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死海の林檎のように

2010年08月15日 20:06

2010ノーゼンカズラ、ある道で

【チャイルドハロルドの巡礼】第3編より、31連-35連
    バイロン作  Shallot B.訳

31.
俺はおまえのことを、亡くなった幾千もの人々のことを考えた。
そして誰もが自分の仲間や親族との間に
ものすごい隙間を作ってしまった。
生きる者に、ただ忘れるためだけに忘却を指南できたらいいのに。
生きる者が求める人々を呼び覚ますのは、<栄光>の喇叭ではなく
最後の審判の「大天使」の喇叭であるはずだ。<名誉>の音は
瞬間の安らぎを与えるかもしれないけれど、
甲斐のない憧憬への熱望をなだめることはできないし、
あまりに讃えられた名はより強い、辛いもの思いしか思い起こさせない。

32.
生者は嘆き、ついには微笑む。しかし、微笑みながら嘆くのだ。
樹は倒れるずっとまえに立ち枯れるだろう。
船は帆柱と帆が引き千切られても進んで行く。
棟木は落ちても、広間のうえで重たく古びて朽ちてゆく。
崩れた城壁は風に荒んだ胸壁が塵と消えるとき、
立ったままだ。
中へ閉ざした囚人の死んだあとまで、鉄柵は残り続ける。
嵐が太陽を覆い隠しても、一日はゆっくりと進む。
こうして心は張り裂けても、うちひしがれたまま生きてゆく。

33.
割れた鏡はすべての破片に鏡を増やし、
ひとつだった虚像を幾千もの虚像にする。
それは同じもの――そして割れれば割れるほど、
その像は増えていく。ちょうど割れた鏡のように、
死者を忘れないひとのこころも
かき乱された様子のまま生きる。そして静かに、そして冷たく、
そして血の気もなく、眠れぬ悲しみに痛みをおぼえ、
そういうことを語らないので、目に見えるしるしは何もないまま、
眼には老いて映るまで、だんだんと衰えてゆくのだ。

34.
絶望には本当の生がある。
――毒の枝を広げるために素早く根を下ろす
毒の活力がある。我々が死んだところでなんともない。
だが、<悲しみ>の樹のもっとも厭うべき果実、
味わうには灰となってしまう死海の岸辺に実る林檎のような果実には、
<生>が合ってしまう。
ひとが楽しみによって存在を計算し、
人生の歳月に対してそのような時間を数えてみたら、
人生60年なんて言えるのだろうか?

35.
(旧約聖書の)『詩篇』を書いたひとは、人生の長さを数え出した。
充分だ。もしおまえの数と話が本当ならば、
充分すぎるぞ、束の間の時間すら彼に出し惜しんだ者よ、
運命のワーテルローよ!
幾百万のことばがおまえを記録し、
ふたたび子供たちの唇がそれを繰り返すだろう、曰く――
「ほら、ここが連合国が刀を抜いた場所だよ、
僕らの国の男たちがあの日戦っていた場所だよ!」
これでたくさん――これがすべて――これは決して消えはしない。


死者と生者、そして残された者の悲しみを描写しています。
最後はワーテルローに呼びかけてます。
なんか、本日8月15日、奇しくも終戦記念日。
戦争はいつの時代も悲劇のもと、とはいえ、勝った国の人には35連の最後のセリフはいつまでも受け継がれるのですね。まさに「勝てば官軍」――。
でも、悲しみは消えない。戦争はそういうものなのかもしれません。




XXXI.

I turned to thee, to thousands, of whom each
And one as all a ghastly gap did make
In his own kind and kindred, whom to teach
Forgetfulness were mercy for their sake;
The Archangel’s trump, not Glory’s, must awake
Those whom they thirst for; though the sound of Fame
May for a moment soothe, it cannot slake
The fever of vain longing, and the name
So honoured, but assumes a stronger, bitterer claim.

ghastly:ひどい, ものすごい
kind:[U](その人と)同種[同族]の人[物]
slake:〈飢え・かわき・欲望などを〉いやす, 満たす;〈怒りなどを〉和らげる;…を弱める, 鈍らせる, 〈火を〉消す, 弱める

XXXII.

They mourn, but smile at length― and, smiling, mourn:
The tree will wither long before it fall;
The hull drives on, though mast and sail be torn;
The roof-tree sinks, but moulders on the hall
In massy hoariness; the ruined wall
Stands when its wind-worn battlements are gone;
The bars survive the captive they enthral;
The day drags through though storms keep out the sun;
And thus the heart will break, yet brokenly live on:

hull:《海》船殻, 船体
roof-tree:棟木。棟に渡す横木。屋根の最上部に、桁行(けたゆき)方向に取り付ける横木。
moulder:(徐々に)朽ちる, くずれる, 崩壊する((away, down))
massy:〈規模・量・程度などが〉大きい, 重度の
hoariness:古い, 古めかしい, 陳腐な;古くてこうごうしい
enthral:~を奴隷状態にする
drag:重そうに動く, 骨折って進む
brokenly:打ちひしがれて

XXXIII.

E’en as a broken Mirror, which the glass
In every fragment multiplies―and makes
A thousand images of one that was,
The same―and still the more, the more it breaks;
And thus the heart will do which not forsakes,
Living in shattered guise; and still, and cold,
And bloodless, with its sleepless sorrow aches,
Yet withers on till all without is old,
Showing no visible sign, for such things are untold.

multiply:…を増やす, 増大[増加]させる, …を多様[多面的, 複合的]にする

XXXIV.

There is a very life in our despair,
Vitality of poison, - a quick root
Which feeds these deadly branches; for it were
As nothing did we die; but Life will suit
Itself to Sorrow’s most detested fruit,
Like to the apples on the Dead Sea’s shore,
All ashes to the taste: Did man compute
Existence by enjoyment, and count o’er
Such hours ’gainst years of life, - say, would he name threescore?

Vitality:活力, 体力, 生命力, バイタリティー;活気, 元気, 生気
compute:計算[算出]する

XXXV.

The Psalmist numbered out the years of man:
They are enough: and if thy tale be true,
Thou, who didst grudge him e’en that fleeting span,
More than enough, thou fatal Waterloo!
Millions of tongues record thee, and anew
Their children’s lips shall echo them, and say―
“Here, where the sword united nations drew,
Our countrymen were warring on that day!”
And this is much―and all―which will not pass away.

Psalmist:((the P-))(旧約聖書の)詩編作者
tale:話, 物語、((文))総数, 総計(total)
grudge:〈人に〉…を出し渋る, 出し惜しむ;[III[名]/doing] …を惜しむ, 渋る
fleeting:〈時・人生などが〉いつしか過ぎ[消え]去る;つかの間の, はかない
warring:戦争する, 戦う;対抗[対立]する
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