錯乱[Ⅱ] ①

2004年10月02日 02:31

 錯乱[Ⅱ]
 言葉の錬金術


 僕の番だね。僕の愚行っていう一つの物語。
 だいぶ前から、僕はいろんな光景をよく知ってるんだと自慢してきたし、絵画や現代詩の栄誉なんてつまんないもんだって決めつけてた。
 僕が大好きだったのは、入口の上の方にかかっている絵や、舞台背景、大道芸人の垂れ幕、看板、大衆写本の挿絵といった、ちゃっちい絵。古臭い文学、教会のラテン語、誤字だらけのエッチ本、おばあちゃんたちの物語、妖精物語、子供向けのちっちゃい本、古臭いオペラ、間抜けな早口言葉、素朴な小唄。
 僕は、十字軍、バックパック旅行、歴史のない共和国、揉消された宗教戦争、生活の革新、民族と大陸の大移動を夢見てきた。そして僕は、魔法はみんな信じてた。
 僕は母音の色を思いついた!――「あ」は黒、「え」は白、「い」は赤、「お」は青、「う」は緑。――僕はそれぞれの子音の形と動きを整えた。それから、直感的なリズムで、僕はいつのまにか全ての感覚に触れる詩的言語を考え出すことに夢中になった。僕は感覚を言葉にするのを楽しみにしていたんだ。
 手始めには習作。いくつか静寂や夜を描いたけれど、言葉に表せないものを書き留めていた。眩暈を見詰めていたのさ。
             ――――
 鳥たち 羊の群れ 村の娘は 遐く 遐く
 何を飲んだの? 榛の優しい森に囲まれた
 躑躅の中に 膝をついて
 昼下がり なんて生温い緑色した霧の中!

 この幼い河の中から 僕は何を飲めたのだろう?
 ――寡黙な楡 花のない芝草 曇天――
 この黄色い瓢箪からは何が飲める? 僕の大切な小屋は遐くて
 汗びっしょりなのは 金色リキュールのせい

 僕はボロいモーテルの看板のフリしてさ
 ――嵐が空を追い払いにきたぜ
 夕暮れには森の水が まっさらな砂へと消えてった
 神風が沼に投げつけたのは 氷 氷

 泣きながら、僕は黄金を見ていたよ――でも飲めなかった――
             ――――
朝の四時 夏
愛の睡み まだ続く
小さな森の 木陰のもとに
宴の痕は消えてゆく 夜の馨が消えてゆく

遠く 広い広い工場で
妖精たちの太陽のもとで
――Tシャツ姿で腕まくり――
もう働いてるのは 船大工たち

苔の荒野に 黙ったままで
作られてゆく 豪華な天井
街は描くよ その天井に
偽りの 天空を

この素晴らしい職人たちから
バビロン王の下僕たちから
あぁ女神さま! ほんの束の間
花冠の心を抱いた 情夫たちから離れていて

あぁ羊飼いのお妃さま!
船大工たちに持ってきてくれ 命の水を 神酒を
彼らの強さが 穏やかに
真昼の海に飛び込めるのを 待つように
――――
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