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流浪人ハロルドと<自然>

2010年07月10日 20:03

Chaldean Stars

【チャイルドハロルドの巡礼】第3編より、12連-16連
    バイロン作  Shallot B.訳

12.
だが、やがて彼は<人間>と群れるのが
自分には合わないことがわかった。
連中とは通じるものがほとんどなかったんだ。
若い頃、自分の思いによって魂は宥められていたけれど、
自分の考えを人に合わせることを教わってはいなかった。
いまだに考えを曲げることなく、
彼の心が抗うやつらの<心>に、気持ちを譲ろうはしなかった。
荒んではいたが、誇り高かった。
自分の内に生きる道を見出して、ひとりぼっちで生きていられた。

13.
山々の聳えるところに、彼の友人たちはいた。
潮の逆巻くところに、彼の故郷はあった。
青い空と、煌く大地の拡がるところで、
彼には流離う熱と力があった。
砂漠、森、洞窟、砕波の泡(うたかた)、
そういったものが彼との友情を交わし、彼らはお互いに通じる言葉で話した。
その言葉は、彼の国の言葉で書かれた書物よりも明解だった。
だからよくそんな本を打ち遣っておいて、
陽の光で湖面に反射した<自然>の書物に目をやったものだった。

14.
古代カルディア人のように、彼は星を見つめられた。
やがて星明かりと同じ煌きで、彼は星をいっぱいにした。
そして地上と、地上の諍い、それから人間の脆さを
まったく忘れ去ったのだ。
彼の心があの高みを飛び続けられたなら、
彼は幸せだったのに。でも、まるで空の果てへと誘う天から
我々を離しておくための鎖を断ち切るように、
心の不滅の閃きが光りを放ちながら立ち昇ってゆくのを羨んで、
この土塊は、それを沈めてしまうのだ。

15.
やがて彼は、<人間>の住処で、不安でやつれ、
頑なでうんざりするようなものになった。
翼を切られた野生の鷹のようにうな垂れた。
そいつにとっては、果てない空だけが故郷だったのだ。
やがて再び発作が起こった、克服しなければならなかった。
閉じ込められた鳥が自分の胸と嘴を
鋼の籠に打ちつけて、
羽に血を滲ませるほどの激しさで、――
妨げられた<魂>の熱は、彼の胸へ腐食していった。

16.
自らを遠流の身としたハロルドは、再び国を離れてさまよっている。
<希望>はまったくなかったけれど、多少憂鬱ではなくなっていた。
自分は虚しく生きてきたんだ、墓のこちら側ではすべてが終わったのだ
という知識が、<絶望>に微笑みの仮面をつけさせた。
まるで略奪された難破船の沈みゆく甲板で、
泥酔した水夫たちが自分たちの運命を
狂ったように見定めるときのように、
その仮面は狂気染みていたのだが、それでも
生気を吹き込み、彼もそれを堪えようとはしなかった。


実は第3編のなかで、お気に入りの場面のひとつです。
13連の最終行、「陽の光で湖面に反射した書物」、
14連の不滅の光(=精神、魂)と執拗なほどの土塊意識、
15連の籠の中の鷹、
16連の難破船の描写。
どれもこれもバイロンの筆の巧さが光ります!



XII.

But soon he knew himself the most unfit
Of men to herd with Man, with whom he held
Little in common; untaught to submit
His thoughts to others, though his soul was quelled,
In youth by his own thoughts; still uncompelled,
He would not yield dominion of his mind
To Spirits against whom his own rebelled,
Proud though in desolation― which could find
A life within itself, to breathe without mankind.

quel:〈恐怖などを〉和らげる;〈感情を〉抑える.
uncompelled:服従させられることもなく



XIII.

Where rose the mountains, there to him were friends;
Where rolled the ocean, thereon was his home;
Where a blue sky, and glowing clime, extends,
He had the passion and the power to roam;
The desert, forest, cavern, breaker’s foam,
Were unto him companionship; they spake
A mutual language, clearer than the tome
Of his land’s tongue, which he would oft forsake
For Nature’s pages glassed by sunbeams on the lake.

breaker:(岸や暗礁に当たって砕ける)白波, 砕波(さいは).
companionship:((時にa ~))(親密な)交わり, 交際, 友好, 親交
spake:((古・詩))speakの過去形.

XIV.

Like the Chaldean, he could watch the stars,
Till he had peopled them with beings bright
As their own beams; and earth, and earth-born jars,
And human frailties, were forgotten quite:
Could he have kept his spirit to that flight,
He had been happy; but this clay will sink
Its spark immortal, envying it the light
To which it mounts, as if to break the link
That keeps us from yon heaven which woos us to its brink.

Chaldean:カルデア人。占星術に長けていた。
people:(他)((ふつう過去分詞形で形容詞的))…に人々[動物]を住まわせる, 植民する, 住む;((文))…を(…で)満たす((with ...))
envy:(他)[III[名]([副])] 〈人を〉(…で)うらやむ, そねむ, ねたむ((for ...));[IV[名][名]] 〈人の〉…をねたむ
spark:閃き
woo:〔人〕に支持などを切望する, せがむ

XV.

But in Man’s dwellings he became a thing
Restless and worn, and stern and wearisome,
Drooped as a wild-born falcon with clipt wing,
To whom the boundless air alone were home:
Then came his fit again, which to o’ercome,
As eagerly the barred-up bird will beat
His breast and beak against his wiry dome
Till the blood tinge his plumage―― so the heat
Of his impeded Soul would through his bosom eat.

Restless:〈人・気持ちが〉落ち着かない, 不安な;安眠できない
wearisome:退屈な;うんざりさせる
falcon:ハヤブサ、タカ狩り用のタカ
fit:(病気の)発作, ひきつけ, けいれん, 差し込み((of ...)) (感情・行動などの)一時的激発, 興奮(状態), 高まり;気まぐれ((of ...))
eagerly:熱望して;熱心に;しきりに
tinge:…に薄く色を着ける, (…で)染める((with ...))
imped:(他)〈運動・進行などを〉遅らせる, 妨げる, じゃまする

XVI.

Self-exiled Harold wanders forth again,
With naught of Hope left― but with less of gloom;
The very knowledge that he lived in vain,
That all was over on this side the tomb,
Had made Despair a smilingness assume,
Which, though ’twere wild - as on the plundered wreck
When mariners would madly meet their doom
With draughts intemperate on the sinking deck, -
Did yet inspire a cheer, which he forbore to check.

assume:〈態度などを〉装う;〈変名・偽名などを〉用いる;[III to do] 〈…である〉ふりをする
wild:〈人・行為・感情などが〉狂気じみた
draught:液体を容器から)つぎ出すこと, (酒などの)たる抜き
intemperate:酒におぼれる
check:〈感情・行為などを〉抑える, 抑制する
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