スポンサーサイト

--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

こよなくギリシアを愛するひとの叫び その3

2010年03月20日 20:12

ソウニオン岬
【チャイルドハロルドの巡礼】第2編より、84連-90連
    バイロン作  Shallot B.訳

84
古代スパルタの大胆さが立ち上がるとき、
都市テーベが将軍エパメイノンダスを墓から甦らせるとき、
アテネの子供たちが勇気を備えるとき、
ギリシアの母たちが男たちを産み落とすとき、
ギリシアよ、そのときおまえは復活の宿願を果たすかもしれない。しかしそれまではあり得ぬ。
一千年は国家を形成するには無力だ。
一時間で国家は灰燼に帰す。そして
ひとは砕け散った輝きを取り戻し、
再び力を取り戻し、<時>と<運命>を打ち破れるのだろうか?

85.
それでもなお、おまえの嘆きの時代にあって、
失われた神々や半神の者たちの土地の、なんと美しいことか!
その常緑の谷や雪山は
おまえが<自然>の変化に富んだ寵児であることを告げている。
おまえの祠、寺は地表に崩れ落ち、
ゆっくりと英雄の大地と混ぜ合わさり、
百姓の鋤の一振り一振りによって崩されてゆく。
こうしてこの世に建てられた記念碑は滅ぶ、
こうしてすべてはかわるがわる滅ぶ、充分に記された<真価>を除き。

86.
こうしてすべてはかわるがわる滅ぶ、
同じ洞窟から(切り出され)、打ち斃れた兄弟を、孤独な円柱が嘆くところを除き。
女神アテナの空にそびえる社が、スニオン岬の断崖を飾り、
波をずっと照らしているところを除き。
なかば忘れ去られたちょっとした勇者の墓のうえで、
灰色の石と繁茂する草が、時を経て、
弱々しく立ち向かうが、忘却には歯が立たない場所を除き。
異邦人は、ただ無関心に通り過ぎることはなく、
僕のようにぐずぐずして、たぶん、見つめて、そして「ああ!」と溜め息をつく。

87.
それにしても、おまえの空は抜けるような青さで、おまえの岩はとても荒々しい。
おまえの森は優美で、おまえの野原は緑に覆われている。
女神アテナが微笑んだとき、おまえのオリーヴは熟れていた。
そして今なお、ヒメトス山は豊かな蜂蜜を生み出している。
そこでは、自由に生まれついた、おまえの山の空気を行ったり来たりする、
軽率な<蜂>が馨しい要塞を築いている。
太陽神アポロはまだ、おまえの長い長い夏を黄金色に染め、
そしてその光りのなかで、メンデリ山の大理石が輝いている。
<技巧>、<栄光>、<自由>は衰弱するが、<自然>はなおも美しい。

88.
我々がどこを歩いても、英雄の霊魂が彷徨う、聖なる土地。
おまえの土は賤しい土にまみえることなく、
ひとつの広大な<驚異>の王国が広がっている。
そして、詩神の物語すべてが偽りなく語られたように思える。
我々が子供のころに見た夢がとり憑いている光景を
見つめるあまりに眼が痛む。
丘や谷のひとつひとつが、深く落ちこむ峡谷や丘陵のそれぞれが、
おまえの寺院を崩落させた力をものともしない。
<歳月>はアテナの塔を揺るがすが、灰色をした平原マラトンを見のがしてやる。

89.
太陽や土は、奴隷の身だけを除けば、同じで、
外国からやってきた領主を除けば、何も変わらない。
戦場は変わらぬ境界や際限のない名誉を保っている。
ペルシアの犠牲となる軍勢が、最初に
ギリシアの剣の切っ先に倒れ伏したのだ。
多くの犠牲者を出した古の<栄光>にとってのあの朝、
平原マラトンは魔法のことばになった。
ひとたび口にのぼれば、聞く者の眼に映るのは、
陣営、軍勢、戦闘、征服者の疾駆、

90.
疾走する将軍、矢のない弓は折れてしまって――
烈火のようなギリシア人が、執拗に追跡する。
山々は高く、大地の、海洋の平原はひた続く。
目前には<死>が、背後には<破滅>!
それがこの光景だった。今や何が残っている?
<自由>の微笑と<アジア>の涙を記して、
どれほど聖なる記念碑が聖なる土地を標すのか?
盗まれた骨壷、冒された陵、おお 無礼な異邦人よ、
おまえの馬の蹄が辺りに蹴散らす塵だけなのだ。


写真は、86連のスニオン岬。こりゃー霊感も吹き込まれるよねぇ!

この辺りは、ちょっと長すぎる気もするけれど、戦闘の描写なんかは、バイロンのお手のもの。マジ巧い!
擬人法の描写も、やっぱ巧いと思います。伝統的な擬人法を駆使してますよね。
個人的には86-87連が、この6連ではミソだと思います。



LXXXIV.

