔21連について〕
男なんてねー、そんなもんですよ!(笑)虎視眈々と、女の子の隙を窺ってるんですよ! 
詩人がメロディーを奏でるところで、なぜか『ぴゅーっと吹く! ジャガー』のジャガーさんが脳裏をかすめてしまったのは内緒です(汗)。
☆ アリオンは、ギリシア神話の詩人です(右はモローの絵です)。↓
Arion Dolphinモローのアリオン
船乗り達に所持していた金品を奪われそうになったところを、持っていた竪琴を奏でてイルカを呼び寄せ、海へと身を投げたところ、イルカに乗って陸へとあがり、後に詰め寄られた船乗りたちに仕返しをしたらしいです。でも、この連のアリオンは船の上で素敵な音楽を奏でる詩人なのですね。
☆ 1行目で<月>が擬人化されています。22連ではヘカテに、24連ではディアナにそれぞれ擬人化されていきます。21-24連のなかでは、ある意味でいちばん実物に近い扱いの<月>ではないでしょうか。語り手はこれから<月>を女神としてとらえることで、空想の世界へと突入するようです。

〔22連について〕
21連で擬人化された<月>は、ここで女神ヘカテ(↓)へと変貌し、月明かりそのものをヘカテの戯れる様子としてとらえられています。8行「Mauritania’s giant-shadows frown」は、恐らく暗闇のなかに浮かび上がる陸地なのでしょうけれども、亡霊のような、実体のない様子でとらえられているところが面白いと思います。
ヘカテさん

カルペは、スペインの海に突き出た岩山です。(リンクをクリックすると地図が出ます。)

〔23連について〕
The Heart will dream it had a friend.の文のwillは意志未来なのでしょうか、単純未来なのでしょうか? ご教授いただけると有難いです。個人的に、語り手の判断だと理解してwillは単純未来で訳出しましたが、東中先生は意志未来で訳されています。
最後の一行について。これをバイロンが書いたのは彼が21-22歳だったけれども、28歳の時に書いたFragmentでは、「I would not trace again the stream of hours」と書いています。6年間の出来事が偲ばれますね。

〔24連について〕
ここで<月>は女神ディアナへ。なぜか美しさのなかに畏怖するものがある22連ではヘカテで、美しさが際立つ24連ではディアナなんですね(笑)。射すような光りがぴったりなのでしょうか。



XXI.

The Moon is up; by Heaven, a lovely eve!
Long streams of light o’er dancing waves expand;
Now lads on shore may sigh, and maids believe:
Such be our fate when we return to land!
Meantime some rude Arion’s restless hand
Wakes the brisk harmony that sailors love;
A circle there of merry listeners stand
Or to some well-known measure featly move,
Thoughtless, as if on shore they still were free to rove.

eve:((詩))夕べ, 晩(evening).
may sigh, and maids believe:草稿では「 “their melting girls deceive”としていたが、良心の呵責を感じたためか、書き換えている。」(田吹)
lad:少年, 若者、恋人
Meantime:((話))その間に, そうしているうちに;それまでは
rude:強壮な, たくましい.
brisk:きびきびした, 活発な, 元気のよい
measure:《楽》拍子, リズム;小節
featly:適切に, ぴったりと, 巧みに, 手ぎわよく
move:体[手足など]を動かす
Thoughtless:無頓着
rove:(広い地域を)うろつく, さまよう, 流浪[放浪]する((around, about/over ...))


XXII.

Through Calpe’s straits survey the steepy shore;
Europe and Afric on each other gaze!
Lands of the dark-eyed Maid and dusky Moor,
Alike beheld beneath pale Hecate’s blaze:
How softly on the Spanish shore she plays!
Disclosing rock, and slope, and forest brown,
Distinct, though darkening with her waning phase;
But Mauritania’s giant-shadows frown,
From mountain-cliff to coast descending sombre down.

Calpe:スペイン、ヴァレンシアの地名。ジブラルタルの海に突き出た岩の名前。
strait:((しばしば~sで単数扱い))海峡, 瀬戸
Moor:ムーア人:アフリカ北西部に住むベルベル人(Berber)とアラブ人(Arab)との混血のイスラム教徒
Hecate:《ギリ神話》ヘカテ:地上と冥府(めいふ)(Hades)を支配する女神
blaze:(…の)強い輝き, 燃えるような色彩((of ...))
Disclosing:…のおおいを取る, …をあらわにする, 見せる
Distinct:(知覚によって)はっきり認識できる, 明瞭な
wan:(…の点で)衰える((in ...))、〈月が〉欠ける
phase:《天》(月・惑星などの)相, 位相
Mauritania:モロッコの古名。(田吹)
frown:〈事・物が〉威圧感を与える


XXIII.

’Tis night, when Meditation bids us feel
We once have loved, though Love is at an end:
The Heart, lone mourner of its baffled zeal,
Though friendless now, will dream it had a friend.
Who with the weight of years would wish to bend,
When Youth itself survives young Love and Joy?
Alas! when mingling souls forget to blend,
Death hath but little left him to destroy!
Ah! happy years! once more who would not be a boy?

mourner:嘆き悲しむ人
baffle:(企てなどで)挫折(ざせつ)させる((in ...))
bend:曲がる, たわむ。e.g. The bamboo is bending with [under] the weight of the snow. 竹は雪の重みでたわんでいる.
mingle:(人と)交際する((with ...))
soul:[C]精神, 心


XXIV.

Thus bending o’er the vessel’s laving side,
To gaze on Dian’s wave-reflected sphere,
The soul forgets her schemes of Hope and Pride,
And flies unconscious o’er each backward year;
None are so desolate but something dear,
Dearer than self, possesses or possessed
A thought, and claims the homage of a tear;
A flashing pang! of which the weary breast
Would still, albeit in vain, the heavy heart divest.

bend:かがむ((down, over))
vessel:((形式))(大型の)船.
laving:〈流れ・波などが岸を〉洗う.
Dian:=Diana《ローマ神話》ディアナ:月の女神で, 女性と狩猟の守護神。(女神として人格化された)月.
sphere:《天》惑星, 星;天体;天球
desolate:〈人・生活などが〉孤独な, さびしい, みじめな
homage:尊敬, 敬意、(封建時代の君主に対する)忠誠の誓い, 臣従の礼
pang:心痛, 悲痛, 煩悶(はんもん), 痛恨、激痛, 苦痛, 発作
weary:(肉体的・精神的に)疲れきった
albeit :[接]((文))…ではあるが(although);…であろうとも(even though).
divest:〈AからBを〉奪う, 取り上げる[除く]
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