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土地神との邂逅

2011年06月10日 14:27

レマン湖の夕暮れ

【チャイルドハロルドの巡礼】第3編より、85-91連
    バイロン作  Shallot B.訳

85
穏やかに澄むレマン湖よ!
僕の住んでいた気違いの世界とは対照的に、
静謐さで、もっと純な泉を求め、
<地上>の荒れ狂う海を捨てるよう、その湖は僕を戒める。
この静かな帆は、僕を狂気からそっと運び出してくれる、
音をたてない翼のよう。
僕はかつて引き裂かれる<大海>の叫びを愛したけれど、
湖のやわらかいひそひそ声は、かつて狂おしいほどの歓喜に僕が感動してしまうのを
姉さんの声が咎めてくれたみたいに優しい。

86
静かな夜。岸辺と山の端(は)には、
澄んだ暮れがた――やわらかに混じりあっているけれど、
はっきり見える――唯一黒ずんでいるのはジュラの山々、
〔雲に〕覆われた峰々は、高く、切り立った断崖が現れる。
そうして、近づいてみると、
岸辺からは開いたばかりの花の、
息づく芳香が漂ってくる。
耳には、小舟の縁(へり)に掲げられた櫂から滴り落ちる軽い水滴の音、
あるいは眠りへと誘う歌を歌うきりぎりすの鳴き声。

87
夕暮れ時、きりぎりすは浮かれ騒ぎ、
幼子のように生き、存分に歌う。
ときおり、一瞬、茂みから鳥の鳴き声がして、
それから静まりかえる。
丘に漂ってくるささやき声が聞こえてくるように思えるけれど、
それは空想に過ぎない。というのも、
静寂のうちに<星明かり>の露が、流れる<愛>の涙をそそぎ、
<自然>の懐深く、その色合いの息吹を吹き付けるまで、
涙を落とし続けるからだ。

88
おお 星々よ! <天>の詩(うた)よ!
その燦々たる紙葉に我らが人民と帝国の運命を読み解くなら、
偉大になりたいという野心のうちに
己の運命が人間の領分を乗り越え、
不滅のあなたがたに近しくなったと言い放つのを、
どうかお許し願いたい。
というのも、あなたがたは<美>であり<神秘>であり、
<運勢>、<名声>、<権力>、<生命>は己を<星>と呼ぶがゆえに、
御空(みそら)から、我らのうちに愛や畏敬を抱かせるのだ。

89
<天>も<地>もみんな静かだ。眠っているのじゃない。
ぐっときた時に息ができないのと同じように、静かなんだ。
深く考え込んだときのように、黙っている。
<天>も<地>もみんな静かだ。御空(みそら)の星の軍勢から
凪いだ湖、山の縁(へり)に至るまで、
何もかもが激しい生命ひとつに集められる。
そこでは、ひとすじの光も、空気も、葉も失われず、
すべて<霊(ち)>の一部分を担う。その(<霊>の)薫りは、
<造り主>であり<護り神>であるものの薫りだ。

90
そのとき湧きあがる無限の感情、
もっとも寂しくないところで、ひとりでいると感じる、あの感情。
私たちの中で熔融し、自我を清める真実。
それは音色、<音楽>の精髄であり根源。
永遠(とわ)の調和を与え、すべてを美で結ぶ
神話で知られる美しい女神の帯のように、魅惑を放つ。
たとえ恐ろしい<死>に災禍を及ぼす絶大な力があったとしても、
それは奴の力を削ぐだろう。

91
地上を一望できる高台や山頂に
古代のペルシア人が祭壇を設け、
適所に壁のない寺院を建立し、
そこで精霊を求めたのは、有意義だった。
人の手によって築かれているので、
精霊を崇めるには、社(やしろ)は不充分だ。
さあ、較べてみたまえ。ゴシック風だかギリシア風だかの円柱や偶像の居と、
大地と空、<自然>の崇敬の領域とを。
妄信的な(偶像の)棲家に区切りをつけて、きみの祈りを固定させてはいけない!


89連のBeingとsenseの訳語は悩みました…。
西洋語特有のキリスト教的抽象語…。
直訳すると、「存在」・「感覚」だけど、
そうすると日本人には何のことはわからないよなぁ…って。
自然の中に埋没した語り手が、自然の中にいる「何か」の存在を「感知」している。
つまり、キリスト教的には神だけど、バイロンは汎神論者。
神道的には「八百万の神々の主」なんだろうけど、……。

とりあえず、
Being=霊(ち)、sense=感じ=薫り
(日本人は視覚も嗅覚も「匂ふ」と表現するしね)
で決着させました。

いや~…思ったより進まなかった…。
次はレマン湖の夜更けの嵐の場面です~


LXXXV.

