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ハインリッヒ・ハイネ『アッタ・トロル』(1847年)第19章

2010年04月17日 01:30

王妃ヘロディアスとヨカナーン
↑フランチェスコ・デル・カイロ 「ヘロディア」1625-30、キャンバス、油彩

ハインリッヒ・ハイネ『アッタ・トロル』(1847年)第19章
(魔女ウラーカに促され、窓ごしに見た精霊たちの一行のなかにヘロデアの姿がある。)

そして君の心をかくも深く動かした
三人目の女、
これも、さきほどのふたり同様、
魔性の女であったのか。

悪魔か天使か、それはわからぬ。
女というもの、どこまでが天使で、
どこからが悪魔か、
はっきりとはわからぬものなのだ。

肌白きうえに情炎のもえる顔には、
東方の魅力が息づいていた。
絢爛豪奢(けんらんごうしゃ)な衣装は
シェーラザード妃の物語から抜け出してきたようだ。

柘榴のごとく甘美な唇、
なだらかにたわむ百合のような鼻、
オアシスをふちどる椰子を思わせる
すらりとしたすがすがしい姿。

女王は貴(あて)やかに白馬に身をまかせ
かたわらを行く、
ふたりの黒人に
金の手綱を曳かせていた。

まさしく、それは女王の中の女王、
ユダヤの国の王妃であった。
洗礼者ヨハネの首を所望した
あのヘロデ王の美しい后だった。

そんな流血沙汰の責めを負い、
この女王もまた呪いをうけた。
最後の審判の日まで、さまよえる亡霊となって、
夜な夜な幽鬼の狩り行く群れに従わねばならぬのだ。

両手には、いつまでも
ヨハネの首を載せた盆をもち、
そして、それに接吻する。
そうだ、熱烈にその首に接吻するのだ。

というのも、女王はむかしヨハネに恋していたからだ。――
聖書にそのことは書かれていない。
が、人々はヘロデアの、
血なまぐさい恋物語の記憶を忘れてはいなかった。――

そうでなければ、女王がみせた欲情の
何故なのか説明もつくまい。――
愛してもいない男の首なんぞ、
所望する女なぞいるはずがない。

ふとしたことで、愛しい男に憤り、
その首をはねさせたにちがいない。
ところが盆に載る、
愛しい男の首をみるや、

ヘロデアは、胸をふさぎ、涙に暮れ、
恋に狂って息絶えたのだ。
(恋に狂う! とはなんたる言葉の無駄遣い。
恋とはもともと気狂いのこと。)

夜ともなると墓から甦り、
血のしたたる首を手にして、
幽鬼の狩りに出掛けていくという噂。
しかも狂った女の気紛れから、

子供のように笑いころげながら、
ときどき、その首を宙に投げあげ、
上手にそれを受けとめて、
鞠投げにでも興じているみたい。

前を通り過ぎるとき、
僕を見つめて媚びるように、
悩ましげに頷いた。
僕は心の底までぶるっとした。


*ハイネ『ハイネ全詩集』(第3巻)井上正蔵訳、角川書店。



(…)ワイルドの独創というわけにはいかない。サロメのヨカナーンに対する妖しい愛というこの着想は、(…)実はハインリッヒ・ハイネが、『アッタ・トロル』において初めて民間伝承から派生したこの主題を文学に導入したのである。(マリオ・プラーツ『肉体と死と悪魔』倉知恒夫ほか訳、国書刊行会、1986年、404頁。)




更新したい気持ちでいっぱいのまま、既に約1ヶ月。
……
フランス語の先生のところから、一ヶ月以上前に「国文学」の中原中也を特集してあるものを2冊頂き、既に読んでいるのですが、なかなか記事にしないままになってしまっています。
連休が終わるまでにはなんとか記事にしたいです~☆

というわけで、今夜はとりあえずデジタルファイルにしてあった『アッタ・トロル』から。
今年もサロメちゃんのシーズンが到来。梅雨入りするころまではサロメちゃんと遊ぶ予定です。

ヘロディアスさんは、サロメちゃんのお母さんです。
でも、ヨハネさんとのペアはどっちがお似合いかっていうと、う~む…
ヘロディアスさんは、サロメちゃん以上に艶っぽいので、なんかオトナの女性~って感じ。
ヨハネさんは、了見が狭くてけっこう頑固で突っ走るタイプ(ある意味コドモ)だから、
サロメちゃんのほうがお似合いなのかなぁ…。(極めて個人的な偏見!)

今、念願のフローベールの『ヘロディアス』を読んでます。
そのうち感想を書けたら…いいなぁ…><;
↓読みやすいです!

サロメ誕生―フローベール/ワイルドサロメ誕生―フローベール/ワイルド
(2001/04)
工藤 庸子

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