When riseth Lacedæmon’s hardihood,
When Thebes Epaminondas rears again,
When Athens’ children are with hearts endued,
When Grecian mothers shall give birth to men,
Then mayst thou be restored; but not till then.
A thousand years scarce serve to form a state;
An hour may lay it in the dust: and when
Can Man its shattered splendour renovate,
Recall its virtues back, and vanquish Time and Fate?

hardihood:[名]大胆.
Lacedæmon:古代スパルタの別称。Lacedaemon。
Thebes:テーベもしくはテーバイ。古代の都市国家。
Epaminondas:エパメイノンダス(紀元前420?-362)は、テーベの将軍・政治家。レウクトラの戦いで、斜線陣を用い、神聖隊を率いて、最強と謳われたスパルタ軍を破った。
endue:[endue A with B]〈A(人)にB(才能・性質・権利)を〉授ける, 賦与する;((受身))〈AがBを〉備えている.
heart:元気, 勇気, 気力
restore:(制度・機能などを)復活させる
scarce:おそらく[たぶん]…ない(probably not).
serve:[II to do] (…するのに)役だつ
shatter:粉々にする;…をめちゃめちゃにする
renovate:…を良好な状態に戻す;…を再び新しくする, 革新[刷新]する;…を修繕[修理]する
virtue:(ある結果を生み出す)力, 効力
vanquish:…を征服する, 降伏させる, 打ち破る

LXXXV.

And yet how lovely in thine age of woe,
Land of lost Gods and godlike men, art thou!
Thy vales of evergreen, thy hills of snow,
Proclaim thee Nature’s varied favourite now:
Thy fanes, thy temples to the surface bow,
Commingling slowly with heroic earth,
Broke by the share of every rustic plough:
So perish monuments of mortal birth,
So perish all in turn, save well-recorded Worth;

Proclaim:[V[名](to be)[形][[名]]] 〈物・事が〉…を(…であると)物語る
fane:寺、祠
Commingling:((文))(他)…を(…と)混ぜ合わせる((with ...)).
plough:(農耕用の)すき
mortal:((詩))(死すべき運命をもった)人間の(human);この世の(earthly)


LXXXVI.

Save where some solitary column mourns
Above its prostrate brethren of the cave;
Save where Tritonia’s airy shrine adorns
Colonna’s cliff, and gleams along the wave;
Save o’er some warrior’s half-forgotten grave,
Where the grey stones and unmolested grass
Ages, but not oblivion, feebly brave,
While strangers only not regardless pass,
Lingering like me, perchance, to gaze, and sigh ‘Alas!’

prostrate:(うつぶせに)倒れた;長々と横たわった;〈樹木などが〉打ち倒された.
brethren:((古風))同胞, 信者仲間, 会員, 組合員, 同業者
Tritonia:女神アテナの別称。
Tritonia’s airy shrine:Sounion岬のポセイドン神殿のこと。バイロンの勘違い。
airy:空中で行われる;空にそびえる
Colonna:Sounion岬のこと。
adorn:〈人・物を〉(…で)飾る, 装飾する((with ...))
unmolested:妨げられない;悩まされない
age:古びる、古くなる、ねかす、年をとる

LXXXVII.

Yet are thy skies as blue, thy crags as wild;
Sweet are thy groves, and verdant are thy fields,
Thine olives ripe as when Minerva smiled,
And still his honeyed wealth Hymettus yields;
There the blithe Bee his fragrant fortress builds,
The free-born wanderer of thy mountain-air;
Apollo still thy long, long summer gilds,
Still in his beam Mendeli’s marbles glare:
Art, Glory, Freedom fail, but Nature still is fair.

Hymettus:ギリシア東部、アテネ近郊の山。
blithe:((詩または古))〈人などが〉快活な, 陽気な。思慮のない, 不注意な, 軽率な
gild:…に金(ぱく)をきせる, 金めっきする;…を金色に塗る
Mendeli:山の名前。

LXXXVIII.

Where’er we tread, ’tis haunted, holy ground;
No earth of thine is lost in vulgar mould,
But one vast realm of Wonder spreads around,
And all the Muse’s tales seem truly told,
Till the sense aches with gazing to behold
The scenes our earliest dreams have dwelt upon;
Each hill and dale, each deepening glen and wold,
Defies the power which crushed thy temples gone:
Age shakes Athena’s tower, but spares gray Marathon.


LXXXIX.

The Sun, the soil―but not the slave, the same;―
Unchanged in all except its foreign Lord,
Preserves alike its bounds and boundless fame
The Battle-field, where Persia’s victim horde
First bowed beneath the brunt of Hellas’ sword,
As on the morn to distant Glory dear,
When Marathon became a magic word;
Which uttered, to the hearer’s eye appear
The camp, the host, the fight, the Conqueror’s career,

Preserve:〈人・物を〉(危害・腐敗などから)保護[保存, 保管]する((from ...))
horde:大群, 多数(の…)((of ...))
Hellas:ヘラス, エラス:ギリシャの古代名
brunt:(攻撃・打撃の)主力, ほこ先.
alike:昔と同じ
camp:(軍隊・旅行者などの)野営地, 幕営地, キャンプ場
host:((古))軍, 軍勢
career:(すみやかな)進展, 進行, なりゆき, 経過;経路


XC.

The flying Mede, his shaftless broken bow―
The fiery Greek, his red pursuing spear;
Mountains above―Earth’s, Ocean’s plain below―
Death in the front, Destruction in the rear!
Such was the scene-what now remaineth here?
What sacred Trophy marks the hallowed ground,
Recording Freedom’s smile and Asia’s tear?
The rifled urn, the violated mound,
The dust thy courser’s hoof, rude stranger! spurns around.

Mede:古代メディア人。ここではペルシア人の意。ペルシア軍を率いていた将軍ダティスがメディア人だったことによる。
shaftless:矢・やりのない
hallowed:神聖な, 神聖視された;((時におどけて))尊ばれる, あがめられる.
rifled:〈場所を〉くまなく捜して(物を)奪い取る, 盗み取る((of ...))
courser:17世紀に使われた修辞語。「馬」の意。
関連記事


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://sousleau.blog5.fc2.com/tb.php/660-d1a5bad0
    この記事へのトラックバック


    Articles


    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。