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この世にひとりっきり――『ハロルド』第2編終結部

2010年04月26日 00:05

へーぜるなっつチョコレートの貝殻

【チャイルドハロルドの巡礼】第2編より、94連-98連
    バイロン作  Shallot B.訳

94.
こうして延々と歌い過ぎながら
不名誉な歌で自分の暇をつぶしてきた者よ、
おまえの声など、すぐに、後の、より偉大な詩人たちの
声の真ん中で、かき消えてしまうだろう。
萎れてゆく名誉をめぐる闘争は、彼らに譲ってやろう。
褒めてくれたかもしれない温かい心は冷たく、――
愛するひとのいないところには、喜ばせるひともいないのだから、
辛辣な<批評>や偏見に満ちた<絶賛>に気をつけるひとは、
今や、そんな争いにはちっとも心を動かさない。

95.
きみも逝ってしまった、愛された、美しいひとよ!
<青春>と<青春>の愛情がきみを僕に結いつけた。
きみは、ほかの誰もがしなかったことを僕にしてくれたひと、
きみに値しなくても、僕を避けなかったひと。
俺って何なんだろう! きみはもういない!
この故郷できみの流浪人の帰りを待っていてくれるきみがいない、
僕らがもう会えないことを、いつまでも嘆いているよ。
過去のことでなかったらなぁ、でなきゃいずれのことだったらいいのに!
放浪の新しい理由を見つけるために、帰るのでなけりゃいいんだが!

96.
おぉ! いつまでも愛情に満ちた、美しい、愛しいひとよ!
なんて身勝手に<悲愴>は過去を思い、
今や消えたほうがずっといい想念にしがみつくのだろう!
でも、<時>はついに僕を君の影から引き離す。
俺のすべてはおまえのものだ、峻厳な死め! おまえの手の内なのさ。
親も、友も、そして今では友達以上のひとがおまえのものだ。
おまえの矢がこれほど早く一人に向かったことはないし、
まだなお悲しみと混ざり続ける悲しみは、
<生>がまだ与えてくれた密かな喜びをもひったくってしまったんだ。

97.
それじゃ、僕はまた群衆のなかへと飛び込み、
<平穏>が見下すものを、求めなくちゃならないのか?
そこじゃあ、<宴>が呼び、無駄に大声の<笑い>が
心とは裏腹に、うわべの頬を歪め、
疲れ切った魂をくたくたに疲れさせている。
やむを得ず元気づいた外見はまだ、
喜びを装い、苛立ちを隠せる。
微笑みはやがて来る涙のもとを作り、
下手に隠した嘲りで唇を歪ませる。

98.
老齢に伴う悲哀のもっとも悪いものは何?
額により深い皺を刻み込むものは何?
それは、<人生>の紙葉から愛するひちがひとりひとり消えてゆくのを見ること。
そして、今の俺のように、この世でひとりぽっちになること。
懲罰者のまえにつつましく僕は頭を下げる。
引き裂かれた心のうえを、砕かれた希望のうえを、
虚しき日々よ、転がってゆけ! 箍の外れたように、零れ落ちるがいい。
<時>は俺の愉しみをすべて奪い去り、
<老年>の苦悩で、俺の青春を蝕んでしまうんだ。


1809-1811年の、2年に及ぶグランド・ツアー(大旅行)から帰国後、執筆したらしい第2編の終結部です。

この時期、バイロンは母親や友人など、親しい人々を数名次々に失くしたという自伝的背景もあり、『ハロルド』第2編も悲哀に満ちた終結を迎えました。

親しい人々を失くすことが、老齢への階段を登ることと結び付けられていて、謳歌するはずの青春も、予想外の霜で駄目になってしまう春先の野菜とどことなく似たようなものがある気がします。

もともと「孤独感」を自分から身にまとっているハロルドではあったのですが、ここで本当にハロルド=バイロンとなり、その「孤独感」も装いから現実の悲痛な面持ちを伴うように思います。

第3編は、バイロンの娘の名前がのっけから叫ばれます。それはつまりハロルドがバイロンその人となり、5年の後、娘や姉と離れ離れになり、本当の「孤独感」をつきつけられる、バイロンそのひとが、第3編以降の主人公と言っても過言でなないように思います。(それも仮面なのかもしれませんがね!)




XCIV.

For thee, who thus in too protracted song
Hath soothed thine Idlesse with inglorious lays,
Soon shall thy voice be lost amid the throng
Of louder Minstrels in these later days:
To such resign the strife for fading Bays -
Ill may such contest now the spirit move
Which heeds nor keen Reproach nor partial Praise,
Since cold each kinder heart that might approve―
And none are left to please where none are left to love.

protract:…を延長する, 長引かせるprotracted talks長話.
Idlesse:=Idleness。
lay:(歌うための)短い物語詩, 詩;歌謡.
throng:群衆, 人だかり, 雑踏
Minstrel:(中世の)吟遊詩人;((詩))詩人, 音楽家
resign:〈権利・要求などを〉放棄[断念]する;〈契約などを〉破棄する;〈財産などを〉譲り渡す;〈人・仕事などを〉(…に)託する, ゆだねる((to ...))
Bay:《植》ゲッケイジュ(月桂樹)(laurel)。月桂冠。((~s))((古))名声, 評判(fame)。
Ill:悪く, まずく, 邪悪に(badly)。 むずかしく, できかねて, ほとんど…しない
heed:((形式))(…に)気をつける, 留意する
partial:証言・判決・意見などが〉ひいきをする, かたよった, (…に)不公平な

XCV.

