『フランス幻想民話集』読了

2009年11月02日 01:23

秋の空09-10

フランス幻想民話集 (1981年) (現代教養文庫〈1047〉)

『バスク民話集』に引き続き、フランスの民話にハマっています…おばけ
『フランス幻想民話集』読了しました☆

フランスの幻想系文学は、ランボーの詩の背景になりそうな素材がゴロゴロしていることに今更ながら気づきました。19世紀のフランスの文学の源流は、恐らくこういうところに端を発しているのではないでしょうか。

「恋人たち」の章では、「ナイチンゲールを恋した娘」のような、可愛らしい女の子がその美しい死を遂げるまでの儚い恋の経緯が描かれています。モチーフとして登場する薔薇の花や小鳥、少女などはレオン・フレデリックの絵画を想起させます。光りの具合の美しいことも、これに拍車をかけているのではないでしょうか。
「煉獄からの復讐」では、モリエールの『ドン・ジュアン』(モーツァルトの『ドン・ジョバンニ』のほうが印象深いですが)のような、大変なスケコマシ野郎氏が、騙してモノにして棄てた結果、(キリスト教は処女を失った女性に対する大変な差別がありますから)命を絶つに至った女の子たちの亡霊に復讐をされるというもの。ネタとしてはありがちのような気がしますが、オフィーリアに見られるように、その文化的背景を加味するならば、やはりその罪は許しがたいもので… しかし、それにしても背筋の凍りつくような復讐。

「悪魔」の章では、やはり「妖術師見習」が面白かったです。
サバトへと向かう妖術師見習が、空を飛ぶ呪文を間違えて、素っ裸のまま木に引っかかっているところを語り手に発見されるという、大変に間抜けなもの。悪魔の集会=サバトへ向かうという禁忌を侵していること自体が既に地獄落ちというか、処刑に値するという価値観で見るなら、この木にひっかかっている男は、試みに失敗したとはいえ、試みただけでももう大変な罪を侵していることになります。そして、間抜けなことに、裸で失敗するなんて…(汗) 笑い話なんでしょうか? いやー…こわい話に分類されているはずなんですが、なんか滑稽ですね。

「領主」の章では、「レオナルド伯爵の財宝」がイチオシ。自らの子供の心臓を悪魔に売ってまで財宝を手に入れようとする男を、悪魔がたぶらかして、なぜかその悪魔が罰してやるという…。内臓のなかでも、心臓はやはり最も悪魔をひきつける臓腑なのでしょうか。コワ~イ!ねこ

「求道者」の章では、「袋に入れ!」で少しほっとしました! 主人公がまっとうな聖者のような男なので、勧善懲悪に近い展開。仙女のイメージはディズニーのピノキオの仙女。美しい物語でした。

最後のふたつの章「死者」と「亡霊」は、どちらも墓と切り離せないし、霧の中を進むような、茫漠とした世界を、実体のない亡霊や死者たちが列をつくってやってくるような、まさにベルギー象徴派の絵画のような世界を描いています。暗闇のなかに浮かび上がる蝋燭の炎は、あまりにも弱く、おぼろげです。

キリスト教と異教の混在する民話のなかに、やはり強く根を張っているキリスト教的「罪」と「悪」のイメージは、具体的なモチーフとなって、ストーリーにちりばめられているのですね。禁忌の侵犯がどれほど恐ろしい罪かということを、改めて感じました。処女の神聖視、神の冒涜、悪魔との接触… これらはまた、ヨーロッパ文化を紐解く上で、ひとつの重要な役割を果たしているのも事実ではないでしょうか。
関連記事


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://sousleau.blog5.fc2.com/tb.php/631-c1b9ab8d
    この記事へのトラックバック


    Articles