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ぬばたまの

2012年10月27日 19:26

ぬばたまの

   作 バイロン
   訳 Shallot B.

私は夢をみたが、それはまったくの夢というわけではなかった。
耀(かがよ)う日輪は消え失せ、
光もなく、軌道もなく、永遠の宇宙の暗がりを
星々はさまよっていた。そして凍てついた大地は、
月なき大気のうちに震撼し、盲(めし)い、黒ずんでいった。
朝は来て、去った。そしてまた朝が来たが、日の光はもたらさなかった。
この恐怖のなかで、悲惨のなかで、人々は情熱を忘れた。
あまねく心は凍てつき、明かりを求める横柄な願いへと変わった。
人々は焚き火の傍で生きていた、
そして王座も、冠を戴いた王たちの宮殿も、
荒ら家も、
あらゆるものの棲家も、
烽火にと焼かれた。いくつもの都市が破壊され、
人々は燃え上がる自宅を囲んで集まり、
今一度お互いの顔を見合わせたのだ。
幸せなのは目の届く距離に
山の松明である火山を持つ人々だった。
ひとつの恐ろしい期待がこの世をあまねく包み込んだ。
森には火がつけられた。
そして刻々と樹々は倒れ、萎えていった。
爆ぜる幹は粉々になって消えていった。そしてすべてが黒くなった。
時折、閃光が人間たちめがけて落ちると、
その表情は絶望の光によって
この世のものとは思われない顔つきを示した。
横たわり、自分の眼を隠して泣き濡れる者があった。
組んだ両手の上にあごをのせて、微笑む者もあった。
忙しげに行ったり来たりしては火葬用に薪をくべ、
ひどく動揺しつつ、昔日の世界の棺となった
黒雲立ち込める朦朧とした空を
見上げる者もあった。
そしてまた、呪いをかけて、それらの人々を灰燼へと帰せし、
歯を軋らせては呻く者もあった。
野の鳥たちは、かん高い声をあげて、慄きながら地面に羽を打ちつけては、
無暗に翼をばたつかせるのだった。
もっとも獰猛な野獣たちも、おとなしく、震えていた。
蝮は這い、群れをなし、シャーッと声を出すものの、
蜷局を巻くばかりだった。蝮たちは、食用に惨殺された。
ひとときはもはやありえなかった<戦争>は、
ふたたびその腹を満たしたのだった。食事のたびに、血が流れ、
人間たちはそれぞれむっつりと離れて座り、
暗がりで腹へと詰め込んだ。愛情は残っていなかった。
全土にはひとつの思考、
つまり目前に迫った、恥ずべき死しかなかったのだ。
飢餓に対する苦しみを癒せるのは腸を貪ることだった。
人間たちは死に、肉と同様骨にも墓などなかった。
空腹を抱えた者たちは、空腹を抱えた者たちによって貪られ、
犬でさえ飼い主を襲った。
ただ一匹だけは違った。その犬は屍骸にも忠実で、
鳥や獣や、飢えた人間を空腹が縮めさせ、
死んだ者が奴らの痩せ細ったあごをとらえるまで、
追い払い続けた。犬は自分で食べ物を探し出せず、
永遠に響く哀れなうめき声をあげ、
望みを失くした短い遠吠えを最後に、
もう撫で返してはくれない飼い主の手を舐めながら、――犬は死んだ。
次第に群衆は餓死していった。
それでも、巨大な都市の人間がふたり生き残った。
ふたりは仇同士だった。
聖瀆的な使い道のために聖物の数々が積み上げられた祭壇が
燃えかすになっているところで
ふたりは出会った。
慄きながら、冷たく骨ばかりになった手で
火の弱まった灰をかき集め、こすり合わせ、
ほんの僅かな火を求めて、己の弱々しい吐息を吹きかけ、
徒労に終わる炎を生んだ。
やがて炎が明るくなるにつれ、ふたりは眼をあげた、
そしてお互いの顔を見つめた、見合わせ、そして悲鳴をあげて死んだ。
<飢餓>が<悪魔>を書いた表情には
いた相手の正体を知りもせずに、
お互いがあんまりに恐ろしかったからだ。
世界は空っぽになった、群衆も勢力も、一塊となった、
四季も、草も、樹も、人間も、生命もなく、
死の一塊、固い土の混沌となった。
川も、湖も、海も、すべてが凪いでいた、
それらの音のない水底で身動きするものはなかった。
船乗りのないいくつもの船が海の上で朽ちていき、
帆はばらばらに崩れ落ちた。沈んでしまうと、
それらの船は大きな波を立てることなく、深い海で静まり返った。
波は死んだ。潮はその墓にあった。
潮波の愛人たる月はとうに息をひきとってしまった。
淀んだ大気のうちに、風はみな萎れ、
雲はみな消え去った。闇には雲の助けなど要らなかった。
闇こそが宇宙だった。


