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自然と溶け合ってみても

2011年04月09日 19:28

【チャイルドハロルドの巡礼】第3編より、72-75連
    バイロン作  Shallot B.訳

72
僕はもう自分自身の〔肉体の〕中に生きているのではなく、
周りを取り囲んでいるもの〔自然〕の一部になる。
そして僕にとって高い山々はひとつの感情で、
人間の〔棲む〕都市の喧騒は苦しみなのだ。
ただ、その魂が飛んで行き、
空と、頂と、しける海の大波と、そして星々と
灼(あらた)かにもまじわりあうとき、
生き物たちに分類されて、否が応にもつないでいる肉体という鎖以外、
<自然>のなかで嫌気の差すものなんて、僕には何も見えない。

73
こうして僕は〔自然へと〕溶け込んでゆく。これが生だ。
苦悶と諍いの場を眺めるように、過ぎし日の雑踏の砂漠を僕は見ている。
そこでは、とある罪が理由で、行動しては苦しむために、
僕は<悲しみ>を演じていた。
でもついに新しい羽で飛び立つんだ。
未熟だけれど迎えうつ突風と同じように溌剌としてゆく
羽の生え変わるのを僕は感じる。
僕たちの存在にまとわりつく冷たい土塊の枷鎖(かさ)を跳ね除けて、
その喜びに満ちた翼に乗って行くんだ。

74
蝿や蛆虫のなかでもっと幸せな肉片となるものを別にすれば、
ついに肉体における生から引き離され、
精神が貶められた形骸から完全に解き放たれるとき、
そして自然の元素がもとの元素と元通りに結びつき、
塵がもとの塵に戻るとき、目に見える万物が、
霊的な思想が、それぞれの<地霊>が、
光を失い、温かくなるのを感じないなんてことあるはずない。
今だって、ときおり、不滅の大地の運命を
僕はともにしてるんだもの。

75
山々も、波も、空も、僕がその一部であるのと同じように、
それは僕の一部だよね。
それに対する愛は、純粋な情熱を持って僕の心の奥深くにあるよね。
それと較べたら、この世のものをことごとく蔑んではいけないよね。
俯きかげんなひとたちの、
キツくて俗っぽい無関心を求めて、
あえて冷淡を装って、視線を地べたに落としては、
こんな気持ちを経験するよりも、
苦難の潮流に逆らって突き進むべきだね。


シェリーの影響でワーズワスみたいな「自然との精神融合」(←バルカン人風@「Star Trek」)を試みたって、
所詮バイロンですから(笑)
でも、この部分、10年前に初めて読んだとき、
喋々が蛹から蝶へと羽を広げるようなイメージを抱いたのは覚えているのだけど、
多分全然分かってなかったんだなーと、深く反省。

田吹先生のご著書に、「[…]〔この〕部分で語った自然観は彼自身が真剣に考えたものではないことがわかる。[…]バイロンは人界を嫌悪しつつも、その意識は常に「市井の人々」に向けられている。自然というものは「市井の人々」からの一時的な避難所でしかない。彼が戻っていくところは常に人界を除いて他にはありえないということは、第一四節と第一五節を読めばはっきりとわかる」とあります。(田吹長彦『ヨーロッパ夢紀行――詩人バイロンの旅――ベルギー・ライン河・スイス編』丸善出版サービスセンター、2006年、370頁。)

つまり、この部分は「なんちゃってワーズワス」風味なわけね。オーガスタに宛てた4つの詩について、東中先生も、オーガスタと自然を較べて、結局オーガスタに拘泥するってことを論文でまとめられていたものね。結局バイロンって奴ぁ、自分の周りの人たちとの絆を忘れられないってことなのね。

妙に納得した土曜日の午後でした(かっぱえびせん食べながら…)。




LXXII.

I live not in myself, but I become
Portion of that around me; and to me,
High mountains are a feeling, but the hum
Of human cities torture: I can see
Nothing to loathe in Nature, save to be
A link reluctant in a fleshly chain,
Classed among creatures, when the soul can flee,
And with the sky―the peak―the heaving plain
Of Ocean, or the stars, mingle―and not in vain.

hum:ブンブンいう音[こと],鼻歌(を歌うこと),不明瞭なつぶやき,ふむふむ,がやがや,雑音
a feeling:感じ,(…という)漠然とした感じ((that節));感情,気分
reluctant:〈人が〉(…するのに)気乗りしない,気の進まない((to do));〈承認などが〉不承不承の,しぶしぶの
heaving:〈風などが〉〈波を〉うねらせる


LXXIII.

And thus I am absorbed, and this is life:―
I look upon the peopled desert past,
As on a place of agony and strife,
Where, for some sin, to Sorrow I was cast,
To act and suffer, but remount at last
With a fresh pinion; which I feel to spring,
Though young, yet waxing vigorous as the Blast
Which it would cope with, on delighted wing,
Spurning the clay-cold bonds which round our being cling.

past:〈出来事などが〉終わった,過去の,昔の。〈時・期間が〉過ぎ去った(ばかりの),最近の。
pinion:((文))鳥の翼;羽(毛)
Spurning:((主に文))〈人・申し出・忠告などを〉はねつける,にべもなく拒絶する


LXXIV.

And when, at length, the mind shall be all free
From what it hates in this degraded form,
Reft of its carnal life, save what shall be
Existent happier in the fly and worm, -
When Elements to Elements conform,
And dust is as it should be, shall I not
Feel all I see less dazzling but more warm?
The bodiless thought? the Spirit of each spot?
Of which, even now, I share at times the immortal lot?

at length:ついに、ようやく
Reft:reaveの過去・過去分詞形:((古))…から奪う
carnal:肉体の、現世[世俗]的な
conform:〈物事が〉(形・性質などにおいて)(…と)一致する,同じである((to, with ...))
Element:元素:古代哲学で物質界を構成すると考えられた基本物質;通例earth, water, air, fireのいずれかをいう


LXXV.

Are not the mountains, waves, and skies a part
Of me and of my Soul, as I of them?
Is not the love of these deep in my heart
With a pure passion? should I not contemn
All objects, if compared with these? and stem
A tide of suffering, rather than forego
Such feelings for the hard and worldly phlegm
Of those whose eyes are only turned below,
Gazing upon the ground, with thoughts which dare not glow?

contemn:((文))…を軽蔑する(despise)
phlegm:沈着,冷静;粘液質;無精,無気力;無感動
stem:〔潮, 風など〕に逆らって進む;〔時流など〕に逆らう, 抵抗する
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