劣悪な血 ⑤

2004年08月09日 02:16

 まだ本当に幼かったころ、僕は監獄に閉じ込められた頑固者の囚人に憧れていた。僕は、彼が立ち寄ったからこそ輝いて見える民宿やらアパートなんかを訪れたもんだ。僕は彼の眼で、蒼い空や田舎の花咲く農作業を眺めていた。つまり僕は街中に彼の運命を感じていたんだ。彼は聖者よりも強かったし、旅人よりもわきまえていた――そして彼の名誉と理性の証というのは、彼ただ一人だけなんだ!
 路上で、冬の夜、宿も服もパンもなくて、一つの声が凍えた僕の心を抱きしめた。「脆弱、あるいは強靭。アンタはここにいる、それが強さだ。アンタは自分がどこへ行くのか、どうして行くのか知る由もないんだから、どこへでも飛び込んで何にでも答えるんだ。アンタが死体だったみたいに、誰もアンタを殺そうとはしまい。」朝になって、僕は呆然とした眼で、死んだような有様だったから、すれ違う人たちは、少しも僕を見なかっただろう。
 街では、突然泥が赤く黒く見えたんだ。ちょうど硝子越しにランプを揺らめかせたときの、硝子のように。森の奥の宝物みたいに!幸運を祈る、と叫ぶ僕は、空へと立ち昇る炎と煙の海を見た。それから、右に、左に、数え切れない稲妻のような燃え立つすべての豪奢を。
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