Webでした訳がみつからなかった、今回の論文の最大の副産物。
・児玉花外の訳はこちら
・shigekujiraさんの訳はこちら

いい思い出になりそうな一編(ぇ)。



Darkness

I had a dream, which was not all a dream.
The bright sun was extinguish’d, and the stars
Did wander darkling in the eternal space,
Rayless, and pathless, and the icy earth
Swung blind and blackening in the moonless air;
Morn came, and went—and came, and brought no day,
And men forgot their passions in the dread
Of this their desolation; and all hearts
Were chill’d into a selfish prayer for light:
And they did live by watchfires—and the thrones,
The palaces of crowned kings—the huts,
The habitations of all things which dwell,
Were burnt for beacons; cities were consumed,
And men were gathered round their blazing homes
To look once more into each other’s face;
Happy were those who dwelt within the eye
Of the volcanos, and their mountain-torch:
A fearful hope was all the world contain’d;
Forests were set on fire—but hour by hour
They fell and faded—and the crackling trunks
Extinguish’d with a crash—and all was black.
The brows of men by the despairing light
Wore an unearthly aspect, as by fits
The flashes fell upon them; some lay down
And hid their eyes and wept; and some did rest
Their chins upon their clenched hands, and smiled;
And others hurried to and fro, and fed
Their funeral piles with fuel, and looked up
With mad disquietude on the dull sky,
The pall of a past world; and then again
With curses cast them down upon the dust,
And gnash’d their teeth and howl’d: the wild birds shriek’d,
And, terrified, did flutter on the ground,
And flap their useless wings; the wildest brutes
Came tame and tremulous; and vipers crawl’d
And twined themselves among the multitude,
Hissing, but stingless—they were slain for food:
And War, which for a moment was no more,
Did glut himself again;-a meal was bought
With blood, and each sate sullenly apart
Gorging himself in gloom: no love was left;
All earth was but one thought—and that was death,
Immediate and inglorious; and the pang
Of famine fed upon all entrails—men
Died, and their bones were tombless as their flesh;
The meagre by the meagre were devoured,
Even dogs assail’d their masters, all save one,
And he was faithful to a corse, and kept
The birds and beasts and famish’d men at bay,
Till hunger clung them, or the dropping dead
Lured their lank jaws; himself sought out no food,
But with a piteous and perpetual moan
And a quick desolate cry, licking the hand
Which answered not with a caress—he died.
The crowd was famish’d by degrees; but two
Of an enormous city did survive,
And they were enemies; they met beside
The dying embers of an altar-place
Where had been heap’d a mass of holy things
For an unholy usage; they raked up,
And shivering scraped with their cold skeleton hands
The feeble ashes, and their feeble breath
Blew for a little life, and made a flame
Which was a mockery; then they lifted up
Their eyes as it grew lighter, and beheld
Each other’s aspects—saw, and shriek’d, and died—
Even of their mutual hideousness they died,
Unknowing who he was upon whose brow
Famine had written Fiend. The world was void,
The populous and the powerful—was a lump,
Seasonless, herbless, treeless, manless, lifeless—
A lump of death—a chaos of hard clay.
The rivers, lakes, and ocean all stood still,
And nothing stirred within their silent depths;
Ships sailorless lay rotting on the sea,
And their masts fell down piecemeal; as they dropp’d
They slept on the abyss without a surge—
The waves were dead; the tides were in their grave,
The moon their mistress had expired before;
The winds were withered in the stagnant air,
And the clouds perish’d; Darkness had no need
Of aid from them—She was the universe.

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