Thou too art gone, thou loved and lovely one!
Whom Youth and Youth’s affections bound to me;
Who did for me what none beside have done,
Nor shrank from one albeit unworthy thee.
What is my Being! thou hast ceased to be!
Nor staied to welcome here thy wanderer home,
Who mourns o’er hours which we no more shall see -
Would they had never been, or were to come!
Would he had ne’er returned to find fresh cause to roam!

shrank:〈人が〉(…を)避ける, (…に)ひるむ, (…から)あとずさりする, しりごみする((away, back/from ...))
albeit:((文))…ではあるが(although);…であろうとも(even though).
beside:そのほかに
unworthy:…に)値しない((of ...));(…するに)足りない((to do))
Would:((願望))((雅語))(願わくは)…であれ, …であればいいのに

XCVI.

Oh! ever loving, lovely, and beloved!
How selfish Sorrow ponders on the past,
And clings to thoughts now better far removed!
But Time shall tear thy shadow from me last.
All thou couldst have of mine, stern Death! thou hast;
The Parent, Friend, and now the more than Friend:
Ne’er yet for one thine arrows flew so fast,
And grief with grief continuing still to blend,
Hath snatched the little joy that Life had yet to lend.

XCVII.

Then must I plunge again into the crowd,
And follow all that Peace disdains to seek?
Where Revel calls, and Laughter, vainly loud,
False to the heart, distorts the hollow cheek,
To leave the flagging spirit doubly weak;
Still o’er the features, which perforce they cheer,
To feign the pleasure or conceal the pique:
Smiles form the channel of a future tear,
Or raise the writhing lip with ill-dissembled sneer.

plunge:(水・穴などに)飛び込む, 落ち込む;(ある状態に)突入する, 突っ込む, 急に…し始める((in, into ...))
disdain:[III to do] 〈…する〉価値がないと考える;〈…することを〉潔しとしない, 恥とする
Revel:((文))底抜け[お祭り]騒ぎ;(ダンスや仮装舞踏会などを伴った)大騒ぎの宴
distort:…をゆがめる, ねじ曲げる;〈信号・音などを〉ひずませる
hollow:物が〉中空の, 中身が詰まっていない;うつろな。価値[実質]のない, 内容のない, 無意味な, 不誠実な, うわべだけの
flagging:弱い;疲れきった;たれ下がった, しおれた
perforce:(文))必然的に;やむを得ず
pique:(誇り・自尊心を傷つけられての)立腹, 憤慨, いらだち, 不興, 不きげん
channel:河床, 川底, 流床
writhing:(…で)身をよじる, 身もだえする, もだえ苦しむ, 苦悩する((in, under, at, with ...));((文))激しい(…の)感情をいだく((with ...))
dissemble:他)((形式))…を(…で)偽る, 隠す((with, by ...));…を装う, のふりをする

XCVIII.

What is the worst of woes that wait on Age?
What stamps the wrinkle deeper on the brow?
To view each loved one blotted from Life’s page,
And be alone on earth, as I am now.
Before the Chastener humbly let me bow,
O’er Hearts divided and o’er Hopes destroyed:
Roll on, vain days! full reckless may ye flow,
Since Time hath reft whate’er my soul enjoyed,
And with the ills of Eld mine earlier years alloyed.

wait:wait on [upon] ... 〈人に〉仕える, 給仕する, 〈客に〉応対する。〈物・事が〉…に付随する;…に(結果として)伴う.
Age:[U]高齢, 老齢;((集合的))高齢者たち(the old)(⇔youth);加齢
blot:…にしみをつける, …を(…で)よごす((with ...));〈名誉・人格などを〉汚す。〈書いた文字などの〉水気を取る;〈液体を〉吸い取る;〈よごれなどを〉ぬぐい取る((up));((比喩))…を忘れ去る
Chastener:懲らしめる人[もの]
Roll:〈球・車輪・たるなど丸い物が〉転がる, 回転していく;〈涙・水滴が〉こぼれる。roll on転がって行く
reckless:むちゃな, 無鉄砲[無謀]な
reft:reave:(reaved or reft) (他)((古))…から奪う.
Eld:老年.
alloy:〈快感・楽しみなどを〉(…で)そこなう, 減じる((with ...)。 〈貴金属を〉(卑金属に)混ぜる[混ぜて合金にする]((with ...));(卑金属を混ぜて)〈物の〉品質を落とす
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