劣悪な血 ②

2004年08月05日 02:12

 フランス史のどこか一ヶ所に、僕の前歴があったらなぁ!
 けど、ないね、全然。
 僕がいつも劣等種族だったことは、まったく明らかだ。僕には反抗が理解できない。僕の種族は略奪のためにしか決起しなかった。自分で殺してもいない獣に寄りつく狼どもみたいだ。
 僕は、カトリック教会の長女であるフランスの歴史を覚えている。僕は賤しくて、聖地への旅をしたのかもしれなかった。つまり、僕の脳裏にはシュエーベン平原の街道や、ビザンツ帝国の光景、イェルサレムの城壁が焼きついている。マリア崇拝と十字架に架けられた人への同情が、たくさんの異教徒の夢みたいに、奇麗な光景の真ん中で、僕は自分の内面へと覚醒する。――僕は、壊れた壷の上に、茨の上に、太陽に蝕まれた壁の傍で、ライ病に憑かれて、座っていた。――更に時代を下ると、傭兵になって、ドイツの夜空の下で野営をしていた。
 あぁ! まただ! 僕は魔女や子供たちと一緒に、灼熱の森の空き地で、魔女の乱舞を踊るんだ。
 僕はこの地とキリスト教以前のことは、記憶していない。この流れの中に自分を見出すのは、長くは続かないだろう。いつも独り。家族もない。それどころか、僕はどんな言葉を話していたの? 僕自身、キリストの集まりには決して見出せない。――キリストの代理人としての貴族たちの会合にも。
 前世紀には、僕は何者だったんだ? 現代にしか自分を見出せない。もはや流浪人もなく、曖昧な戦もない。劣等種族はこの世を覆ってしまった――人の言うように、人民と理性、つまり国民と科学ってやつさ。
 あぁ! 科学! 全ては修正された。肉体のために、魂のために、――臨終の聖体拝領だよ、――人は薬と哲学を持っている、――焼き直された善良なおばちゃんの治療薬と演歌だけどね。それから若い御子息たちの娯楽と、禁じられたゲームだね! 地理学、宇宙形状学、力学、化学……
 科学、新しい権威! 進歩ってヤツさ。世界は進む! どうして廻らないの?
 数の幻想さ。僕らは理知へと向かう。それはとても確かなこと。僕の告げた予言だから。ちぇ、わかったよ、異教徒の言葉なしじゃ自分を説明できないんだから、黙れって言うんだね。
 これを初めて読んだ時、めっちゃ感動したことを、まだ覚えています。「善良なおばちゃん」とか、「世界は進む!、どうして廻らないの?」とか、今でも日常的に口ずさんでしまう台詞がいっぱいです。この世の中、本当に数の幻想が日常を覆っていて、自分の雑務も馬鹿らしくなります。歴史の中に自分の姿を見出そうとしている語り手。夢の、走馬灯のような歴史の情景の描写が素晴らしいと思います。この美しい描写の力は、イリュミナシオンにも通じるものがあると。『地獄での一夏』の中でも、イチバン好きな場面のうちの一つです。
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