Clear, placid Leman! thy contrasted lake,
With the wild world I dwelt in, is a thing
Which warns me, with its stillness, to forsake
Earth’s troubled waters for a purer spring.
This quiet sail is as a noiseless wing
To waft me from distraction; once I loved
Torn Ocean’s roar, but thy soft murmuring
Sounds sweet as if a Sister’s voice reproved,
That I with stern delights should e’er have been so moved.

placid:静かな,平静な,穏やかな,落ち着いた
contrasted:…と対照をなす,を対照的に引き立たせる
wild:〈人・行為・感情などが〉狂気じみた;ひどく興奮している;怒った;〈人が〉(喜び・悲しみ・苦痛などで)取り乱した((with ...))
troubled:〈海などが〉荒れた
waft:〈葉・花粉などを〉(…に)ふわりと運ぶ((to ...))
distraction:乱心,動転;狂気
reproved:(他)〈人・言行を〉しかる,たしなめる;〈人の〉(…を)とがめる((for ...))


LXXXVI.

It is the hush of night, and all between
Thy margin and the mountains, dusk, yet clear,
Mellowed and mingling, yet distinctly seen,
Save darkened Jura, whose capt heights appear
Precipitously steep; and drawing near,
There breathes a living fragrance from the shore,
Of flowers yet fresh with childhood; on the ear
Drops the light drip of the suspended oar,
Or chirps the grasshopper one good-night carol more.

hush:[名][U]((またa ~))静けさ
capt:=capped。
Precipitously:崖(がけ)のような,断崖(だんがい)絶壁の,切り立った,非常に険しい,急勾配(こうばい)の
draw:(引き寄せられるように)動く(move, go);近寄る,集まる
breathe:(香りなどが)漂う


LXXXVII.

He is an evening reveller, who makes
His life an infancy, and sings his fill;
At intervals, some bird from out the brakes
Starts into voice a moment, then is still.
There seems a floating whisper on the hill,
But that is fancy―for the Starlight dews
All silently their tears of Love instil,
Weeping themselves away, till they infuse
Deep into Nature’s breast the spirit of her hues.

revel:((文))底抜け[お祭り]騒ぎ;(ダンスや仮装舞踏会などを伴った)大騒ぎの宴
brakes:(低木・トウなどの)やぶ,茂み
Starlight:星の光,星明かり
instil:徐々にしみ込ませる
weep:…を泣き暮らす,泣き明かす,泣いて…する((away, out))
infuse:((形式))〈人などに〉(信念・思想などを)吹き込む((with ...));〈信念・思想などを〉(人などに)吹き込む,注ぎ込む((into ...));満たす


LXXXVIII.

Ye Stars! which are the poetry of Heaven,
If in your bright leaves we would read the fate
Of men and empires, - ’tis to be forgiven,
That in our aspirations to be great,
Our destinies o’erleap their mortal state,
And claim a kindred with you; for ye are
A Beauty and a Mystery, and create
In us such love and reverence from afar,
That Fortune,- Fame,- Power, Life, have named themselves a Star.

aspirations:(…への)強い願望,あこがれ,大望,大志,野心
o’erleap:…を(向こう側へ)飛び越える
reverence:畏敬(いけい)の念,尊崇,崇敬,敬意
That:副詞節を導く接続詞。e.g. He works hard that his family may live in comfort.家族の者が安楽に暮らせるようにけんめいに働いている。


LXXXIX.

All Heaven and Earth are still - though not in sleep,
But breathless, as we grow when feeling most;
And silent, as we stand in thoughts too deep: -
All Heaven and Earth are still: From the high host
Of stars, to the lulled lake and mountain-coast,
All is concentered in a life intense,
Where not a beam, nor air, nor leaf is lost,
But hath a part of Being, and a sense
Of that which is of all Creator and Defence.

host:大ぜい,大群,多数(の…)((of ...))、((古))軍,軍勢
lulled:〈海・風などが〉静まっている
concenter:(Probably Italian concentrare or French concentrer : both from Latin com-, com- + Latin centrum, center; see center)<center:中心にある[くる],中心となる,(…に)集まる,集中する((about, around, round, at, on, upon, in ...))


XC.

Then stirs the feeling infinite, so felt
In solitude, where we are least alone;
A truth, which through our being then doth melt,
And purifies from self: it is a tone,
The soul and source of Music, which makes known
Eternal harmony, and sheds a charm,
Like to the fabled Cytherea’s zone,
Binding all things with beauty; - ’twould disarm
The spectre Death, had he substantial power to harm.

disarm:〈人から〉(武器を)取り上げる[奪い取る]((of ...))
substantial:(量・大きさなどが)十分な,かなりの,相当な
spectre:恐ろしいもの;不安のもと、((文))幽霊,妖怪(ようかい), お化け


XCI.

Nor vainly did the early Persian make
His altar the high places and the peak
Of earth-o’ergazing mountains, and thus take
A fit and unwalled temple, there to seek
The Spirit, in whose honour shrines are weak,
Upreared of human hands. Come, and compare
Columns and idol-dwellings―Goth or Greek―
With Nature’s realms of worship, earth and air―
Nor fix on fond abodes to circumscribe thy prayer!

circumscribe:…の周囲に線を引く;…を線で取り囲む;…を区切る,の境界[範囲]を定める
abode:((文・法律))住所,住居,居所
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