そこには花が見あたらない

2010年05月01日 17:52

午後の出来事2010の5月

【チャイルドハロルドの巡礼】第3編より、1連-3連
    バイロン作  Shallot B.訳

1.
俺の可愛い子、我が家と心の、ただひとりの娘よ!
エイダ! おまえの顔は母親似か?
このまえ俺はその笑っている青い瞳を見た、
それから俺たちは別れたんだ。今とは違って、
あのときは、また会える希望があったけど。――
        ハッとして目覚めれば、海の上だ。
空では風がうなり声をあげている。出発だ、
何処へなんて、知ったことか。だが、遠退(とおざ)かる祖国の岸辺に
悲しんだり喜んだりできるときは、もうおしまいさ。

2.
またもや海の上とは! またしても!
波は、騎手を知ってる馬みたいに、
俺を跳ね上げる。唸り声も大歓迎だ!
何処へ向かうにしろ、速く導け!
張りつめた帆柱が葦のように震えても、
裂けて翻弄している帆布が強い風をまき散らしても、
俺はそれでも進まなきゃならない。だって、俺は、一本の葦のよう、
岩場から投げ出され、<海>の泡のうえ、大波が打ち寄せ、
嵐の息吹がる吹き寄せるところへは何処へでも、航行しなくちゃならない。

3.
僕の若き夏のころ、あるひとについて歌ったね、
暗い心を持った、流離(さすらい)の追放者を。
いまいちど、僕は、そのとき始めたこの主題を取り上げて、
片雲の風が吹き抜けるように、この身に携えよう。
あの「お話」のなかで、僕には、
考え込み、やがて干上がった涙の痕跡(あと)が見られる。
涙は退(ひ)き、あとには不毛の溝で跡をつける。
そのうえを行くのは漂白の歳月、まったくのっそりと
生の最期の砂地を重たい足どりで踏みしめる。――そこには花が見あたらない。



2連3行の「唸り声も大歓迎だ!」のところ、「うなり声もヘイらっしゃい!」とか「ようこそ、うなり声殿!」とか、なんか色々悩んだ(ぇ)んですが、結局めっさ妥協(!?)して、こうなりました。
『ハロルド』の語りの部分って、テンション高くなるといろいろ漫画(ジャンプ)ちっくに工夫したくなります…(汗/先生たちに見つかったら、ボッコボコにされるぜ!)

1-2連の激しさと、3連の落ち着きは、なんとな~く、TRF(古っ!)とか小室さん系の歌みたいに、バラードのメロディーとアップテンポのサビの部分っぽくて、一人称をいろいろととっかえひっかえ(?)してみました。

さて。

この詩が書かれたのは1816年4-5月、ちょうど今頃のこと。
バイロンの娘エイダさんは、この時まだ4ヶ月の赤ん坊。
両親の別居、そして彼女の記憶の中の父親(バイロン)はあるはずもなく、
後年、ティーンエイジャーになって、母親によって憚られていた父親の著作を読み、
書物のなかに自分の名前を発見します。

父親を嫌う母親の手元で育てられた彼女は、立派な貴族の娘になりますが、
自分の名前を本のなかにみつけたとき、ずっとその本に釘付けで、涙もしたとか。

なんかね。
3巻って、やっぱ切ない。
しんみりしちゃいます。

初めて3連を読んだとき、大感動して、泣きそうになったのは内緒。
すっごいイメージですよね!
でも、今日訳してみて、「歳月」が擬人化されていることが分かり(ぇ!!)、
更なるイメージが広がりました!



I.

Is thy face like thy mother’s, my fair child!
Ada! sole daughter of my house and heart?
When last I saw thy young blue eyes they smiled,
And then we parted, - not as now we part,
But with a hope. -
Awaking with a start,
The waters heave around me; and on high
The winds lift up their voices: I depart,
Whither I know not; but the hour’s gone by,
When Albion’s lessening shores could grieve or glad mine eye.

start:((通例a ~))(ある位置から)突然動き出すこと;はっとする[驚く]ことe.g. give a person a sudden start人をびくっとさせる、awake with a startはっと目をさます
Whither:どこへ, どちらへ(to what place)

II.

Once more upon the waters! yet once more!
And the waves bound beneath me as a steed
That knows his rider. Welcome to their roar!
Swift be their guidance, wheresoe’er it lead!
Though the strained mast should quiver as a reed,
And the rent canvas fluttering strew the gale,
Still must I on; for I am as a weed,
Flung from the rock, on Ocean’s foam, to sail
Where’er the surge may sweep, the tempest’s breath prevail.

roar:(雷・波・風などの)とどろき, うなり;騒音, 爆音.
guidance:(…についての)指導, 案内, 手引き, さしず((on, about ...));手本
strained:ぴんと張った;緊迫した;緊張した
rent:(衣服などの)ほころび, かぎ裂き, (地面などの)割れ目, 裂け目
strew:((主に受身))〈…を〉(…に)まき散らす((about, around/on, over, around ...));〈場所に〉(…を)まき散らす((with ...))
gale:強い風;《気象》強風
prevail:広く一般に存在する, 広がっている

III.

In my youth’s summer I did sing of One,
The wandering outlaw of his own dark mind;
Again I seize the theme, then but begun,
And bear it with me, as the rushing wind
Bears the cloud onwards: in that Tale I find
The furrows of long thought, and dried-up tears,
Which, ebbing, leave a sterile track behind,
O’er which all heavily the journeying years
Plod the last sands of life, - where not a flower appears.

outlaw:(社会からの)追放者
bear:((文))〈人・乗り物などが〉…を運ぶ, 持って行く。〈風・海が〉…を運ぶ
but begun:「”theme”を修飾する形容詞句。」(田吹)
ebb:〈潮・水が〉引く(⇔flow)((away)).
sterile:〈土地が〉やせた, 不毛の
heavily:重く, どっしりと。ひどく, 激しく, きびしく
Plod:(他)〈道などを〉重い足どりで[とぼとぼ]歩く.
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